★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

櫻木神社を訪ねる1(香川の神社14)

2017-08-31 19:00:03 | 神社仏閣
多肥の櫻木神社はこれまた鎮守の森で有名です。最近名称が変わった?××大学工学部の近くにあります。

天保十八年の燈籠がおでむかえ


これまた立派な御旅所が


参道長いっ 信心は徐々に沸いてくるものであるのを昔の人は知っていたのである。あるいは、国会とかの前の道路が長いのと一緒かもしれません。

参道の両側は田園地帯です。市内には、空襲で焼けたあとコンクリートで作り直した神社もあるくらいですが、わたくしなぞ、一瞬それは何か特殊な趣味の人の建物かと思ったくらいであります。田園の中に参道が続き森が見えてくる風景が神の姿なのであります(たぶん)


参道の途中に鳥居あり。


昭和十三年十月。国家総動員法、東京五輪返上、景浦打点王の年ですね。一ヶ月あとには、近衛文麿の「東亜新秩序」声明がでて、ドイツじゃ「水晶の夜」事件でユダヤ人の迫害が本格開始。ちなみに『香川県神社誌』もこの年に出版。――東京五輪返上だけまねして欲しい。


随神門が見えてきました。


右手には、平成二年の「天皇陛下御即位記念碑」。碑の文章を書いている人は違う人なのですが、私の業界のなかには、同姓同名ですごい人がいます。こういうのをかいた人です。

イギリスやアメリカに遠慮してゐる
貴樣の國の腰ぬけ政府の命令を
糞か屁のやうに心得て
敢然としてヒューメを占領した勇氣よ
共鳴するぞ そのロマンチックな心に
貴樣だ俺だ 俺だ貴樣だ
貴樣を思ふと胸が轟く

日本のひよつとこ詩人共は
貴樣がヒューメを占領したのを見て
舊式な愛國心で御座るとひやかしたり
詩人の爲すべき事でないと お濟ましだが
なあ君 あいつ等の負け惜しみなんだよ
氣にかけるない なあダンヌンツィオ
俺がついてゐらあ

貴樣がヒューメを占領しなかつたら
それこそ貴樣はそこらの芥文士と
區別のつかないやくざな代物さ
貴樣がお伽噺の英雄の主人公になつたればこそ
本當に男の中の男 詩人の中の詩人なんだ
貴樣の氣持が本當に良く分るよ
振れ 振れ ガブリエレ・ダンヌンツィオ

やい好漢ダンヌンツィオよ
貴樣はイタリーの國粹主義でやつたが
俺は日本の國粹主義でやるんだよ
貴樣の國にも飜譯思想家が澤山ゐる模樣だが
俺の國にも御連中が毎日吠えてゐるよ
何も出來ぬ癖に聲だけ黄色く立ててね
俺もやるよ見てゐてくれたまへ

世界の詩人に氣を吐いてくれた詩人よ
やいガブリエレ・ダンヌンツィオよ
櫻の花咲くこの日本に
やつて來い早く飛行機で――

夜は夜で踊り 晝は晝で飮まう
日本娘は友禪の裾を翻へし
イタリー語に似た日本語の母韻で
君に酒をついでくれるよ

ダンヌンツィオ君 早く來い 待つてるぞ
振れ 振れ ガブリエレ・ダンヌンツィオ

――「地球を弔ふ」


この詩集が編まれたのは、先ほどの昭和十三年。天文ファン→マルクス主義→勤王社会主義→ファシストという、ある意味、ガンダムファンがネトウヨになるような分かりやすい変遷を経た人であります。ハレー彗星大接近でいきなり詩作に目覚めるところなんか、私も、なんか気持ちが分かりますね。しかし、この詩集に関して言うと、正直、完全に狂っていらっしゃいます。宇宙的視野が平和に繋がると思っていたある種の戦後派の浅はかさが分かるというものです。


神様は、八幡系ですかね……昔は櫻井八幡と呼ばれたらしいし


随神門の足下

 

随神門の中には、天忍日命と天津久米命がおられました。ニニギの天孫降臨の時に先導した人たちです。なんだか、優しそうですね。金剛力士とかの方が強そうです。あっ、この人は飛び道具を持ってるぞ。いまでも、優しそうなおじさんがやってきて恐ろしい改革をして去って行くことがあります。本当に、ここにははじめからこの人達がいたのでしょうか。神仏習合の西蓮寺の時代はどうだったのでありましょう。

 

――つづく


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