ボロボロのタヌキを隣の猫が追いかけている
回覧板に書かれている順番の日付の間違いを
母親が許せないらしく、大な訂正線を書き入れ修正していた。
日付が間違っていると、自分の家で回覧板が留まっていたことになり
ルーズな家だと思われるというのだ。
「そんなことをすれば、書いた人が凄く嫌な気持ちになるからやめろ」
と言ったのに、もうそんな事はお構いなしで
怒り心頭のまま「書かなきゃ損する」と書き殴っていた。
歳を取るというのは、こういうことでもある。
ほんの些細なことでも自分の権利を主張したがる。
我が儘とか意固地とか言われる物だろう。
それは、脳梗塞の進行に応じてますます酷くなっている。
自分が、以前の自分と違うことに まったく気づいていない
ずっとまえから、いつかこんな時が来るだろうと思っていた。
母親を私が見守らなければならない時、
それがそろそろ始まっているんだな、と。
誰だって死ななければ老いる。
そんなことは当たり前だが、当たり前に受け入れられない変化。
戸惑いながらも、以前は母親に諭されていたことを今度は自分が言っている。
とても寂しい話だが
しっかりとしていた母親は心の中に永遠に残っているので
それだけは大切な記憶として仕舞っておこう。