本日よりFC2へ完全移転のお知らせ

下記に完全移転し(画像にリンク埋め込み)ました。
本日よりgooでの更新はありません。
FC2のみでの更新となります。




FC2に完全に引っ越しました
改めて覗いていただければ幸いです



gooでの更新は中止し、FC2で続けます。

なにしろgooのサービスレベルが低すぎました。

HTML編集ダメ、カウンタ設置ダメ、アクセス解析ダメ、予約投稿ダメ、プラグイン設置ダメ、データインポートもエキスポートもダメ…。
いや、やろうと思えば、できないことはナイんすがね。

ただし、すべてプレミア料金が発生する。
その他のブログサービスで、普通のことが、ぜーんぶ有料!
いまさらサービスを無料にして、これまでのプレミア会員をないがしろにできない、ってことなんでしょうが…。

これじゃ、ね。
「タダで使わせてやってんだから、文句いうな」といわんばかり。

それにしてもなぁ。
ずーっと使い続けてきたんで、情はうつってんですがね…。

gooに問い合わせたら、無料にする予定はまったくない、ということらしいっす。

多分、今のブログサービスの中で最低のブログでしょうね、Gooは。
NTT西日本、いや、旧電電公社時代のオカミ意識が払拭できてないんじゃないかな。

もし、このままのサービス体制でいきますっ!とGooが思ってんなんら、壮大な勘違いというしかない。
先細りの展望しかないなー。

気づいてんのかな?
Gooは?

検索エンジン×、SNS×、ブログ×、HP×、あれも、これも、それも…。
度し難し。

も一回、一から出直さないと、ダメだわ、ここ。
淘汰される未来しか見えんわ。

と、いいつつも、そこがわからないGooだからな。
九分九厘変わらずに、ポシャるんでしょーな。

とまれ、gooでの長年のご愛読、ありがとうございました。
「鼠の目」連載1年を機に完全引越しです。
こいつもずいぶん先が見えてまいりました。

FC2で続けてまいります。
「不眠症の眠れない夜」というタイトルも変えませんでした。

お立ち寄りいただければ、幸甚に存じます。



亭主謹白
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鼠の目#364(ほぼ全文はブックマークで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田由美子=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。こすからい古参下士官



<<gooからFC2に移転し同時掲載中です>>

「満月は人の心をおかしくするそうだ。今夜のオレはおかしいのかもしれん」

下手な言い訳だぜ。

どうしようもねぇな、とオレは情けなくなった。

「だから…、そうだな。あー、いい。わかった。そうすることにする。和田さんのお願いなんだ、聞かないわけにいかない」

「まだ和田さん、になってるわよ」

「あ、そう、だから、えーと、ゆ、ゆ…。えー、次はしっかりというからな。それで勘弁してくれ」

オレは舌がつった。

だらしがない、とはこのことだな。

いいかね、諸君。

オレの名誉のためにいっておくが、人には向き不向きがあるんだ。

オレは屁理屈には強いが、色恋沙汰はてんでなっちゃない。

面倒になってしまうんだ。

恥ずかしい、という気分が先行して、自分の感情を言葉に表せない。

そもそも恋愛感情とは不合理にできている。

人を好きになることに理由なんてない。

それはわかるよな。

例えば、だ。

美女と野獣なんてな下世話でわかりやすいだろう。

蓼喰う虫も好き好き、でもいい。

割れ鍋に綴じ蓋、なんてのもある。

それはオレも重々承知している。

しかしな、この不合理さに自分を委ねてしまうことに、オレの目線の軸がフィットしない。

理に働く自分でありたい、という強い思いがあるのだ。

平たくいや、こういうことだ。

しどろもどろになるようなことは避けたい。

こういうことだ。



※なお、明日より上記URLのFC2に完全移転します。 改めて覗いていただければ、幸甚に存じます。
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鼠の目#363(ほぼ全文はブックマークで)

