サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

環境新聞連載:「再生可能エネルギーと地域再生」より、14回目:小田原市の再生可能エネルギーと地域づくり(3)

2017年07月17日 | 低炭素社会・エネルギー

前回は、ほうとくエネルギー(株)(以下、ほうとく)の設立の動きを紹介した。今回は、再生可能エネルギーの電気を供給する小田原箱根エネルギーコンソーシアムを紹介する。

 

●小田原箱根エネルギーコンソーシアムの設立

2016年4月からの小売電力全面自由化が開始されたことから、2016年8月、小田原箱根エネルギーコンソーシアムの電力供給サービスの発表会が開催された。コンソーシアムは、ほうとく、(株)古川、小田原ガス(株) 、湘南電力(株)の4社が参加し、自然資源を活用したエネルギーを地産し、地域内で供給する仕組みとして結成された(図参照)。2016年10月1日より、一般家庭向け電力「湘南のでんき」の供給サービスを開始した。

「湘南のでんき」は、コンソーシアムに参加する古川と小田原ガスが代理店となり、小田原箱根地域での小売販売を行う。「湘南のでんき」は県の支援を受けていることもあり、神奈川県全体が小売対象である。「湘南のでんき」は、①.電力料金が東京電力より安い、②電源は神奈川県内で発電される再生可能エネルギーを優先的に使用する、③.電気料金の1%が神奈川県内の地域貢献活動に還元される、という特徴を持つ。

 

●サッカーのスポンサーとなることから始まった湘南電力

湘南電力は、エナリスとサッカーJリーグの湘南ベルマーレが合弁で設立した小売電力会社である。

エナリスは、再生可能エネルギーの地産地消を行なうためには、需要を予測し、供給を制御する技術が必要になることから、需給管理サービスを行う会社として設立された。現在は、50kW以上の高圧事業家を対象にしたコスト削減、見える化、ピークカットに関するサービス等の提供を行っている。2014年、神奈川県の湘南地域を広域ホームタウンとする湘南ベルマーレがスポンサー企業を探しており、エナリスにアプローチがあった。エナリスはスポンサーになるだけでなく、湘南ベルマーレと共同で地域電力会社を設立し、電力の地産地消で湘南地域を活性化することを提案し、湘南電力を始めることになった。2014年9月から、湘南ベルマーレのスポンサー企業への電気供給が始められた。電力市場から電気を調達し、利益の一部をベルマーレや地域の活性化活動に還元するというビジネスモデルである。

2015年度、2016年度と、湘南電力は神奈川県の「地域電力供給システム整備事業」に採択された。県内の太陽光発電設備等の分散型電源から電力を調達し、県内の一般家庭や事業者に電力を供給するシステムの構築を、県が補助する事業である。2015年12月に、県と湘南電力の間で、県の補助事業の後も協力し合うという趣旨の協定書を締結した。現在、湘南電力の電気の調達先は太陽光が中心である。ほうとくがもっとも大きい調達先で、他には平塚の工場屋根の太陽光発電など、神奈川全域から調達している。ほうとくからはFIT価格よりも高い価格で買電をしている。

 

●エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議

湘南電力をサポートしており、ほうとくと一緒にやらないかと声をかけ、小田原箱根エネルギーコンソーシアム実現のきっかけをつくったのが、鈴廣かまぼこ(株)代表取締役副社長の鈴木悌介氏である。鈴木氏は、(連載12回目に紹介したように)ほうとく設立のキーマンでもあり、電力小売事業のつなぎ役にもなった。

鈴木氏は、地域密着にとどまることなく、全国的なネットワークの設立にも奔走した。商工会議所青年部会長としてのネットワーク を使い、全国行脚をして回り、2012年3月「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議(略称:エネ経会議)」の発足会を開催した。120名の発起人、メディアを始め300名が集まった。2013年11月に一般社団法人として登録した。

エネ経会議では、2つの取り組みがなされた。1つはエネルギーの地産地消、もう1つはエネルギーの賢い使い方(省エネ)である。鈴木氏は、「原発の反対運動をやろうというわけではなく、エネルギーに関する中小企業の経営者の会である。それぞれが自分の企業、会社という現場を持ち、自分の仲間がいる地域、仲間のひとりとして影響を与えあえる仲間がある。知恵、ノウハウ、勇気も含めて共有し、それぞれの現場でできることをやっていけば大きな力になる。」という。

 

●若者の参加機会としてのおひさまマルシェ等

若者のつなぎ手となってきたのが、エネ経会議の事務局長を務める小山田大和氏である。郵便局で働いていたところ、かねてより交流のあった鈴木氏から電話があり、エネ経会議の事務局を乞われて、参加することになった。小山田氏がおひさまマルシェ、小田原電気バス、おひるねみかんプロジェクトを動かし始める。

おひさまマルシェは、小田原城にて2014年3月に初開催となった。小山田氏は、「原発に対して様々な考え方があってもいいが、頼らない暮らし方の提案があってもよいのではないか。フォーラムやシンポジウム形式で固くやると硬い会になる。「腹をくくって楽しくやる」というコンセプトで、楽しい環境体験型イベント、若い人向けイベントをやろう。」と考え、このイベントを企画した。当初、30団体程の参加を想定していたところ、115団体が参加し、来場者は5,000人となった。2015年はパルシステムによる「市民活動応援補助金」や企業の出展、協賛を受けて開催し、2万人が来場した。

小田原電気バスは、文部科学省の研究事業として実施されたもので、市内で電気バスを走らせる社会実験事業であった。実験期間の終了後も、環境省の地域における草の根活動支援事業に対する補助金を受けて、電気バスを走らせた。

おひるねみかんプロジェクトは、みかんの耕作放棄地で農業とエネルギー組み合わせるプロジェクトをやってみようという狙いでは始まった。おひるね(おやすみしている土地)の有効活用である。みかん貯蔵場所の温度湿度調節に再生可能エネルギーが使えないか検討中である。2016年11月には、農業を継続しながら発電も行うソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)事業「おひるねエネルギー」を開始した。

 

●地域ぐるみの動きのつなぎ役・仕掛け人

小田原市での再生可能エネルギーの発電と小売の取組みは、地域の企業がつながり、主導して、立ち上げられてきた。ほうとくの設立にあたってコーディネイターを務めた志澤昌彦氏と鈴木大介氏(前回までに紹介)、今回紹介した鈴木悌介氏、小山田大和氏といったつなぎ役や仕掛け人が動き、地域ぐるみの取組みが展開されてきた。

 

次回は、岡山県西粟倉村の木質バイオマスや小水力を中心とした動きを紹介する。

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