強化合宿2日目早朝
4時過ぎに湖畔に立つ、鏡のように静かな湖には私一人しかいない
今回はウエ―ディングしながらトップで虎を狙う作戦だ
得意(嘘)のデカダンスで広範囲に虎を探すと、すぐにミスバイトが多発
さすが朝マズメで貸切でノープレッシャーだ
「獲物は居る、だがいまいち目が覚め切っていないようだな」
ミノ―に代えデッドスローリトリーブ
と、その時!ロッドは満月にしなりギリギリと悲鳴をあげる
しかし、虎とは何かが違う?くるくるした感触なのだ
慎重に獲物を寄せると、信じられない光景が目に飛び込んできた!
「山女魚デヴィルではないか!」
早起きは三文の得と言うが、うち一文の得をえた瞬間である
さて、ならば残りは2文だ
やはりさすがは朝マヅメだ、ルアーをトップに戻した直後にヒットしたのである
「これは黄金か、ベイトタックルをここまで絞り込むとは」
「天晴れな黄金ではないか!」
2文目もいただいた
ルアーをスイッシャーに代えるとまたまた連続ヒットだ
しかし黄金はよく引く、私は完全に黄金の魅力にはまってしまった
幾度となくするどいツッコミを楽しみ、力尽きた3文目をゲットした
やはり昔の人の言うことは間違っていない
早起きの3文分はしっかり得させていただいた
気づくと背後でアルミボーターが準備を始めている
私はアウエーの一見さんなのでここは遠慮するべきとポイントを後にする
早朝の小一時間で十二分に満足してしまったのだ
帰り道に昨日仕掛けた内田伊勢海老仕掛けをのぞいてみる
もちろん結果は子隊員たちには内緒なのだ
基地の仮眠施設に戻ると隊員たちはまだ夢のなかであった
実に気持ちよさそうに寝ているため一人で朝食の準備に取り掛かる
飯盒でご飯を炊き始めると管理人がやってきた
管 「おはようございます!楽しめましたか?」
「はい、ここ最高です。ところで何時までに基地を撤去すればよいでしょうか」
管 「ははは、うるさいことは何も言いません、一泊でしたね18時までに撤去ください」
「え、いいんですか?ありがとうございます、サンキューベリマッチ」
早起きの2号が起きてきたのでサラダを作ってもらう
「おはようございマンモス」
鮭のハラスの匂いに誘われてか、皆仮眠から覚めたようだ
山女魚デヴィルの自慢を終え串に刺す、直後に塩を適量振りかける
「ヤバいぞ、よだれが垂れ流し状態だ」
新 「あ~食べたい、けどなぜか食べられない」
新人は昨夜の毒にひどくやられていたようであった
子隊員s 「いただきマンモス!」「ごちそうサマンサ!」
今回の合宿中に最低限の礼儀作法は身についたようだ
強化合宿二日目はボートの操船訓練も兼ねる
あえて手漕ぎを選択したのは、体力強化とバランス感覚を養うのが目的である
ときおり丘に上がる新人、彼にいったいなにが起こっているのだ?
2号は3号に操船を任せレイクトローリング
「新人チームも追い付いてきたぞ、しかしやけにフラつくな?」
新 「気持ち悪いです、船酔いかもしれません」
「しょうがない、沈木に固定するとしよう」
新 「さらに揺れが増幅されました、気持ち悪いイイです」
だが縛れば流される心配はない、しばし私は狩りに集中した
「ん?やけに静かだな」
静けさが気になり振り返るとなんと!
隊員たちの姿が見えないではないか!
まさか30m級の虎が掛かり全員湖に引きずり込まれてしまったのか?
私はあわてて救助に向かった、とそこには!
