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6月1日、プーチン大統領は北方領土めぐり「重大発言」 不可解すぎる官邸の対露政策

2017-06-13 16:16:03 | 正論より
6月13日付       産経新聞【正論】より




6月1日、プーチン大統領は北方領土めぐり「重大発言」 不可解すぎる官邸の対露政策 

新潟県立大学教授・袴田茂樹氏


http://www.sankei.com/column/news/170613/clm1706130006-n1.html


 6月1日にプーチン大統領は、日露関係や北方領土問題に関して重大発言をした。私にとって衝撃的だったのは、日米韓などが北朝鮮の核・ミサイル開発に対抗してミサイル防衛(MD)システムなどを強化していることに対して、彼が「これはイランの核を口実にした欧州でのMD配備と同じ欺瞞(ぎまん)で、問題は全く北朝鮮にあるのではない」と述べたことだ。

 つまり彼は、日米韓の本音は露を対象にしたMD包囲網の強化だとの被害者意識を強めている。あるいはそれを理由に、北方四島の軍事強化を正当化しているのだ。彼は「これらの島はその最適の場所」とさえ言う。露は公式には北朝鮮の核・ミサイル開発を批判するが、実際には日米韓が北朝鮮を「喫緊の脅威」と強い懸念を抱いていることを全く無視している。




≪二島返還さえ拒否する口実に≫


 6~7年前までは露指導部も「日米のMD協力は露向けではない」と理解を示していたが、「クリミア併合」などで欧米と激しく対立して以来、被害者意識をとみに強めた。今では「信頼できるのは軍事力のみ」と公然と述べる。


 プーチン発言で日本人に失望感を与えたのは、日米安保条約がある限り、色丹、歯舞を渡せば米軍基地ができ、「それは絶対容認できない」として、事実上二島返還さえ拒否したことだ。この拒否の言葉は、以前から露側の発想や心理、行動に目を向けてきた筆者には驚きではなかった。日米安保条約は以前から存在していたし、今回は二島返還をも拒否する新たな口実にしただけだ。


 彼は昨年12月の訪日時にも同条約に懸念を表明した。問題は安倍晋三首相の熱意のある対露経済協力にもかかわらず、プーチン政権下で対日姿勢は強硬化し、領土交渉は後退していることだ。

 最近では、4月の首脳会談で合意した四島での「共同経済活動のための合同調査」も、共同経済活動に関する両国の基本認識が異なるため-ロシア側は「ロシアの法の下」で、日本側は「特別の制度」の下で行うとしている-その話し合いの段階から躓(つまず)いている。




≪メディアは幻想を抱かせ続けた≫


 官邸は昨年末の共同経済活動の首脳合意を、平和条約に向けての成果の如(ごと)く宣伝したが、私は新たなハードルを設けたに等しいと批判した。これは正しかったと思う。苦心して法的グレーゾーンで何か象徴的なことをしても、本格的な共同経済活動は到底無理だ。


 日本では、昨年11月のリマでの首脳会談直後、安倍首相の焦燥感が報道され、領土交渉悲観論が広がったが、プーチン氏の6・1発言はそのダメ押しとなった。わが国のメディアは、12月の首脳会談での彼の強硬姿勢を「まさかのちゃぶ台返し」(週刊朝日)とか「プーチン豹変(ひょうへん)」(文芸春秋、NHK解説委員記事)などと報じたが、無知ゆえでないとしたら、メディアが長年垂れ流した楽観論の責任を大統領に転嫁するものだ。

 これまで日本では首相官邸も多くのロシア専門家やメディアも、「ヒキワケ」とか「相互の妥協」とか「平和条約締結は重要」といったプーチン氏の甘言に飛びついた。そしてメディアは、「経済協力を進めても領土での譲歩はしない」といった彼の発言(2016年9月)や、「二島返還もあり得ないことは百パーセント確実」といった政権筋の露専門家の言(『エクスペルト』16年5月)など強硬論は単なる交渉術と無視して報道せず、首相官邸や政治家、国民などに幻想を抱かせ続けた。


 実際にはプーチン氏は、05年9月に「南クリル(北方四島)は第二次世界大戦の結果ロシア領となり、国際法的にも認められている」と述べ、それ以後、露首脳はこの基本姿勢をむしろ強化している。実はプーチン氏も以前は「四島の帰属問題を解決して平和条約を締結」と合意した東京宣言の重要性を認める01年のイルクーツク声明にも、03年の日露行動計画にも署名していた。つまり未解決の領土問題存在を認めていたのだ。


 しかし、12年3月の「ヒキワケ」発言の時も「二島を引き渡しても主権は露が保持する」可能性を述べていたが、メディアは前者のみ大きく報じ後者を無視した。もし「豹変」「ちゃぶ台返し」を言うなら、05年に言うべきだ。ちなみに、私は翌年プーチン氏と会談したときに、対日強硬論への彼の「転向」を直接批判した。





≪「新アプローチ」は非論理的≫


 私が納得できないのは、首相の北方領土問題解決の熱意は支持するが、そのための対露政策が非論理的に見えることである。プーチン氏が近年、領土問題での対日姿勢を一層強硬化しているとき、「従来の発想では1センチも進展しなかった」として、露側が「領土問題棚上げ」と理解するような「新アプローチ」を官邸は実行している。当然露側は、自らの強硬政策は正しかったとして、今後もその政策をさらに強めるだろう。

 ロシア人は、すり寄る者は喜んで利用するが、弱者として見下す。わが国としては、経済協力と領土交渉は、あくまで均衡を取って共に進めるべきだ。(新潟県立大学教授・袴田茂樹 はかまだしげき)









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