鼠の目・これまでの梗概



<<gooからFC2に移転し同時掲載中です>>

「できることか、それは?」

「ごくごく簡単なこと」

「なんだろうか」

「和田さん、という距離感のあるいいかたはやめて欲しいの。あなたはそんなことはない、と仰るかもしれないけれど、疎外感を感じてしまうの」

「疎外感?そんなことは…」

「そう。わたしがオミットされているとまでは思わないけれど、気を使わせているような負い目はあるのよ。わたしには由美子という名前があるわ。由美子、って呼んで欲しい」

「由美子、か。なんだか照れ臭いな」

「なぜ?サン付けで呼ばれているのはわたしだけ。少なくとも今回の一件では、わたしはケンスケさんなどと同じ、ユニットの一員だと思ってる」

「まあ、確かにそうなんだが。どうもね。肉親くらいしか下の名前で呼んだことがないんだ。その肉親、係累にしてもほとんどいないしな。慣れてないんだ。それに…」

「それに、なに?」

えー、つまり、なんだ、そのー、とオレはしどろもどろになってきた。

「あー、はっきりいうとだな、和田さんを由美子と呼ぶと、一気にオレのコラエ性が崩れそうな予感がある」

「コラエ性が崩れるってどういうこと?」

簡単さ、オレが和田さんを、いや由美子を愛しているということが、否が応でも意識せざるをえないじゃないか…といいたかった。

愛してるだの、好きだの、そういう面倒に関わりたくないんだ、だからオレは和田さん、と呼ぶんだ。

あなたのいうとおり、距離感を保つためにね…といたかった。

そのことを拳拳服膺するための呼び方なんだ…といいたかった。

オレの本質はウェットで女々しい性質なんだ…といいたかった。



※なお、FC2に移転しました。そろそろgooも考えないと、ダメじゃないかな。あまりにサービスレベルが低すぎる。
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鼠の目#362(ほぼ全文はブックマークで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田由美子=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。こすからい古参下士官



<<gooからFC2に移転し同時掲載中です>>

オレに続いて和田さんも立ち上がった。

「明日から暫く覗けないかもしれんが、悪く思うな。仕事でね」

「あら、お気遣いいたみいります。いいわよ、そんなこと。バカ金を落としてくれるいいお客さんだけど、この店を贔屓にしていただけるお客さんもまだまだいらっしゃるんだから」

マリーがウィンクした。

ウィンクなんざ何年ぶりだ?

久しく見たことがないぜ。

じゃ、な、とオレは小さく手をあげて、踵を返そうとした。

すると、マリーが和田さんにサムアップをした。

なんだ?

なんかいいことでもあるのか?

チェッ、これだからオカマはわからねぇ。

ちゃんと送るのよ、とオレの背中にダメ出しが当たった。

「わかってるよ。いちいちうるせぇんだよ」

と捨て台詞を残し、オレと和田さんはドアの外に出た。

明日の快晴を約束するような月が出ていた。

どうにもこそばゆい情景だぜ。

安手の日活映画じゃあるまいし、勘弁してくれよ。

まあ、和田さんと一緒にいることは決して不満ではないのだがね。

「さて、と。タクシーでも拾うかね」

「不眠症のあなたは、まだ眠くないんでしょ」

「ああ、そう。まだハルシオンを服んでないしね。いつものことさ。熟睡なんて、中学生の頃以来、忘れた」

「よければ歩かない?」

「いいよ。和田さんさえよければ。でも店では疲れているように見えたが、大丈夫なのか」

「大丈夫。で、ね。お願いがあるんだけど」

和田さんがオレの正面にまわって立ち止まった。



※なお、FC2に移転しました。そろそろgooも考えないと、ダメじゃないかな。あまりにサービスレベルが低すぎる。
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鼠の目#361(ほぼ全文はブックマークで)

