酒造コンサルタント白上公久の酒応援談 

日本文化の一翼を担い世界に誇るべき日本酒(清酒)および焼酎の発展を希求し、造り方と美味さの関係を探究する専門家のブログ。

酒造りの遺言

2024-02-06 14:45:37 | 総合
櫂で溶かすな麹で溶かせ
昔の鑑定官のことばです。蒸し米を溶解しグルコースに分解するのは麹の酵素でありもろみの蒸米を櫂で潰すと良い酒にならないという教えです。酵素力の弱い麹だともろみが溶けません。下手な杜氏は良い麹を作れなく塗りハゼ麹を作ってしまい、もろみを溶かそうとして無暗に櫂を入れもろみをどろどろにしてしまします。結果として吟醸香どころか酸臭のする酸っぱい薄くて辛い酒になります。
酒蔵に入れない納豆、みかん、女性
現代ではありません。女性が酒を造る時代です。納豆もみかんも食べています。
酒造りは捌け
これは私の遺言です。良い蒸米(作業性が良い)で捌けのいい麹を作り、捌けのいいモト、捌けのいいもろみ、出来た酒は捌けがいい。捌けのいいもろみは短時間低圧で上槽ができ、澱下がり早く酒の濾過が容易。もちろん吟醸香は良くでます。もろみのメーターが切れないのは捌けが悪いからですね。低温発酵しにくいとされている協会7号酵母も5℃でメーターが切れます。
酒に問題があるのは自分の蔵に原因がある
立派な酒を造っている人がいるのだから。
腐った酒にもうまい酒がある
少し腐った(?)もおいしい。市販酒ですごく評判のいい酒に少し腐ったのがありました。何年かして蔵元は気が付いたのか普通の酒になったら人気が落ちました。腐った酒(乳酸菌)の研究をしてください。

新型コロナ禍飲酒動機機会の減少

2022-11-28 11:47:20 | 総合
新型コロナが中国の重慶で発生し世界軍人運動大会で世界中から参加した軍人が感染し世界にウイルスを伝播してから三年が経つ。日本で騒がれたのは翌年の大型客船で多数の感染者が出てからである。ウイルスはタイプを変えいまだに収束の兆しが見えない。感染拡大抑止には人との接触を極力避けるのが有効な対策のひとつとされた。お酒は人と人をくっつける特性がある。飲食店は閑古鳥どころか閉店に追い込まれたところがある。もちろん結果としてお酒は売れない。家飲みでは粋が上がらぬ。つくづくお酒の特性を知ることとなった。

新型コロナ流行で世界経済は一旦落ち込んだが一転コロナ対策資金が世に大量に溢れアメリカはコロナバブル経済となったが、インフレは凄まじく金融引き締めで景気は急速に落ち込んでいる。世界経済は中国の経済政策、コロナ対策の失敗で来年は落ち込むと見込まれている。日本では行動の制限が緩和され飲食店には多少の盛り上がりがあるようだが年明けとともにどうなるか。

追い打ちをかけるようにロシアは不条理な理由でウクライナに戦争を仕掛け世界経済を揺るがしている。こういう不遇な時代は避けたいが人類の歴史をみれば稀ではない。苦難の時代は平和な時代より多いのかもしれない。何とかして生き残らねばなりません。

鑑評会と品評会

2022-11-09 16:44:10 | 総合
品物(動物も)の品質の優劣を評価格付けし賞状を授与する言葉として品評会は明治以降使われ最近まで品評会という言葉が巾を利かせていました。鑑評会ということばは日本酒と本格焼酎の品質鑑定会にしか使われていませんでした。品評会と鑑評会の違いは昔は鑑評会では賞を与えないという違いでした。鑑評会の代名詞とでもいう全国新酒鑑評会も長らく賞状は与えられていません。昭和50年代になって金賞の賞状が付与されて品評会との違いが無くなったといってもいいでしょう。爾来40年余、今や鑑評会が清酒以外の分野でも使われ始め品評会の牙城を崩しつつあるかのようです。家畜やペットでは品評会がつかわれています。・・・テレビ見ていて驚きました。
なんで鑑評会という言葉が発明されたか?
明治の自家醸造禁止酒税法成立以降酒類の監督官庁は大蔵省でした。品評会は産業行政の一環なので産業行政をしない大蔵省は品評会ということばを使えないので代る言葉として鑑評会を考えだしたと先輩から聞きました。この辺の経緯は失われているので今さらです。

