気ままなひとこと

折々にふれ、思いつくままに、気ままに書き留めるBLOG

自閉症少年の心を覗き見る本

2015-01-08 14:25:46 | 読書
最近、貴重な本に出会いました。本のタイトルは「自閉症の僕が飛びはねる理由」、サブタイトルに「会話のできない中学生がつづる内なる心」とあるように、当時15才の自閉症の中学生が、自分の気持ちを文字にして言い表したものです。スペシャルオリンピックスを通じて自閉症の障害者に接することがありますが、知的発達障害という言葉だけでは理解が難しい行動がよくあります。ボランティア仲間と話しても、我々には理解できないものがあると決めつけていましたが、この本を読んでみて、それぞれの行動にそれなりの意味があるということ、少しばかりですが知ることが出来ました。

自閉症の多くの人はコミュニケーションが得意でなく、様々な感情や行動の裏にある想いを伝えてくれることが稀です。この本が“貴重”というのは、そのような中で、勿論、全ての自閉症障害者に当てはまるとか、汎用性のあるものとは思いませんが、それでも、彼等の心の一部を伝えてくれるからです。言葉について、対人関係について、感覚の違いについて、興味・関心について、活動について、という5章建てで完結に語ってくれています。例えば:

電車の車中などで大きな声を耳にすることがあります。なぜ大きな声が出るのかということに関しては、出したくてというわけではなく、コントロール出来ずに、反射的に(その時見た者や思い出したことに対して)大きな声がでてしまう。自分で分かっていても止められず、無理に止めようとすると非常に苦しくなる。自分自身、奇声を上げて恥ずかしい思いをしたことが何度もある。・・・分かっていても自制出来ないことは辛いでしょうね。

また、声をかけられても無視するのは、気付かないから。声だけで人の気配を感じたり、自分に向けられた言葉だと理解するのが難しい。だから、声をかける前に名前を呼んで本人が気付いてから話しかけて欲しいそうです。我々がぼんやりとながらも、周囲の人々や状況を感じていることを当たり前と思っていますが、自閉症の人々には当てはまらないということも、知っておくべきことの一つなのですね。

この本では、自閉症障害のある人は全般的に物事を広く見たり考えたりすることが苦手であり、言葉や行動が頭で考えるとおりにはコントロール出来ないことが多いと著者は言っていますが、決して知能的に劣るというものではないように思えます。勿論、自閉症の中でも個人差は大きいでしょうが、何よりも、コミュニケーション出来ないことが難しさのもとになっていることを痛感します。

最後にある短編小説はスゴい作品で、知的発達障害ということは全く感じられませんが、そこにある優しさは、自閉症をもっているからこそという面もあるかもしれません。著者の東田君は7年前、15才の中学生の時にこの本をまとめ、以降、何冊もの本を出版しており、また自分のホームページがあり、ブログも続けています。私には想像のつかない大変な苦労を重ねてこれだけの表現が出来るようになったのだと思いますが、彼に倣っていく障害者の方が出てくることといいですね。一人でも多くの人々が障害者の思いを知ることで、少しでも心のバリアフリーな世界に近づくように。

「自閉症の僕が跳びはねる理由」東田直樹著。
(株)エスコアール出版部・1,600円。
アマゾンで取り扱っています。

東田直樹オフィシャルサイト:http://naoki-higashida.jp/

最新の画像もっと見る

コメントを投稿