★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

あらゆる夢は現実でなければならぬ

2017-06-11 23:13:13 | 文学


県立図書館で『新青年』とかを読んだり、コピーしたりする。上は、昭和19年の立川賢の「科学小説 桑港けし飛ぶ」……。違う記事で、軍人さんが、いまは「存亡の秋」だからお互いに非国民とか言い合ったりしてる時じゃないよ、とか、実のところ「もうだめだ」と思っていることが丸わかりの文章を寄せていた。立川の小説もあれであった。夏の夜のカナブンを叩くように米国の戦闘機はたたき落としてやれば良いが、そういう「消極的戦法成果」で満足するようなのは「絶対に日本人の血が許さぬ」ので、「また恨み重なる彼の本土を衝いて、天讉的爆弾を見舞」って「青鬼共をどかーんと天空高く」……

気合いは十分だし、「また恨み重なる彼の本土を衝いて、天讉的爆弾」までは何かが起こる悪寒がするのだが、「青鬼共をどかーん」とくるから、こりゃまずいと……感じる。

この小説、戦時下の原爆小説として有名なのである。勝ったのは日本である。この号の編集後記は、「爆砕の夢」――これを「夢を夢とするのは痴人である。」とか言ってしまっている。理由は「戦うものとっては、あらゆる夢は現実でなければならぬ」からだそうだ。

不宜偏私、使内外異法也。

危急存亡の秋にはむしろ内政が大事だと、国語の教科書にも書いてあることだ。ちなみに、孔明はその名文をものして自分は外に打って出るのだが、急な夕立とかいろいろあって、やっぱり負けた。


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