shinyakomatsu2016

超短編小説を掲載しているブログです。実力は全くないですが読んで頂けると幸いです。よろしくお願い致します

「最後の色彩」

2016-10-12 12:25:18 | 小説

1「彼女達の色彩」

 

彼女の髪は普段は黒髪で毛先も黒色だ。苦痛な心境の時は彼女の髪の毛先だけ青色に、特に嬉しい時には彼女の髪の毛先だけ茶色に染まる。全体ではなく髪の毛先だけ染まる髪。彼女は染まるのが彼女の髪の毛先だけだから、余り目立たないから良かったと思っていた。

彼女の娘の髪の毛先も彼女と同じ「色彩」だ。髪の色彩が彼女に良く似ていた。初めて僕が彼女の娘に会った時、昔の彼女に瓜二つで少し驚いた。髪の毛先の色彩で僕は彼女と娘の感情が分かる為、彼女達の今の感情が把握しやすいので有難いと思った。

僕と彼女は仕事が無い日に食事に行くようになった。そして、何時の間にか僕と彼女と彼女の娘の三人でたまに焼肉を食べるようになった。

僕達、三人はたまに連絡し合うようになった。

彼女から最近、割とよくメールが来るようになった。そのメールの内容は殆ど彼女の娘の学校生活等の他愛もない話だけど、それでも彼女は僕とメールするとスッキリするようだ。

彼女はもうすぐ再婚するみたいだ。しかし、彼女の再婚相手の男と、彼女の娘とは折り合いが悪く、娘はこれ以上その男と一緒にいたくないみたいだ。彼女の娘は頼れる相手がいなかったけど、彼女が僕の事を話し、僕の写真を見て、たまに三人で焼肉屋に行くようになってから、彼女の娘は僕と二年間ぐらい一緒に過ごさせてほしいと願うようになっていたようだ。

彼女は今までずっと娘を二年間預かってくれる相手を探していた。

娘も大事だけど、彼女は今好きな男との関係の方がもっと大切だと言っていた。

今日、僕と彼女は喫茶店で話をしていた。そして、ふと彼女は昔の僕と過ごした記憶を思い出し、思わず、一瞬、彼女は髪の毛先が茶髪になった。つまり彼女は僕を思い出して特に嬉しい気分に一瞬なってくれたようだ。

そして、喫茶店で話しをした後、昔付き合っていた頃、僕と彼女が別れる前に、最後に行った洋食屋で二人共とんかつとカレーを食べに行く事にした。彼女の相手に誤解されぬように逐一、彼女はもうすぐ旦那になる男と連絡を取り続けていた。

そして、彼女は僕に会いに来た本当の目的を告げた。僕も彼女の本当の目的は分かっていた。出来れば本気で彼女の娘を二年間預かって欲しいと。高校を卒業すれば彼女の娘は就職して此処を去るようだ。しかし、一人でも余裕のない僕が年頃の女の面倒を見られる訳がない。固辞したけど、娘も頼んでいるようだ。

取り敢えず待って欲しいと言った。それでも、彼女は真剣に頼み続けた。困惑したけど、僕はまた取り敢えず三人で話す事にした。

三人で話しあった夜、彼女の娘からメールが着た。珍しく絵文字など無しで文章だけでメールを送ってくれた。僕はため息を少しだけついた。でも、それでも彼女達の役に少しだけ経ちたいなと思っていた。彼女の娘のメールを再び見ていた。

「出来れば、しばらく一緒に暮らしたいんですけど。精神的に不安定ですけど、治療薬を飲めば、何とか普通に生活できますので。高校を卒業したら違う街で生きる予定です。しばらくよろしくお願いします」とメールが着た。

僕は脳の回路が焦げるぐらい久々に悩んだけど、僕はまあ二年間ぐらいならいいかなと思うようになった。彼女の娘の望みは、彼女の望みでもある。試しに少しだけ僕は彼女の娘と共同生活をして、彼女の娘がダメなら他に新しい居場所を見つけて貰うしかないと思った。

最近、僕は寂しい日々を送っていたから、彼女の娘と共同生活すれば、少しは僕の寂しさが紛れるかもしれないと思った。それに、彼女の娘はきっと、彼女の養父よりは僕といた方がマシだと思っているのだろうと思った。

僕は出来る限りは彼女の娘の事を心配して、彼女の娘を僅かでもフォローして生きようと思った。彼女の娘がなるべく居心地がいいと思ってくれるように、僕の出来る範囲で努力しようと思った。