鼠の目・これまでの梗概



<<gooからFC2に移転し同時掲載中です>>

じゃ、旦那、頼むぜ、と言い残すと、ケンスケは軽い足取りで消えていった。

不思議なことだが、オレもマリーもケンスケのネグラを知らない。

携帯電話の前はポケベル、その前は電話、それも留守番電話でしか連絡をとったことがない。

ただいえるのは当時の電話番号だと、そう遠くないところだろうという推測がたつ程度だ。

もっとも十年以上前の話だから、転居していればますますわからない。

それで特段、不便は感じていないから、それでいいといえばいいのかもしれん。

マクルーハンの「メディアはパーソナル化する」という予言は見事に当たった、ってこったな。

オレは仕上げのアイラモルトを流し込むと、カウンターに手をあてて立ち上がった。

どっこいしょ…。

あー、年齢は誤魔化せない。

ワンアクションの度に掛け声が必要になっちまってる。

ことさらにそのことを和田さんもマリーもいわないが、自分自身に無意識に掛け声をかけている姿を、オレは情けないとは思っていない。

仕方ないさ。

気力を補う腰高な体力など望むべくもない。

なにもかにもが枯渇しはじめている。

動くのは辛うじて口先ぐらいなもんさ。

しかしな、笑っているオマエも二十年後には二十歳、歳をとるんだぜ。

そのことを忘れてもらっちゃ困る。

腰高な体力でしのげるのも、そう長くはない。

まあ、リアルにゃ感じられないだろう。

オレもそうだったからな。

陰毛に一本、白いのが混じったら、否が応でも感じさせられるぜ。

それからは幾何級数的だな。

せいぜい笑っとけや。

二十年後、オレのいってることと一言一句ちがわない言葉をオマエもはいてるよ。

間違いなくな。



※なお、FC2に移転しています。そろそろgooも考えないと、ダメじゃないかな。あまりにサービスレベルが低すぎる。

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鼠の目#360(ほぼ全文はブックマークで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田さん=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。こすからい古参下士官



山下刑事が去ったあとの空間が、妙に索漠感を匂わせていた。

オレ、ケンスケ、オカマのマリー、和田さんの四人で座っている。

時間も深更に入ってきた。

「じゃ、そろそろお開きとしようか」

ケンスケがボソッといった。

「その前に。明日、いや、もう今日ね。どうするの?」

和田さんが問うてきた。

「ああ、そうだったな。それだけは決めておこう。えー、こうしよう。昼過ぎにここを出よう。ケンスケと和田さんはオレの事務所に適当に来てくれ。昼飯を済ませてな。どうせ川崎姉妹のいる神さびた地には、しばらくいることになるだろう。念のため、簡単な携行食とミネラルウォーターくらいは用意しておく。足はオレのへっぽこカローラだ。ケンスケ。運転を頼む」

ケンスケは頷いた。

続けて手元にある烏龍茶をグイッと飲み干し、指で唇を拭った。

「あと、着替えやなんかもいるだろうな。少し用意しとくといいと思う。こんなところだが、いいか」

左右のケンスケと和田さんに視線を送った。

二人は軽く顎を引いた。

「よし、それじゃ開こう。明日、いやもう今日だな、よろしく頼むぜ」

「じゃ、わたしも店を閉めよう。ちょうどキリがいいわ」

オカマのマリーがカウンターを拭きながらいった。

「ああ、それから。あなたがちゃんと和田さんを送っていくのよ。夜道は物騒なんだから」

オレに向けて、マリーのお節介な言葉が続いた。

「え?オレがかい?よせやい、照れ臭くっていけねぇや」

「馬鹿なこといってないで、オカマの忠告もたまには聞きなさいよ」

「マリーにゃいつも意見されてるぜ。オレは素直なもんだ」

「じゃ、今晩も素直になることね」

チェッ、かなわねぇや。

オカマにゃ。



※なお、近々FC2に移転の予定です。そろそろgooも考えないと、ダメじゃないかな。あまりにサービスレベルが低すぎる。
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鼠の目#359(ほぼ全文はブックマークで)

