晴れ、ときどき映画三昧

「ワイルド・アパッチ」(72・米) 75点


 ・ 70年代を代表するR・アルドリッチ監督のリアル・タッチな西部劇。


   

 「アパッチ」(54)のロバート・アルドリッチ監督バート・ランカスター主演のコンビによる18年ぶりの西部劇。原題は「ウルザナの襲撃」。

 勧善懲悪型の西部劇が食傷気味のこの時代、実際に起こったアリゾナのサンカロルス・インディアン居留区を出奔したアパッチ族ウルザナと、その一族を追撃する騎兵隊の視点から描いた西部開拓時代の裏面史。

 ローレル砦に駐在する騎兵隊に呼ばれたベテラン・スカウトのマッキントッシュ(B・ランカスター)と、討伐隊の指揮を執る若き将校デヴリン(ブルース・ディヴィソン)との考え方の喰い違いがどのように変化して行くのか?が最大の見どころ。

 先住民を妻に持ちアパッチの習性をよく知るマッキントッシュは、指揮官カートライト少佐に討伐隊を編成して追撃するよう進言するが、詳細を判断してからと慎重になって後手を踏んでしまう。

 神父を父に持つデヴリンは追撃の指揮を執るのは初めてで任務に張り切るが経験不足は否めず、予想外の出来事に遭遇して多大な犠牲者を出してしまう。

 画面は双方での残虐行為の応酬が明らかにされるが、特にアパッチの物事の考え方を表すための残虐さがリアルに再現され際立って見える。

 <憎んでも無意味だ>と諭すマッキントッシュ。憎しみが増すデヴリンに、雇われた通訳ケ・ニ・テイが何故残虐行為をするかを伝えた言葉が説得力を持つ。

 「厳しい土地では力が必要。殺した男が殺された男の力を受ける。ウルザナは保留地の生活で力が薄れているので、これから大勢の人を殺す。」
 
 宗教・文化の違いから民族同士の争いが未だに絶えない世界に警鐘を鳴らしたアルドリッチ。憎悪の応酬は如何に虚しいものかを静謐に捉えた、骨太な娯楽西部劇作品だ。
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