そして、僕は彼女に彼女の娘よりも早くメールを送った。

「分かった。二年間だけならいいよ」と。彼女は喜んでいた。「色々有難う」と彼女は返信した。彼女は自分の娘より彼女の女としての幸福を選んだ。そして、彼女の幸福と反比例して彼女の娘は幸福の気持ちが減少していく。

恋愛は愛情の中でもかなり強い副作用があるのだなと思った。自分でコントロールする事が出来ない程、恋愛は強い副作用がある。恋愛の為に自分の娘を捨てるぐらい。

僕は彼女とのメールのやり取りが終わった後で、彼女の娘にも同じようなメールを送った。娘は素直に少しだけ喜んでいたようだ。直ぐに「お願いします。我儘を聞いてくれて有難うございます」とメールが着た。そして、彼女の娘は翌週の日曜日から僕の自宅で約二年間、共同生活をする事を決めた。今の僕には彼女をフォローする自信は全くないけど、取り敢えず僕は彼女の娘と一緒に暮らす事にした。

 

2「娘のタトゥー」

 

彼女の娘はよく腕を軽く切っている。痛みで彼女の娘は自分を保つらしい。

彼女と違い、娘は根暗な感じがしていた。

彼女の娘がリスカする時、何時もその前に、彼女の娘の髪の毛先の色が青色になっていた。

髪の毛先の色が青色に染まるのは、彼女の娘が苦痛の時。しかし、リスカしようと思わない時は彼女の娘の髪の毛先の色は何時も黒色だった。

彼女の娘は精神科に二週間に一度通院する。送り迎えなど、僕は彼女の娘の面倒は見られない事を伝えたけど、それでも、心配する時もたまにある。それでも彼女の娘は「此処にいさせて貰って良かったです」と屈折した笑みを浮かべて僕に礼を言った。

日に日に彼女の娘の暗さが深くなり、彼女の娘の屈折さが少しずつ強くなっていく気がしていた。

彼女の娘は友人と同じ診察日で診察が終わった後に近くのファミレスで過ごす時間もあるようだ。彼女の娘は根暗だけど、割と色んな人達と交流していた。

彼女の娘の手首の切った時の傷跡は夜空の星達のように無数にあった。どんなに友人と遊んでも、どんなに恋愛をしても彼女の娘はずっと孤独で辛く感じたようだ。それでも、彼女の娘は友人達や恋人と過ごす時間だけ幾分気が紛れた。そんな彼女の娘に僕は何か出来ないだろうかと思っていた。

でも、僕にできるのは仕事を終えてから家路を急ぎ、彼女の娘がたまに家にいる時だけ料理を振る舞う事ぐらいしか出来ない。家事もなるべく僕がする事にした。

彼女の娘の手首の「タトゥー」を見て僕は彼女の娘の孤独を知った。苦しさを知った。僕にはどうする事も出来ないけど、彼女の娘は何とか無遅刻無欠席で高校に行っていた。卒業したら此処を出ると改めて言われた時、僕はまた何かあったら連絡して欲しいと言った。何も出来ないけど愚痴る相手がいれば良いと思った。彼女の娘はその言葉に感謝した。

そして、来年の春に彼女の娘は此処を離れて暮らす事を完全に決めた。

きっと、彼女の娘はまた手首に「タトゥー」を刻んで生きて行くのだろうかと思った。苦しさを刻んだ無数の傷跡。その傷跡は一生消えないだろう。

それでも、彼女の娘は手首をなるべく切らないようにしようと思った。しかし、彼女の娘が手首を切っていなければ、今より、もっと彼女の娘は苦痛だったのかもしれないなと思うようになった。

このタトゥーは生涯消えない。それでも、彼女の娘は良いと思っていた。

どんな相手と熱愛しても手首は切るようだ。

だから、彼女の娘の友人は切らないから彼女の娘を心配している。

「リスカすると、生きている実感を得られるんだ。痛みと血が流れていると少しだけ心が安定するから、この先も傷跡が増えていく気がする」と言って友人も「本人が良いならそれでいいと思う」

「有難う」「いえいえ」と言うような内容の会話もしていた。

そして、今日も彼女の娘と友人は診察後、何時も行くファミレスでしばらく話して、何時ものように彼女の娘達はまた二週間後に会う約束をしてから娘と友人は「自宅」に帰る事にした。

 

3「高校時代の記憶」

 

