・絶望の先に希望を見いだせるか?壮絶なサバイバル・アクション
アメリカ人なら誰でも知っているハーマン・メルビルの冒険小説「白鯨」は、どのようにして生まれたか?
19世紀初頭、捕鯨船エセックス号に初乗船したトム・ニカーソンが若き作家メルビルに語った驚愕の実話をもとに構成された白鯨との出会いと漂流生活を描いた、ハリウッドならではの3D技術とVFXを駆使したサバイバル・アクション。
監督は名匠ロン・ハワード、主演したのは「ラッシュ プライドと友情」(13)でコンビを組んだクリス・ヘムズワース。いくつもの困難を乗り越え映画化されたのは2人の熱意によるもの。
マッコウクジラ「モビィ・ディック」と義足の捕鯨船船長エイハブとの波乱万丈なストーリーである「白鯨」を連想するシーンはあるものの、もっと哲学的なテーマが潜在していた。
一等航海士・オーウェン・チェイス(C・ヘムズワース)は腕利きの捕鯨船乗り。身重の妻に必ず帰ると約束して米国ナンタケット島を出港。エセックス号船長は名家の出で経験の浅いジョージ・ポラード(ベンジャミン・ウォーカー)。この2人の関係がトム(トム・ホランド)やマシュー(キリアン・マーフィー)ら21人の仲間の命運を左右することに・・・。
経験不足のエリート上司と経験豊富なベテランの部下は、嵐に遭遇したとき意見が食い違うが、船長は嵐に突っ込む判断をする。経験不足を指摘されムキになった末の誤った判断なのが哀れである。
何とか沈没は免れたが、一年あまり鯨を追った航海は不漁で、伝説の白鯨を求めて危険な海域へ挑んで行く。30メートルを超える鯨との遭遇は臨場感溢れる画面で前半の見どころ。
その大きさはエセックス号との比較を俯瞰で捉え、モリで突き刺そうとするオーウェンの視点へ。白鯨の眼を見たオーウェンは一瞬躊躇する。それは人間とクジラを超えた生きるモノ同士の自然の摂理を伝える瞬間のようでもある。
あっけなくエセックス号は解体され、3艘の救命ボートでの地獄絵のような漂流生活が始まる。初航海にして究極の体験をした幼いトムにとって、一生誰にも話したくない出来事だ。
ドラマはこのシーンを描くことで<鯨と人間の関係>を倫理上のテーマまで昇華させようという意図が伺える。
正直、後味は決して心地よいものではない。それでも生きて妻のもとへ戻ったオーウェンには新しい仕事と家族があり、ジョージは裁判官へ真実を話し人間的良心を発揮した。
若き作家が年老いたトーマス・ニカーソン(ブレンダン・グリーソン)から話を聞き終えたとき「土から油が出た」という知らせを聞かされる。鯨油から石油へ時代が大きく変わろうとしていた。
捕鯨に反対する現在のアメリカの象徴のようなトーマスにとって、トラウマが消えることはないが長年の苦痛が和らいだことだろう。
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