「ぎゃー脚しか見えない、まさか裏磐梯バラバラ殺人事件発生か・・・」
ただの仮眠中であった、どうして私はこんなにもそそっかしいのであろうか
こうして盛り上がりのないまま日中虎狩作戦は終了したのである
上陸後管理棟にて昼食をとる
子隊員たちは獲物の品定めに忙しいらしい
「おまえら内田伊勢海老の仕掛けのことを忘れてるな」
子隊員s 「忘れてたー忘れてたー忘れてたー」
新 「忘れてたー」
私は結果を知っている、しかしまだ子隊員たちの悲しむ顔は見たくない
子隊員s 「獲~れ~た~よ~」
「おー立派な内田伊勢海老の子供(嘘)ではないか!」
子隊員s 「・・・・沈黙・・・・かき氷食べたい」
ヤバい、大人の気遣いがバレバレのようだ
「さあ、今こそ冷え冷えのスイカで乾いた喉を潤そうではないか!」
「スイカ んま!かき氷食べたい」
ここまで言われれば食べさせないわけにはいかない
子隊員s 「セルフかき氷だ わーい!」
これはこれでいいかもしれない、やるな管理人!
で、この御方が管理人さん
時計を見ると16時になろうとしている、いよいよお別れの時がきた
「大変楽しゅうございました、きっとまた近いうちにお邪魔します」
ここはさすがに隊員全員涙を隠せなかった、やはり別れはいつでも辛いものだ
子隊員たちは後ろを何度も振り返り管理人の姿が見えなくなるまで手を振り続けた
子隊員たちは、出会いに別れはつきものなのだということを学んだようであった
帰り道に陸で狩りができそうな場所を探してみる
すると、昨日のサルたちと偶然再会してしまったのだ!
「おおーいサル、元気だったかー!」
猿 「・・・無視・・・」
新 「昨日、日本語の通じない若い猿だったって言ってましたよね、学習してください」
「すまん、ついうっかり」
新 「僕は大体の予想はついてますよ、ずばり ゆとり です!」
数十分後、我々はもとの桟橋に戻っていた
「管理人さん、戻ってきてしまいました」
管 「また会えましたね・・・」
「また会えてうれしいです」
「あの、狩りやらせてください」
管「どうぞご自由に使ってください」
我々はお言葉に甘えさせていただき遠慮なく桟橋を占領した
ちょっと申し訳ない気分であったがリピーターになることで恩を返そう
ここで本当にあったいい話
ある湖でルアー釣りを楽しんでいる釣り人がいました
その釣り人は勢い余って大切に使っていたグリフォンを根掛かりさせてしまいました
よほど大切なルアーなのか何度もロッドをあおって一生懸命ルアーを外そうとしています
しかし家に帰る時間が刻々と迫っています
釣り人は糸を引っ張って切る決断を下します
この場合は仕方がありません、時間がないのです
バチン!
ルアーからラインが切断された音が湖中に響き渡ります
「あ~ぁ」
釣り人はがっくりと肩を落としますが、その時です
なんと引っ掛かっていたはずのルアーが湖面に浮かび上がってきました
慌てて他のルアーを投げ回収を試みますがなかなか上手くいきません
諦めかけたその時に一艘のカヌーが近づいてきました
「どうされたのですか?」
釣り人 「思いでのルアーが回収できなくて心から悲しいのです」
カヌーはそのルアーに向かって音もなく進みます
するとどうでしょう
次の瞬間には浮かんでいたはずのルアーが釣り人の手の中に戻っているではありませんか
おどろいた釣り人は頭を深々と下げ礼をいいました
「管理人さんありがとう」
辺りもすっかり暗くなり2日間の強化合宿は終わりを迎えた
車に戻る足取りが重い、ここを離れたとたんに現実に呼び戻されるのが怖い
これは隊員たち全員が同じ気持ちだったことであろう
しかし美しい景色の中、自然に包まれ
目標であった黄金、虎、ミヤマオオクワガタの捕獲に成功したのだ
強化合宿1回目は大成功と言えよう!
我々が今回合宿を行ったキャンプ場であるが決してみなさんにはお奨めしない
シャワー、トイレ、炊事場、小川完備
区画もなくレギュレーションの幅が広い、管理人が親切過ぎる
湖畔にテントが張れて目の前が狩場、安すぎるし環境抜群
みなさんも我々と同じ目に合わぬよう決してここには近づかないことだ
なので今回はあえて場所は明かさない
そうすれば次回も空いているかもしれないから