僕と彼女が付き合って半年後に互いに初めての行為をする事を決めた。僕達が同時に「大人」になる事を約束した日。この日は冬雨が通り過ぎて肌が痛むほどの寒風が吹いてきた昼。ようやくこの冬の雨が過ぎた日だった。寒々しい寂寥の青空。痛みを増す冷却する空気の中で、僕と彼女は共にホテル街で値段が安いファッションホテルに行く事にした。

行ってみると、多少、老朽化しているけど、値段が手ごろでいいなと思った。

僕達は部屋に入ると互いに緊張していた。取り敢えず、僕達は別々にシャワーを浴びてから、不慣れなキスをした。そして、割と綺麗な部屋で二人はキスより先に進む時に四苦八苦していた。僕は彼女が痛がるから余裕を持ってする事にしていた。

しかし、結局、この日、僕達は途中までで終わる事にした。そして、僕達は半分だけ「大人」になった気がした。互いの感触が少しだけ伝わったから。

そして、僕達はまたシャワーを浴びてから外に出た。

ただ僕達は手を繋いで歩いていた。冬雨がまたぽつぽつ降り始めた。そして、僕達は来週も途中まで行為をしたこのファッションホテルに行く事にした。

今思うと、彼女は繊細で時折気紛れで強気になる事もあるし、デリカシーが無い一面もあった。それでも清潔で割と明るい性格だった。だから、一緒にいて僕もつられて明るくなる事もあった。彼女の顔を見て、一緒にいる時間が増えて、更に僕は彼女の事が好きになっていった。出来れば僕達が高校を卒業しても、まだ彼女と付き合いたいと思うぐらい。

僕達は行為なしのデートも重ねて、行為がなくても僕は彼女といて楽しいなと思っていた。一緒にいて楽しくなる彼女の明るさ。その明るさが僕は彼女の一番の魅力だと思った。

そして、半分だけ「大人」になった翌週に、ようやく僕達は「大人」になった。何とか無事終わり、互いにまたシャワーを浴びてから外に出た。互いにとって特別の日になった。

さっきの行為で、彼女は痛いけど余り出血せず、僕は彼女の事を思うと、今回何とか上手く出来て本当に良かったと思った。

しかし、その時の僕達は一番刺激があって気分が一番ハイテンションになっていた。その日は頻繁にメールが着た。そして、初めて行為をした翌日に学校で出会う時は照れた。

僕達はもう完全に互いを「恋人」と自信を持って言える関係になれた。

そして、今度、行為をする時はホテル代が高いから彼女の家で誰もいない時に、彼女の自室でする事にした。彼女の家族が仕事で、いない時間帯に僕達は行為をしようと思っていた。

今、思い出すと、この頃の僕達は思春期の終わりの時期だったなと少し懐かしく思った。

あの頃の僕達は痛みが取れるまで行為をしなかった。彼女が行為に慣れるまで、僕達はゆっくり行為をした。互いの熱はもう伝え合ったけど、何もしないとまた熱が醒めてしまう。だから、なるべく醒めないように行為をしたい。熱が醒めるのが僕達は嫌だから。だから、その時の僕達はゆっくりでもいいから行為をしたかった。

そして、僕達はそれなりに行為に慣れてきた。互いに行為が上達してきた。僕達は「異性」として確実に成長したと思えるようになった。

そして、彼女も段々、行為をしても痛みよりも快楽を感じるようになってきた。別れる前には彼女は完全に快楽を感じられるようになってきた。

完全に「恋人」になった以降の行為は、彼女の部屋で誰もいない時にするようになっていた。そして、特別な日のみ、僕達はファッションホテルで行為をするようになった。

高校を卒業した翌日、僕達は最後に「大人」になったホテルの部屋で最後の行為をした。互いの愛情を断つ為に。僕達の熱を醒ます為に。

 

4「最後の春」

 

来週から彼女の娘は医療事務の仕事をする。娘は僕に感謝していた。

「助かりました。一緒にいて凄く暮らしやすかったです。また暇が出来たら会いたいです」

僕はその言葉を聞き、彼女の娘と此処で暮らした約二年の日々が早くも懐かしかった。

高校三年の夏から彼女の娘は就職活動をしていた。彼女の娘は医療事務の勉強をするようになった。彼女の娘は此処から少し離れた病院で勤務する事を望んでいた。そして、高校を卒業後に何とか彼女の娘は就職先が決まり、彼女の娘は安堵した。僕も安堵した。

