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核兵器放棄の期待は非現実的だ 日本は核兵器以外の手段による「相互確証破壊」で対抗せよ

2017-05-16 20:11:29 | 正論より
5月16日付     産経新聞【正論】より


核兵器放棄の期待は非現実的だ 日本は核兵器以外の手段による「相互確証破壊」で対抗せよ 

東京国際大学教授・村井友秀氏


http://www.sankei.com/column/news/170516/clm1705160006-n1.html


 中国や北朝鮮は核兵器を持っている。北朝鮮は「戦争になれば日本は放射能雲に覆われる」(『労働新聞』5月2日)と威嚇し、14日に日本海へミサイルを発射した。日本はいかにして大量破壊兵器の脅威に対抗すべきか。




≪貧乏国が固執した魅力的兵器≫


 大量破壊兵器の中で、化学兵器と生物兵器は国際条約の化学兵器禁止条約と生物毒素兵器禁止条約によって使用・保有・開発が禁止されている。他方、核兵器は「核兵器による威嚇・使用は一般的に国際法に反するが、国家の存亡が懸かる自衛のための極限的状況下での核使用は合法・違法とも言えない」(国際司法裁判所)というものである。また、「原爆の技術そのものが悪魔性を帯びているのではなく、その技術を使う国の意思によってその性格が決まる」(ガンジー・インド首相)という見方もある。

 さらに、核兵器には別の側面がある。「核兵器が存在する世界では、最強の国家の半分以下の経済力の国家でも大国の地位を保持することができる」(国際政治学者のケネス・ウォルツ氏)と言われている。

 核兵器は低コストで通常兵器の劣勢を相殺する。1平方キロに展開している敵を殲滅(せんめつ)するために、通常兵器を使用すれば2千ドル、核兵器では800ドル、化学兵器では40ドル、生物兵器では1ドルかかる。


 すなわち、核兵器は貧乏国にとって魅力的な兵器である。中国も貧しかった時代、通常兵器を近代化する経済的余裕がなく、安価な核兵器とただ同然と見なしていた人民の命を大量消費する人民戦争によって米軍に対抗しようとした。

 1963年、中国政府は「たとえズボンを穿かなくても核兵器を作る。米帝国主義の核恫喝(どうかつ)の前で土下座することはない」(陳毅外交部長)と主張した。65年、パキスタンも「インドが核兵器を持てば、国家の名誉を守るためにわれわれは草や葉を食べても核兵器を持つ」(ブット人民党党首)と述べている。北朝鮮も「米国が制裁ごときで民族の命であり国の宝であるわれわれの核抑止力を奪えると思うのなら、それ以上の妄想はない」と言っている。

 現代世界では国家が最高の権力を持っており、これらの国家に核兵器を放棄するように命令できる機関は存在しない。したがって、これからも核武装を図る国家は現れるだろう。他方、「米国は通常兵器の分野で圧倒的に優位な立場に立っている。したがって、核兵器を全廃し、通常兵器のみが存在する世界になれば米国の優位は万全になる」という意見も米軍の中に存在する。





≪恐怖が支えた冷戦の「平和」≫


 さらに核兵器には飽和点がある。核兵器の破壊力は巨大であり、敵国の中枢を破壊できる核兵器があればそれ以上の破壊力は不必要になる(飽和点)。しかし通常兵器は破壊力が小さく、戦争に勝つには常により大きな破壊力を追求しなければならない。通常兵器の近代化競争には限度がない。



 冷戦時代、フランスの対ソ抑止戦略はソ連の国力の15%を破壊することであった。15%の国力の破壊はソ連が耐えられる限度を超えるとフランスは考えた。フランスの計算によれば、フランスとソ連の核戦力の差から、戦争になればソ連の国力の15%、フランスの国力の95%が破壊され、共に致命傷を負うことになる。15%を破壊されても95%を破壊されても耐え難い損害を受けたという心理的ダメージは同じである。フランスの抑止戦略は、ソ連がフランスを攻撃すればソ連は少なくとも片腕を失うことを保証することであった。フランスは核ミサイルを搭載した6隻の原子力潜水艦で、このメカニズムを保証しようとした。

 冷戦時代の米ソの抑止戦略も同じであり、戦争になれば共に滅びる「相互確証破壊」戦略であった。この恐怖の構造が冷戦時代の「長い平和」を支えたのである。




≪現代科学が新たな抑止を可能に≫


 核兵器保有国が核兵器を放棄することを期待するのは非現実的である。核兵器による攻撃を抑止するためには、核兵器を放棄するようにお願いするよりも、歴史的に証明された「相互確証破壊」による抑止システムが効果的である。


 ただし、日本が核武装を拒否する道を選ぶのならば、核兵器以外の手段による「相互確証破壊」を追求すべきである。現代科学は核兵器によらない「相互確証破壊」を可能にしつつある。高精度長射程ミサイルや人工知能を搭載した無人兵器などが開発されている。米国も原子力潜水艦に搭載したミサイルの弾頭の一部を核兵器から通常兵器に変えた。

 また、核兵器は道徳的に悪であると考える国は、核兵器による報復を躊躇(ちゅうちょ)するかもしれない。報復がないと攻撃側が考えれば先制攻撃を抑止できない。他方、通常兵器による報復は罪悪感がなく確実に実行されるだろう。

 抑止のポイントは二つある。一つは人間を動かす最大の動機は恐怖であること、二つ目はコストをかけるほど抑止の信頼性が高くなることである。(東京国際大学教授・村井友秀 むらいともひで)






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