鼠の目・これまでの梗概



「これ以上説明しても、無駄だろうな。とりあえず結論をいおう。われわれは人間を覚醒させるために決起する。結果は多分、無駄死に、だろう。しかしやむをえない。共産主義とて前衛党の必要を認識している。ましていわんや、われわれにおいておや、というところだな。われわれは権力の監視下にある。警察ではない。公安調査室だ。監視下に置かれた経緯は、オマエ自身で調べるなりしろ。それくらいはオマエでもできるだろう」

「なんでぇ、結局、暴発するってことかい」

「この腐った社会ではそういうことになるだろう。しかしこれは革命なのだ」
「革命だと?へっ、笑わせるない。やい、文龍名。オマエのいう戦略のない革命なんてあるのかよ」

「痛み入る。しかしな、暴発し先鋭化しない革命運動はないことも憶えておけ。それが歴史だ」

文龍名は強引にそこで話を打ち切ると、もう用済みだといわんばかりに背を向けた。

後ろを向いたまま、テーブルに置いたウィスキィを取り上げ、ビンごと口につけた。

背中から「とっとと出て行け」というメッセージが発せられていた。

長田は肩を竦め、踵を返すしかなかった。

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鼠の目#358(ほぼ全文はブックマークで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田さん=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。こすからい古参下士官



「しかしな、そのイメージが人をして人たらしめる濫觴なのだ。年長者を敬う、年少者を可愛がる、人の嫌がることをしない、人として慎みある行動をする、どれもこれも古今東西、万古不易にいわれ、行われていることじゃないか」

少し沈黙が流れた。

文龍名の軽い呼吸音が長田にも聞こえた。

その沈黙を破り、長田が口を開いた。

「でも、それはおかしいじゃねぇか。人の嫌がることをしねぇ、ってんなら、なんで戦争なんておこるんだ。どっちも同じようなルールを持ってんなら、ぶつかりっこねぇだろうが」

文龍名が破顔一笑した。

「ウハハハハハ。まんざら底なしのバカでもないんだな、長田も。いいとこに気付いた」

「おい、文龍名。褒めてるのか、バカにしてんのか、どっちだ」

「どちらとも、だ」

長田はイラついた表情をした。

怒るより、どうリアクションすればいいか判断がつきかねた。

「その通りだ、長田。イメージが普遍であるなら世界に争いなど起こるまい。しかし、残念ながらイメージの総論として合致しても、各論では天と地ほどの違いがある。そしてそのイメージが時間軸とリンクしきれていないのだ」

長田は困り果てた。

理解の範疇を完全に超え始めた。

長田は付いていけなくなると、自我の偏狭な殻に逃げ込んだまま動かなくなってしまう。

パニックに陥った小動物が、狭い物陰に潜んで動かなくなるアレだ。

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鼠の目#357(ほぼ全文はブックマークで)

鼠の目・これまでの梗概



文龍名は酔ったように続けた。

多分、自らの論旨に自己陶酔しているのだろう。

「不可視の存在、あー、神と簡単に呼んでもいい、その不可視なる神に人は畏まらねばならぬ。その畏まる道具立てが祭祀だ。したがってその執行者たる司祭には、見るものをして圧倒させるパワーが必要だ。そのパワーこそが、霊的能力とよべるものなのだ」

「いいか、長田。対称に畏まるということ、これは人間の非力さを痛切に知らしめるものなのだ。そこから人間の分ということを人は直感する。神の領域、人の領域に自ずと階層があるということをな。直感としての階層がなにももたらすか、その想像が、長田よ、オマエにはつくか?」