結局、最後まで彼女の娘は僕に心を開かなかったけど、僕はそれで何となく良い気がした。

彼女の娘の彼女に対する憎悪がしばらく濃くなった時期もあったけど、今の彼女の娘は屈折な性格も徐々に無くなり、大分、明るく優しい性格になってきた気がした。

僕は恐らくそれが彼女の娘の根幹の性格だろうなと推察した。

また僕は孤独の日々を送るだろう。感情的に辛いと言う日々が待っているだろう。それでも、この二年間は忘れない。僕は強がる事にした。何時も外で他人に向ける笑みを浮かべる事にした。彼女は幸せになり、彼女の娘も新たな生活が待っている。

そんなある日。彼女の娘が此処を離れる三日前にメールが着た。携帯を見るとメールの送り主は彼女だった。

「もうすぐ離婚するから、離婚したら君の部屋にしばらく泊めて」と突然そう伝えた。

「無理だって」「しばらくでいいからさ」「……分かった。しばらくはいいよ」「有難う」そんなメールのやり取りをした。丁度、僕は孤独で一番苦しむ時期に彼女と暮らせる事が彼女には悪いけど、正直嬉しかった。僕は孤独だと心臓がバクバクして苦しむタイプだから、彼女が気の毒だけど、正直、僕は彼女との共同生活がこれから出来るから良かったと思った。

僕は「了解しました。またさ……昔、三人で行ったあの焼肉屋に行こう」と誘った。彼女は直ぐにメールが届いた。

「私、正直、昔からあの子苦手だったから……こめんね。今まで娘を預かってくれて有難う」と言って三人で会う事を断った。僕は彼女のメールをまた二回も見てから、彼女は本当に母性が余り無い冷たい母親だと思った。

僕は彼女の娘にも誘っても、娘も三人で飯を食べる事をやんわり拒んだ。彼女の娘は僕とだけなら良いみたいだ。仕方なく、この先、また三人で一緒に食事が出来る日を待つ事にした。

彼女は今、彼女の娘が此処を出る前日。彼女はビジネスホテルに泊まり、娘と入れ替えで僕と彼女は暮らす事になった。もう彼女は離婚していた。これで僕は明日から彼女と正式に暮らすようになった。

翌朝、僕と彼女の娘は昼頃まで他愛もない話をしていた。しかし、僕は彼女の娘のリスカの話は敢えて聞かなかった。

そして、彼女の娘が此処を出る時間が迫っていた。

僕達は特に思い出もなく、離れる時が刻一刻近付いていた。

最後に彼女の娘が初めて心から僕に明るい笑顔を見せてくれた。そして、彼女の娘は初めて僕といる時に髪の毛先の色が茶色になった。

彼女の娘も特に嬉しい時に彼女と同じく、髪の毛先が茶色くなるから、僕はそれで満足した。

今は彼女の娘が離れて寂しい。この先も、彼女の娘ともう二度と暮らさないし、暮らせないから寂しいのは事実だ。

この先、彼女の娘が何時か僕に心を開いてくれるのか分からない。だけど、僕と彼女の娘と約二年間、共同生活が出来て良かった。

彼女の娘は少しだけ屈折したオーラを出してリスカする前。その時、彼女の娘の髪の毛先の色が青色に染まっていた。そんな時があるけど、それでも彼女の娘は少しずつ明るくなった気がした。昔、彼女と彼女の娘と彼女の娘の実の父親と三人で生きていた日々。今、彼女の娘は「三人」で過ごした時を思い出した。

そして、彼女の娘は初めて僕の前で涙が堪え切れなくなり少しだけ泣いた。この時、最初は彼女の娘の髪の毛先は黒色だった。しかし、涙を拭って、僕の顔を見ると彼女の娘の髪の毛先の色は再び茶色になっていた。彼女の娘にとって「三人」で過ごした記憶を思い出す時は今でも特に嬉しかったようだ。

しかし、この先、また繰り返し彼女の娘はリスカするだろう。それでも、少しずつ彼女の娘の本来の明るい性格に戻ってきたのだろうと思った。

そして彼女の娘が去る時が来た。彼女の娘はもう先だけを見ていた。

しかし、それでも、彼女の娘との共同生活が終わっても、今の僕は寂しくない気がした。

彼女がまた再婚をする時まで多分、僕と彼女は共同生活が続くのだろうと思ったから。

ジャンル:
小説
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 「pain of love」  | トップ | 「blue bird」 »

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。