後期高齢者になるのを機に酒類産業から引退します。これからは思い出話を書こうかと思います。最近は酒の様相も様変わり時代に合わせて魅力的な酒が生み出されていくでしょう。日本醸造協会出版の酒造教本は第三版が増刷されました。初版から20年以上経っていますが専門書としてはベストセラーだそうです。なお、英訳本もあります。

現代日本酒の技術のルーツはどこから来たのか

2022-09-16 22:50:49 | 総合
日本酒(清酒)はどうやって現代に至ったのかあまり耳にしたことがない。ルーツはどぶろくであろうが今の清酒の形が出来上がったのは西暦年第1800年の灘、西宮の酒作りである。それ以前の酒は甘くて酸っぱいとろっとした酒であった。飽きやすい酒だった。灘・西宮の酒造りで酒の味が一挙に変化したのである。何杯でも飲めるの見飽きしない辛口になった。嗜好性が一挙に向上したのである。コペルニクス的とは言わないが味革命が起きた。酒造り技術の担い手は丹波の出稼ぎ杜氏であった。革新的な酒作りの技術は現代に引き継がれ、清酒の仕込み配合はその当時の基本を引き継いでいる。詳しくは日本醸造協会発行の酒造教本のとおりである。もっと詳しくは本ブログに記してある。
灘・西宮の酒造技術が全国に普及した過程は謎である。諸先輩や全国の酒屋さんの話の断片を拾い集めると江州商人と丹波の杜氏がタグ組んで一緒に全国で酒造りを始めたという。十一屋とか江州店の作り酒屋は多い。地方では依然として古い技術で野暮ったい酒(いなか酒)を造っていたので勝敗は明らかだった。瞬く間に灘・西宮の酒(本場の酒)が全国を席巻したのは当然の結果だった。

くだらん:上方から江戸に行くことを下ると言った。灘・西宮で造られた良い酒だけが江戸に下った(送られた)。くだらんとは江戸に送ることができない品質不良の酒をさす。

新技術が日本中に広まると酒造り集団が各地で誕生した。九州は築後杜氏、五島列島にも小さな杜氏集団が平成時代もあった。広島(安芸)杜氏、出雲杜氏、丹波杜氏、丹後杜氏、糠(福井)杜氏、能登杜氏、越後杜氏、志太(静岡)杜氏、信州杜氏、南部杜氏、山内(秋田)杜氏・・・令和になった今ほとんど残っていないと聞く。現代の技術の担い手は酒造会社、研究機関、大学になっている。日本醸造協会、もやしメーカーも根幹的な技をを保有している。

間もなく後期高齢者になるので下らない話でも残せば何かの役に立つかもしれないという気持ちです。文字で残さなければあったことも無かったと同じで記録するというのは大事です。

日本酒の未来

2021-06-27 12:51:44 | 総合
本日安価なワインを買った。チリ産、赤、750ml、税抜き458円。ポイント還元入れるなら税込み1本500円。何という安さ。1本はフルボディ、他はミディアムボディ。肉料理のに使う予定だが味見。樽貯蔵の香があり不良香は感じられない。酸味、苦味は丁度いい。甘が残らずボディもある。渋みが荒いのは仕方ない。後記:メトキシピラジンの匂いが強かった。これは好き嫌いあるが嫌いだ。
価格で対抗できる日本酒でこんな安いのは紙パック品だろう。ワインは瓶だ。見た目どちらがいいか誰でもわかる。パック日本酒が美味いならまだ見込みはある。安く作った日本酒はそれなりの味だ。消費者を満足させられる物を見たい。日本酒に関わる者として髀肉の嘆だ。