長田は三白眼がどんより曇ったままだった。

論旨が長田の頭の中でまったく構成されていないように見える。

文龍名は構わず続けた。

いいのだ。

所詮、縁なき衆なのだ、長田は。

しかし説法だけは耳に入れておいてやろう、それはオレのせめてもの慈悲だ、と文龍名は思うことにした。

「慎みと自制、だ。より高みを目指そうとする向上意欲だ。あるいは常識であり、品性だ。つまり人としてもろもろ、美質醇風と呼べるものすべてといえばいいかもしれん。西洋的原罪意識、あるいは日本的恥の意識、さて、それはなにに対しての意識か考えてみろ。答えは簡単さ。神、だ。お天道様だ。あるいはもっと下世話にいえば世間、ということさ。どれもこれも不可視の、意識としてのみ具体化されるイメージでしかない」

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鼠の目#356(ほぼ全文はブックマークで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田さん=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。こすからい古参下士官



長田ならばやむを得まい。

質問した自分の愚を呪うしかないな、と文龍名は痛感した。

文龍名は軽く咳払いすると、

「それが人間の原型なのさ。進化論の是非を論ずるヒマはないが、地球に生命体が発生して以来、常に生命と種には優勝劣敗の原則が貫徹されてきた。単細胞から人間まで、すべて、だ。するとどうなる?人は、いや生命体の基本中の基本は生きること、ではないか。生き延びたい、ともがき苦しむのは、生命体である以上避けられないことなのだ」

そこまでいうと文龍名は手近にあったウィスキィのボトルを取り上げ、ゴクリと一口飲んだ。

「おい、いいのか。波動の幹部が酒なんて飲んでて…」

長田の問いに文龍名はカブリを振った。

「祝祭と戦闘には酒精が必要なんだ。祝祭はハレの場であり、戦闘は尋常ならざる場面なのだ。心的状態を場面に応じて切り替えるアルカロイドは酒精しかない。大先師、川崎姉妹のお二人は、こんなことしなくても霊的トランス状態に入っていかれるがな」

文龍名はもう一口含むと、ウィスキィを元の場所に返した。

「で、話の続きだ。生き延びることは簡単ではない。いや、むしろ苦しいことが多かろう。そのために人は精神世界に拠りどころを求めたのだ。これは自発的なものだと考えている。思ってもみよ。人類の祖先が二足歩行を始めたとき、夜は暗く、その闇夜にはスキあらば食ってしまおうという猛獣の瞳が浮かんでいた。昼間もそうだ。手も、足も、すべてにおいて脆弱な人間の祖は、耳を立て、目をこらし、風の音に怯え、血の匂いに恐怖した。彼らはそこで、こう思っただろう。われわれに安心を与え、豊穣に導く不可視の存在があるはずだ、と」

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鼠の目#355(ほぼ全文はブックマークで)

鼠の目・これまでの梗概



文龍名は小さく溜息をつくと、薄くなった頭髪をかきあげる仕草をした。

これから面倒な話をするキッカケのようなものだろう。

「いいか、長田。われわれは波動の真理を訴えるために決起する。端的にいえば、そういうことだ」

「決起?なにに対して決起するんだ?」

「一番大事なことをないがしろにする日本人すべてに対してだ」

長田はキョトンとしている。

それはそうだ。

虫に哲理を理解させるには骨が折れる。

その痴呆面に向かって文龍名は続けた。

「人はパンのみに生きるにあらず、とキリスト経もいう。人として生まれ、最も大切なことはなにか、わかるか」

「そりゃ、あー、なんだ、生きることだろう」

「ほう、よくわかったな。生きること。その通りだ。しかし、人間は考えることができる。生きる意味を考えることができる。人が生きる意味は、生きる意味を考え続けることに尽きる」

「オマエ、念仏でも唱えてんのか。オレは言葉遊びはキライなんだ」

「なんとでもいえ。しかしな、長田。世界のいかなる民族にあっても信仰の存在しない民族はない。確かに無神論という背骨なき人間もいる。しかしな、人は必ずなにかにすがろうとする。なにかスタンダードとなるべき根拠を探したがる。それを信仰といってもいいし、あるいは哲学といってもいい。では、なぜ、人は信仰や哲学を求めるのか、これはわかるか?」

