できるだけごまかさないで考えてみる-try to think as accurately as possible

さまざまなことを「流さずに」考えてみよう。"slow-thinking"から"steady-thinking"へ

「保守」ぶっていながら、論法や姿勢がきわめて左翼的な竹田恒泰(その2)

2012-03-06 16:02:36 | Weblog

その1からの続きである。竹田のグダグダな「説明」を引き続き味わっていただこう。

次に竹田は、

>ベラルーシ・ミンスク臨床悪性腫瘍病院の統計によるとチェルノブイリでも、14歳以下の小児の甲状腺がんの発生数は通常年間10人以下であったところ、1986年の原発事故の4年後から激増し、そのさらに4年後には年間100人近くになり、その異常な状態は事故後20年経っても続いている。

などと、これまたリテラシーの低い衆愚を釣ろうと必死である。特に、「異常な状態」という言葉づかいに、あたかも「福島原発周辺もきわめて危険な状態なのだ!」と読者をミスリードしようと必死な点がうかがえる。

しかし、このブログでは何度も言ってきたことだが、チェルノブイリは炉心が爆発した、すなわち炉心にあった核燃料を覆うものが破壊され、核燃料(=高濃度の放射性物質)そのものが周囲に飛び散った事件である。その一方で、福島原発は、一時までさんざん

「メルトスルー(炉心が溶け、格納容器の下を破り、溶けた核燃料が地下に沈んでいる状態)していると考えざるを得ない!!」

と煽られながら、結局、メルトスルーにはなっておらず、格納容器が破れ、核燃料が大気に対してむき出しの状態にもなっていないということが公式に発表されている。しかもそれは昨年のことだ。

 

だとするならば、自分の発言に責任感を持とうという、言論に対して真摯な姿勢を持つ者であれば、今ごろになって発売する書籍に関しては、

・チェルノブイリ事故と福島原発事故の違い(特に、核燃料自体が周囲に飛び散っていなければ、地中にも沈んでいない)

を説明し、その違いを考慮に入れた上で、丁寧に持論を進めてゆくというのが「当然の姿勢」であるはずである。

 

ところが、この竹田恒泰というアホは、今年になってもまだ「チェルノブイリ事故=福島第一原発事故」という固定観念に立脚し、必死に「危険だ危険だ」という印象の「刷り込み」にいそしむ。「アホ」としか言いようがない所以である。

 

違うというのなら、なぜこの部分で、チェルノブイリ事故と福島第一原発事故との違いを説明しないのかに関して、合理的な理由を聞かせていただきたいものだよ。

 

竹田の煽りはまだ続く。

 

>チェルノブイリに関しては次の報告もある。2004年に公表されたスウェーデン北部における発がんに関するマーチン・トンデルの疫学研究によると、チェルノブイリ原発事故によるセシウム137による100キロベクレル/平方メートルの汚染によってがんが統計的に有意に11%増加することを明らかにしている。

 

おお!スウェーデンはチェルノブイリから何百㎞も離れている!!これはいかにも「低線量被曝地域」だ!その地域でさえ、セシウム137濃度が100キロベクレル/平方メートルの汚染によって、そんなにもがんがふえるのか!!!

 

という印象操作を、これまた必死に行っている。

 

賢明な読者ならもうおわかりだと思うが、「低線量被曝の危険性」に関して、たった20ページの記述しかしていないにもかかわらず、一つ一つのデータの紹介が、少ないときはたった2~3行しかないのである。これでは、ただでさえ少ない「論証」の部分が、なおさら少なくなってしまう。まるで、

・愚かな大衆には、ロジカルな論証より、こう書けば焦るだろうという「ショッキングなデータ」をただひたすら並べておくことの方が効果的だ!

とでも言わんばかりの構成である。だから竹田は、ただのアホか、意図的に衆愚を釣ろうとしているかのいずれかだと、その1の紹介文に書いたのである。

 

話を戻そう。チェルノブイリから数百㎞も離れているスウェーデンで、がんが統計的に有意に11%も増加した、というのであれば大問題である。しかもこの引用先は、100キロベクレル/平方メートルという、具体的な汚染度まで記述されている。

このトンデル論文に関しては、その1でコメントをいただいた、ぶぶ様がリンクを張って下さった、buvery様のブログが痛烈に批判なさっている。

 

