shinyakomatsu2016

超短編小説を掲載しているブログです。実力は全くないですが読んで頂けると幸いです。よろしくお願い致します

「秋の雪」

2016-09-19 17:29:39 | 小説

僕は彼女の部屋にあった私物の荷物を既に片付けていた為すぐに此処から出られる。彼女と此処で一緒にいた思い出を僕は忘れたりしない。僕はこの日、暗い昼間の太陽を眺めていた。 今夜、僕達は別れ話をする。きっと今夜、彼女は泣かない気がした。傷ついても。 僕達は先週の日曜日からもう関係は持たなかった。もう僕には彼女以外に好きな女がいる。 きっと、また僕達は終わりが来る恋愛を懲りずにするだろう。 僕達の「今」の恋愛が完全に終わる時が近づいてきていた。 僕達は二か月前から別れを意識していた。最近の僕はもう彼女を惰性だけで好きになっていた。彼女も僕が彼女への愛情が惰性になっていた事に気が付いていたから辛かったのだろう。もう、異性として刺激のある生活をしていたあの頃には僕達は戻れない。もう戻れない。ただそれだけの事実が僕達を哀しくさせる。 彼女は最後に食事でもしようかと言っていた。近所の中華料理店で天津飯を二人で食べに行った。その日も彼女は重たくなかったけど、それでも流石に彼女は傷ついたような感じだった。彼女は余り食事が進まず、僕が自分の分と更に彼女の天津飯の半分も食べた。 僕は彼女と別れて新しい女との新しい恋愛を始めるようとするのを決めたのは後悔していない。ただ、出来ればずっと僕は彼女を異性として魅力を感じる時間が続いて欲しいと思っていた。僕は彼女を異性としては愛せない時が来るとは付き合った当初は夢にも思わなかった。でも、それがきっと恋愛なのだろうと今、思うようになった。 今日は珍しく秋に雪が降ってきた。此処で秋に雪が降ってきたのは記憶にはない。雪が全てを許してくれた気がした。もう一緒にいる時間が終わりに近づいていた。せめて此処で雪を見ながらただ歩いていた。もう僕達は手を繋いだりしない。彼女の自宅に向かって歩いていた。そこで僕達はコーヒーを飲んで少しだけ話して終わる事にした。 道中で、僕はふと雪が付いた彼女の唇を見た。今まで麻痺していたけど、今、僕は彼女を見て改めて良い女だったんだなと思った。 僕達は彼女の自宅でコーヒーを飲んでから別れ話をした。彼女は割と直ぐに別れる事を了承した。しかし、それでも、彼女は少しだけ泣いていた。もう、最近はずっと泣いていたよと僕に軽い罪悪を感じさせるような口調で言った。 もう彼女はずっと今日会う前に泣き疲れていた。でも、今、彼女は泣きながら笑っていた。 もう僕は帰る事を決めた。そして、彼女の自宅から出たら一瞬だけ雪が止んだ。今、雪が止んだ瞬間が今までの景色で一番綺麗だと思う。彼女はそう言っていた。しかし、またしばらくして秋の夜空から雪が降っていた。晴れ渡る太陽は明日、見られそうにない気がした。 彼女は彼女の自宅の近くまで僕を見送り、そして、彼女が僕に最後にキスをした。キスの後「じゃあね」と言って彼女は僕に微笑んだ。そう言ってから彼女は自宅に逃げるように戻った。また彼女は日常に戻る。僕がいなくても彼女は日常生活を難なく送れるだろう。そして、彼女はまた良い女になるだろう。恋愛を繰り返すたびに、彼女は良い女になる。僕は秋の雪を見ながらそう思った。

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