長田は困惑した。

そもそも哲学や信仰とはもっとも遠い範疇にある人間なのだ。

神学論争をふられても、長田には質問の意味すら理解できていないだろう。

「あ、いや、えー、そんなこたぁ、わからねぇよ」

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鼠の目#354(ほぼ全文はブックマークで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田さん=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。こすからい古参下士官



どうした、どうして黙っている、という長田の問いかけに文龍名はやっと反応した。

「あ、いや、なんでもない。考え事をしていた。ああ、長田も一応は波動のメンバーだったな。恩を着せるわけじゃないが、少しだけ事情を話してやろう」

「ほう。どういう心変わりなんだ。まあ、なんだっていいがな。それじゃ教えてもらおうじゃないか」

確かに文龍名は心変わりをした。

なぜか。

前後見境のない瞬間的な暴発が必要な場面が必ず出来するであろう、という予感がそうさせたのだ。

いまここにいる波動のメンバーに暴発するエネルギーがあるか、そう文龍名が自問すると、どうにも不安感が拭えない。

この長田という剣呑な暴力装置なら、なんらためらうことなくできるであろう。

それにこの長田が文龍名の「立ち去れ」という勧告に素直に従うとは思えない。

いや、間違いなく結末を見届けるべく、周囲をうろつくに決まっている。

ならば、この暴発にかけては精製ガソリンより引火点の低い長田に、利用価値はあるんじゃないか、と踏んだのだ。

いってみれば安い掛け捨て保険のようなものだ。

その掛け捨て金が、ここにいたるまでの事情説明とすれば、ビジネスと考えても満更ではなかろう。

虫よりバカな男だが、使い捨てと思えば悪くない。

文龍名の打算は、現実的かつクールだった。

「よし、じゃあ説明してやる。クドクドはいわんぞ」

「ああ、それでいいぜ」

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鼠の目#353(ほぼ全文はブックマークで)

鼠の目・これまでの梗概



「ヘッ、そうかい。ま、とにかく、だ。なんだか愉しそうなことが始まりそうじゃないか。オレが加勢してやるよ」

長田の虚勢が一気に回復した。

それはそうだ。

なにしろ長田は大先師たる川崎真知子と交合したのだ。

川崎姉妹に帰依している文龍名を、気分において凌駕できる。

ただ、それはあくまでも気分にとどまる。

「断る。オマエのような能無しはいらん。そもそも指揮命令系統を無視するヤツは戦士と呼べん」

「そうかい。いらねぇってんなら、わざわざエライ目にはあいたくねぇな。勝手にしな。どうせチンケなヘッピリ腰どもが、走り回るだけなんだろ?」

「なんとでもいえ。しかしな、これだけはいっておく。知恵のない暴発より、指揮命令が行き届いた組織としての力の方が遥かに手強い、とな」

「どういう意味だ」

「どうもこうない。字義通りさ。端的にいえば、命令一本でオマエを眠らせることができる。そうならぬよう直ちに引き返すことを勧める」

「チェッ、大きなお世話だ。ところで、文龍名。一体全体、こうもライフルで武装してナニをおっ始めようってんだ」

「いったところでオマエのザル頭じゃわからんだろう」

「ああ、そうさ。オレは四の五のいうは嫌いだからな。議論はせんよ。実行しかない」

文龍名は少し逡巡した。

そうなのだ。

ある意味、文龍名らは哲学先行の部分がある。

どうしてもここぞ、というところで果断に行えない不安があった。

それは文龍名も気付いていた。

参謀や作戦立案者がいても、実際の戦闘を指揮する下士官がいない。

無論、ここにいるメンバーたちに下士官的能力を要求しても無理なのだ。

なぜならメンバーすべてが平和ボケした戦後世代、それもゆとり世代の連中がほとんどなのだ。

戦闘の修羅場をくぐったものはいない。

わずかに文龍名が在韓時代の徴兵で、ベトナム戦線に従事したぐらいのものだ。

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鼠の目#352(ほぼ全文はブックマークで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田さん=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。こすからい古参下士官



