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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第一章 北階段の怪 13

2021年11月05日 | 霊感少女 さとみ 2 第一章 北階段の怪
 学校に忍び込んだ……と言うのは大袈裟だが、松原先生は職員用の出入り口の鍵を持っていて、それで入ることが出来た。
「どうして、先生がそんな鍵を持っているの?」さとみが訊く。「当直か何かだったのかしら?」
「ははは、先輩って面白いですね」しのぶが笑う。「今時、当直なんて無いですよ。警備会社が巡回しているんだそうです」
「そう……」さとみは憮然とする。なんだか一人世間知らずで馬鹿を見た感じだ。「それで、松原先生がどうして鍵を持っていたのよ?」
「先輩、そう、ムキにならないで下さいよ」しのぶは笑いを堪えている。「わたしは、どうして鍵を持っているのかなんて訊きませんでしたから、分かりません。でも、先生は結構手慣れた感じでセキュリティを解除して鍵を開けていました。場慣れしてそうでしたね」
「そうなんだ……」
 ……学校に入った松原先生の懐中電灯を先頭に件の北階段へと向かう。しのぶも懐中電灯を持参していたので二人であちこちを照らしながら歩いた。
「薄気味悪くなかった?」さとみが不安そうな顔で訊く。「何にか出て来そうな気配とか……」
「ははは、先輩、怖いんですか?」
「いや、その……」また笑われて、さとみはむっとする。「だって真っ暗じゃない。薄気味悪いわ」
「でも、先輩は霊と話が出来るじゃないですか? それなのに怖いんですか?」
「のぶ!」朱音がしのぶを叱る。「さとみ先輩は心配して言ってくれているのよ!」
「そうなんだ」しのぶはけろっとしている。「でも、心配はいりませんよ。お守りを持っていましたから。最強のお守りの一つ、『ナザール・ボンジュウ』のキーホルダーです」
「ナザ……?」
「先輩知らないんですか? トルコのお守りです。邪視や災いを跳ね除けてくれるんです!」
「そうなんだ……」
 相手は日本の霊だろうけど、海外のお守りが役に立つのかしら、と、素朴な疑問を持ったさとみだったが、口にしなかった。
 ……松原先生としのぶは進んで、北階段に来た。一階は問題はないので、そのまま上がって行く。二階に着いた。懐中電灯で踊り場までの階段を照らす。
「……そうしたら、やっぱり一段多かったんです。十三段でした。わたしと松原先生とで何回か数えました。数え間違いではありません」
「うわぁ……」きっぱりと言い切るしのぶの言葉に、さとみはイヤそうな顔をする。「薄気味悪い話ねぇ……」
「わたしも聞かされた時、ぞぞぞぞってしました……」朱音が蒼い顔をしている。「……で、その続きがあるのよね?」
「そうなんですよ、先輩」しのぶは淡々と話しを続ける。「二人で階段が一段増えていることを確認した後なんですけど……」
 ……結論が出たので、帰ろうと言う事になった。しのぶは階段をスマホで撮影しようとした。と、三階の方から音がした。幽霊でも出たのか、はたまた、何者かが侵入したのか。松原先生は果敢にも踊り場まで駈け上がり、三階の方を見上げた。
「松原先生、『誰かいるのかぁ!』って言いながら懐中電灯を三階に向けたんです。そして、何かが見えたようで、『待てぇ!』って言いながら、階段を上がって行きました……」
「……まさか、そのまま姿を消しちゃったとか……」
「ははは、さとみ先輩、そんなわけないじゃありませんか!」しのぶがまた笑う。「残念そうな顔で戻って来て、『見失ったよ』って」
「ふ~ん……」何だか馬鹿にされ続けているようで、さとみは面白くない。「で、その後どうしたの?」
「それで終わりです。先生の車で家まで送ってもらって寝ました」
「そう……」なんだそりゃ? と、さとみは思ったが、口にしなかった。「撮影はしなかったの?」
「したんですけど、写っていませんでした。真っ黒だったんです。真っ黒以外、何も写っていなかったんです」
「わたしは、のぶがレンズの部分をしっかり押さえて撮ったんだって言ったんです」朱音が言う。「この娘、頭は良いけど動きが鈍くって……」
「そんな事ないわよう!」しのぶが朱音に食ってかかる。「扱い慣れているスマホだし、撮影だっていつもしているし、あの時だって冷静だったし」
「じゃあ、どうして写っていなかったって思うの?」
「それは……」しのぶはさとみに振り返る。表情の無い顔がなんだか薄気味悪い。「……写させるものかと言った邪悪な意志が感じられますけど……」
「そう……」
 さとみは豆蔵の話を思い出していた。……何か関連があるのかしら?  
  

つづく

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