社会不安障害:SAD、ボランティアとセカンドライフ

SADで会社を休職したが、一年で復帰し、無事定年を務めて、その後の生活とボランティアについて気ままに掲載中

東野圭吾『天空の蜂』

2008-09-22 08:35:38 | 趣味(読書)


東野圭吾『流星の絆』に続き、東野氏の作品の紹介ですが、氏の作品の中では、割と変わったジャンルの作品と感じました。氏の作品は昨年『秘密』を知り、以降真っ先に読み始めた作家ですが、ミステリー的推理小説『放課後』等やSF的な作品『秘密』、『変身』、『トキオ』等があり、一方で『幻夜』、『白夜行』等の、非常な女性を主人公にし、裏でそれをカバーする非常な男の物語等ありますが、この『天空の蜂』は氏の何れのジャンルでもない作品である。
非常に長編の作品で在りながら、割りと最初の方で、犯人が判るが、その犯人の計画を実行するに到った背景と目的が最後に示される。
従って、最後まで、この作品は読んでもらわなければ、意味がないが、原発や自衛隊に対する矛盾(必要であり、その恩恵を受けているのにその存在を疎まれる)を示唆しており、一方で同じような背景の問題(学校でのいじめ等)も、示唆しており、氏が何を言いたかったは別にしても、今の時期にこそ読んで欲しい作品である


なぜなら、昨今の原油高により、全ての物が上がる中で、電気をどうするかは最大の課題になっている。原子力発電に反対する方が、電気のない生活を送っていらっしゃれば良いが、それはありえない話であり、ここに主張と実際の行動に矛盾が発生している事になる。

自衛隊にしてもそうである。先制攻撃はしなくても、海外から攻撃されるのを防ぐには、それなりの兵器が必要となり、結果それなりの軍隊を持つ事となる。話し合いだけで解決はできないのは、過去の歴史が示している。

※なお、蜂とは、新型のコンピューター制御可能な超大型ヘリコプターの事を指している。社内プロジェクトでビッグBeeと呼ばれていた。



天空の蜂A.jpg書籍名:『天空の蜂』
発行所:株式会社 講談社
発 行:1998年11月15日初版発行
初 出:ノベルス1995年11月に単行本として、1997年111月にノベルスとして講談社から刊行されています。
定 価:838円(税別)
頁 数:縦1段組み622ページ+解説br>



<文庫本裏の作品紹介>

奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆弾が満載されていた。無人操縦でホバーリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質としたテロリストの強迫に対し、政府が下した決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき・・・。驚愕のクライシス、圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス。



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錦重工業の航空機事業本部の湯原とその後輩の山下は、新型の超大型ヘリコプターの開発に携わり、自衛隊への引渡しと一部の家族へのお披露目の日を迎える。目を離した隙に、山下の息子が、そのヘリコプターに乗り込んでしまうが、その瞬間、格納庫の扉が自動的に開き、ヘリコプターが自動で動きだし、上空に飛び去ってしまう。

しばらくして、この飛び去った(盗まれた)超大型ヘリコプターは、敦賀の高速増殖炉方原発「新陽」の上空で停止(ホバーリング)している事が発見される。直後、犯人から、全国の原発を止めなければ、この爆弾が搭載されている超大型ヘリを、「新陽」に落とすとFAXが入る。

一方、このヘリに山下の子供が乗り込んでいることが分かり、政府は犯人の要求を呑む事にする。つまり全国の原発を止める所をTV局に放映させながら・・・。これにより、自衛隊の救難隊の必至の救難活動で山下の子供は救出される。

この救出後、更に犯人から、全国の原発の破壊を要求するFAXが入る。政府は、子供救済で成功した事で、この犯人の要求には従わない事を決める。

ヘリを盗まれてから、ガソリンが尽きるまでの短時間(その日午前中5:00から午後3時ぐらいまでの間)の中で、圧倒的な迫力で物語が進行する。

既に、高速増殖炉型原発「新陽」を止め、ヘリが落ちる事が決定された時期には、警察も防衛庁も、無線でヘリを盗んだ犯人(元防衛庁エリート佐竹開発官=雑賀)と、そのパートナー(錦重工業プラント開発事業本部原子力機器設計課の三島耕一)を突き止めていた。

犯人がアパートに残したコントローラでは、何の役にも立たないと湯原と山下は、判断していたが、最後に山下の息子を救った自衛隊救難隊の上条が、撮影した手振れのひどい写真を見て、ヘリの落ちる進路を変えられる事を考えつく。自衛隊の救難ヘリに湯原は乗り込み、自分達が開発した、新型大型ヘリのローターをチョット動かす事で、「新陽」から10メートル離れた海に落とす事に成功する。

三島耕一には、息子がいたが、小学生5年生の時、帰り道で通ってはならない踏み切りを通り、電車に引かれて亡くなったが、三島夫婦はこれを事故とみなし、三島は女房を攻め、結局離婚してしまった過去があった。

三島は9ヶ月前に息子の持ち物を整理している中で、息子のノートに「原発屋でていけ」の自分の息子の筆跡でない文字を見つける。他にも見つけ、まさか息子が三島の仕事でいじめにあい、自殺した事の真実を知る事となる。

一方、その時の虐めの反原発の子供とその家族が、反原発主義に反感を持つ人々によって別の社会的虐めを追っている事を知る。この事から、三島は、雑賀との接触時の新型大型ヘリを盗むだけの遊びだけの計画から、日本人に対する警告を発する為に、今回の計画を実行する事に及ぶ。

という私的要約ですが、内容は実はかなり日本人のかっこだけの人たちへの警告と考えます。
私も、完全に氏の意見に(氏の意見を完全に組しているわけではないですが・・・)、同感します。

つまり、原発が主題になっていますが、原発が主題ではなく、日本社会への課題提議が主題と勝手に解釈しています。




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