文龍名に自らの出自を暴露され、長田はすっかり意気消沈していた。

長田のように粗暴な腕力の勢いだけでわたってくると、勢いに翳りが出始めるとてんでいけなくなる。

勢いを補う応用が利かないのだ。

サルやゾウ、つまり群れをなす哺乳類の年長者は、勢いを失いボスの地位を降りても「長老」という立場で尊敬される。

そのよってたつ根拠は長老のもつ知恵にある。

ところが哀しいかな、長田には知恵がハナから欠落している。

尊敬されるべき要素が、まったくないのだ。

さらに救いようがないのは、長田自身が「知恵のないこと」に対し無自覚であることだ。

勢いだけで十分だ、そして自分には勢いがある、と夜郎自大的に錯覚しているのだ。

「で、長田。なぜここに現れた」

文龍名は冷たく問うた。

「そ、そ、そりゃ、あれだ。オ、オ、オ、オレだって波動の一員だ。来たって構わねぇだろう」

精一杯の虚勢を張って答えたが、吃音が含まれていた。

追い詰められた長田特有の反応だ。

「構わんよ、別にね。ただ、なぜ、ここを承知していたんだ。ここに大先師たる川崎姉妹が神域を樹てられたことを知っているのは、それほど多くないはずだ」

長田が顔を歪めた。

下卑た嘲笑のような表情を見せた。

「グヘヘヘ。川崎真知子から聞いていたんだよ。ここに神域を樹てる、ってな」

「おい、ここじゃ口を慎め。この神域では姉妹お二人が最高祭司なのだ。オマエのようなクズが呼び捨てになぞするな」

長田はさらに顔を歪めた。

サディスティックな常軌を逸した顔付きだ。

オレはオマエたちが大先師と呼ぶ川崎真知子の肉を知っているんだぞ、と思うと、長田は背筋がゾクゾクするような禍々しい気分になった。

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鼠の目#351(ほぼ全文はブックマークで)

鼠の目・これまでの梗概



「オレは徳永高男は埒外と思っている。ヤツは無駄な小細工はしない。そういう時間と金の無駄を嫌う。小細工より正攻法を取る。そいつは徳永と会ったときに思った。徳永は川崎姉妹を抱え込んでいるが、彼が評価する以上に川崎姉妹の価値は波動内部ではあるはずだ。川崎姉妹、波動をもって金儲けしようと躍起になっちゃいるが、所詮、巨悪になれない善人性が徳永にはあるんだろう。小器用で小才はあるが、突き抜けて大器といえんな。したがってむしろ、文龍名の方が参謀として抜群に切れるのだろう。川崎姉妹をどのように生かして一気に波動をのし上げるか、緻密な計算をたてているはずだ」

「ほう、なかなかの絵じゃないか」

皮肉っぽい口調で山下がいった。

「なんのために川崎真知子がオレに川崎真理子の奪還を依頼してきたか、それすらわからなくなってきた。本人に聞かない限り、はっきりしないだろう。だからオレは川崎姉妹がいる、その神さびた地に向かうつもりだ」

「さっき署に連絡した。川崎姉妹のいる知の監視警戒レベルを上げてくれ、とな。少し遅きに失したかもしれんが」

「ああ、そういえば山下刑事らしからぬうろたえた仕草があったな」

「よくわかったな」

「人間観察が仕事でね」

「邪魔だから行くな、といっても行くんだろうな」

「そうなると思う」

「警察は容赦はしない」

「わきまえているつもりだ」

短くなったロングピース灰皿にこすりつけると、山下刑事が立ち上がった。

尻ポケットからいくらかの札をカウンターに置いた。

女々しく財布をガサガサしないところがいい。

オレは生まれてこの方、財布をもったことがない。

単なる貧乏人の見栄だとは思うが。

山下は、今から署に戻る、と言い残し大股で出て行った。

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