2011-05-20 ECRRの福島リスク計算は妄想の産物

トンデル論文のPDFはこちら

まず、北スウェーデンの、セシウム137の放射線汚染度マップがこれである。

 "exposure"とは「さらすこと、さらされること」の意味で、「被曝」とほぼ同義として良い。

 

次に、この論文に出ている、1988-1996のがんと死亡の実数と人口は以下の通りと紹介する。

"cancer cases"が「がんの症例」である。この表を基に、buvery氏は以下のような棒グラフを作る。

 

 

 "Total cancer relative risk (raw data)"=「全体の相対的ながんリスク(生データ)」の意味。やはり英語力は重要だなとしみじみ感じる(笑)。

で、buvery氏が指摘なさっているように、汚染濃度60-79キロベクレル/平方メートルの地域では、発がん率がちょっと減っているのだ。

しかも、これが死亡数となるともっとおかしなグラフができるとbuvery氏は指摘なさっている。

 

 

死亡者数が増えているのは、40―59のところと、80―120キロベクレル/平方メートルの汚染度のところのみで、あとはむしろ、汚染度が0-3キロベクレル/平方メートルの地域よりも減っている。これでは、竹田がツイッターで怒りながら否定していた「ホルミシス効果」がむしろ出てしまっている、ということになる。

 

ここからは私の考察であるが、この指摘に対し、

「いや、これは、スウェーデンの医師ががんばったから死者数を減らせただけで、がん発生のリスクは高いではないか!」

という反論がありうる。しかし、死者数のグラフと発症数のグラフを比較すると、スウェーデンの医師ががんばって死者数を減らせるレベルのがん、すなわち「致死性の比較的低いがん」しか発症していない、ということになる。さらにこんな疑問も出てくる。汚染度が0―3のところではスウェーデンの医師がサボり、3以上の汚染度のところではスウェーデンの医師は必死にがんばっているのか??という疑問だ。

そういいうおかしな「スウェーデンの医師像」を持たない限りは、

「セシウム137の汚染度と、がんによる死者数には、統計的には何ら因果関係が認められない」

としか言いようがないのである。

 

ふたたび、buvery氏の指摘に戻る。こういうツッコミを避けるため、学者であるトンデルは「補正」をかけている。表2である。

一番左の列、"Population density"(人口密度)に注目。

人口密度が40人/平方㎞以下の地域は1.00倍、つまり、そのままの数値として扱う、

人口密度が40-199人/平方㎞の地域は1.09倍の補正をかける(=+9%)、

同じく200-499人/平方㎞の地域にも1.09倍の補正をかける(=+9%)、

そして500人/平方㎞以上の地域では、1.10倍の補正をかけている(=+10%)。

 

なんじゃそりゃ(笑)である。この論文の目的は、セシウム汚染度と発がん率、あるいはがんによる死者数との相関をとるのが目的であるのだから、このような「補正」が正当化されるためには、

「人口密度が高いところでは、セシウム汚染度の危険性がより高く出る」

という前提がなければならない。ところが、そんな前提は全く成り立たない。むしろ、人口密度が高い地域の方が、同じ濃度のセシウムを分担して吸入するのだから、むしろセシウム汚染度の危険性がより低くなる、というのならわかるが、その逆を成り立たせるロジックは全くないからだ。

 

というわけで、自分の都合の悪い数字は、根拠不明な「補正」をかけ、しかもその補正が9~10%という、笑っちゃうほど大きな補正をかけた上で、

>セシウム137による100キロベクレル/平方メートルの汚染によって、がんが統計的に有意に11%増加することを明らかにしている。(キリッ!!

とは、どんだけ厚顔無恥な「自称科学者」ならできるのか、という話である。

 

つまり、このトンデルのような「自称科学者」は、絶対に主張したい結論がまず先にあり、その結論に沿うように、勝手にデータをいじってもかまわない、という価値観を持つ、「ニセ科学者」に他ならないわけだ。

 

そして、そんなこともわからずに(あるいは、意図的にすっとぼけて)、

・「統計的に有意」

・「P値が高い」

などの、統計学用語をもっともらしく連発すれば、いかにも

・自分は統計学がわかった上でこれらの論文を引用しています!(キリッ!!

という雰囲気が醸し出せると思っている竹田恒泰と、その発言を鵜呑みにする「衆愚」。どんだけアホなのと(笑)。

 

ということで時間だ。ここまでを、その2とする。

 

その3

 



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