サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

環境新聞連載:「再生可能エネルギーと地域再生」より、11回目:上田市の再生可能エネルギーと地域づくり(2)

2017年04月23日 | 低炭素社会・エネルギー

前回は、上田市における市民共同発電事業「相乗りくん」の基盤となるネットワーク形成(第1段階)、同事業のアイディア生成と事業の離陸(第2段階)について、紹介した。

今回は、「相乗りくん」の事業の特徴を確認するとともに、同事業の経験を得て、事業を拡張している第3段階の動きを紹介する。

 

●「相乗りくん」の特徴

「相乗りくん」は、一般住宅や企業または行政の屋根や土地を借りて、市民出資により太陽光発電を設置する事業であり、屋根提供者と出資者の両方に経済メリットがある、NPOの非営利事業である。設置施設は32か所、合計355kWであり、上田市を中心に、佐久市、東御市、安曇野市と広がっている。出資者は約200人、信託額は約8千万円で、出資者は県内と県外が半々の比率となっている。

「相乗りくん」では、出資者はパネルオーナーとして特定され、設備が設置される屋根オーナーとの相対の関係が形成される。これにより、パネルオーナーが、自分が出資したパネルを見学したり、屋根オーナーとの顔を見える関係が形成される。

前回、「相乗りくん」の立ち上げを担った4人組の地域内外のネットワークが、事業の呼びかけに活かされ、事業の基盤となったことを示したが、「相乗りくん」の事業により、さらに新たなネットワークが形成されていくのである。

 

●「相乗りくん」の事業経験を活かした展開

「相乗りくん」の事業離陸を経て、上田市民エネルギーの経験を活かした他地域を支援する事業を始めた。

2013年の一般社団法人 自然エネルギー共同設置推進機構(NECO)の設立である。代表理事を信州大学の高橋伸英教授が務めている。この法人では、上田市民エネルギーの藤川氏らの経験を活かし、自然エネルギー設備設置の課題解決に貢献することを狙いとしている。具体的には、運営業務の受託サービスと費用を集めるためのノウハウ、設置したエネルギー施設運営のノウハウを、太陽光の設置を考えている団体に提供したり、団体設立の支援も行うこととしている。

さらに、上田市民エネルギーは、公共施設の屋根貸しによる市民共同発電事業にも進出する。2014年度に上田市立保育園の屋根を借りた発電事業者となり、約20kWの発電設備を2015年度に設置した。上田市民エネルギーにとっては、公共施設での賃料は少し高いが、市役所との連携は、公共との連携による信用形成になると考えたという。

 

●信州大学繊維学部との連携

2015年度には、信大SENI(Solar Energy Nexus Innovation)おひさまプロジェクトにより、信州大学繊維学部に市民共同発電所(50kW)を設置した。これは、前述の高橋教授の発案による。同教授は、「上田市民エネルギーの取り組みは、規模は小さいものの、関わる人の数が多く、自然エネルギーを含むエネルギー全般について意識を高める活動につながっている」と捉えていた。市民、地域、大学、学生がひとつのことに関われる仕組みを検討するなか、上田市民エネルギーを通じて太陽光パネルを大学に入れようと考え、学内に提案した。学内調整は簡単ではなかったが、それでも2015年7月に記者会見し、夏の間に資金が集まり、11月に点灯式を行った。

さらに、同教授は、「学生の反応は好意的、かつ前向きに参加への姿勢を見せている。環境ISO学生委員会を中心に、手探りではあるが取り組みを進めている。オープンキャンパスなど外部からパネルを見学に来る際の説明を学生に務めてもらいたい。また、パネルオーナーに年1回、おひさまプロジェクト便りみたいなもので、報告することも学生にお願いする。」という。

藤川氏と同教授は発電電力のモニタリングデータを解析し、「相乗りくん」で設置した他の発電所との比較を行ったり、パネルの角度による降雪時の発電量への影響を調査している。また、太陽パネルを設置した敷地の除草のために繊維学部で飼っている羊の活用をISO学生委員会と一緒に実証実験している。

 

●さらに新たな展開へ

2016年9月には、上田市民エネルギーの理事である合原氏の田んぼに、「空田丸ソーラーシェアリング」(50kW)の設置を行い、発電を開始した。ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電とは、耕作農地のうえに作物の生育に適した範囲で太陽光発電を置き、夏の過度な日差しや冬の放射冷却を低減し、農作業をやりやすくするシステムである。

また、上田市では、長野県の自然エネルギー信州ネットの呼びかけで、自然エネルギー上小ネットが設立され、地域内の交流や再生可能エネルギーに係る技術開発を進めている。また、バイオマス分科会には、大手建設会社で上田事務所長をしていた方が参加し、地元の鉄工所とともに、木質バイオマスボイラーの開発を行っている。

上田市内に立地する長野大学でも、大学近隣のアカマツが松くい虫の被害を受ける中、アカマツの伐採とボイラーでの利用を考えている。また、長野大学も上田市民エネルギーと連携して、太陽光パネルを設置しようという動きがある。

 

最後に、上田市の取り組みは、上田市民エネルギーの関係者、地元大学の教員など、地域外からの移住者であることが特徴であることを指摘しておく。移住者の持つ地域や人とつながりたいという欲求や自由な先取性が、上田の取組みを促してきたといえるだろう。今後は、移住者のみならず、従来の住民がつながり、さらに地域づくりが動きだすことが期待される。

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