漂着の浜辺から
囁きのような呟き。
 




 先週の一週間は、世間よりは少し早めの夏休みだったので、妻とふたりで、四泊五日の長めのドライブ旅行をしてきた。
 まず東京から広島の尾道へ向かい、そこからしまなみ海道を渡って道後温泉に立ち寄り、四国を横断し、淡路島を経由して神戸へ行き、そこからさらに滋賀へという、なかなかのボリュームがあるドライブになった。



 尾道では港の側にあるレンタサイクルで自転車を借り、島伝いに四国へと伸びている「しまなみ海道」をサイクリングした。このしまなみ海道のサイクリングロードは、サイクリストの聖地のひとつとして世界でも割と有名らしく、なるほど道中、外国人、特にフランス人らしき人の姿が目立った。尾道から四国の(今ホットな)今治までは70キロ以上あるので、復路のことを考えると、最初から完走するつもりはなかったのだが、まあ3つくらいは橋を渡りたいと漠然と思ってはいた。ところが、これが思った以上にきつかった。
 出発地点の尾道から向島までは、島民の足にもなっている渡し船で渡ることになる。一回100円だが、自転車を載せる場合はプラス10円になる(安いけれども、島民にとっては、日常的な出費になるのだろう)。向島はすぐ目の前にあるので、そのつもりならちょっとした橋くらいは簡単に架けられそうに思えるのだが、おそらくは造船業に差し障りがあるので架けないのだろう。
 向島は比較的栄えてそうな島で、渡し船から降りて、青いサイクリングコースを示すラインに沿って自転車を走らせていると、割とすぐにコンビニが2軒ある。何かを補給するなら、ここでしておくのがよさそうだ。この先、次の島の中ほどまで、店はないからである。道は、そのうち海岸に沿って走るようになりやがて橋が見えてくる。因島大橋である。橋への入り口は、橋の下を通りすぎて随分と行ったところにあるから、もしかしたらどこかで道を間違ったのではないかと不安になるが、青いラインに沿って走っていれば心配はいらない。ただし、橋への入り口から実際に橋に到着するまでは、約一キロほどの、標識によると3%勾配の坂が続く。ここで、かなり体力を消耗した。
 しまなみ海道の、自転車で走ることのできる6つの橋の中で、この因島大橋だけはサイクリングロードが車道の下を走る、二重構造になっている。しかも、サイクリングロードの両側は金網に覆われていて、風景は、網越しにしか眺めることができない。なので、しまなみ海道の橋の中では、最もつまらない橋かもしれない。それでも、最初に渡る橋だから、気分は上がる。金網越しの風景は、島が点在する瀬戸内海の風景である。
 因島は、向島よりもややローカル感が増す島だった。橋を渡り終えてすぐのところに、海水浴場があって、ウォータースライダーつきのプールも併設されている。ほとんどが地元の人だろうが、結構賑わっている。海よりもプールの方が、泳いでいる人は多いように見える。勿体無いなあ、もし今水着があったら、すぐにでも海に飛び込むのになあ、と思う。しかし、海辺で生まれ育つと、海で泳ぐことにあまり重きを置かなくなってしまうこともよくわかる。海はベタベタするからいややなあ、くらいは考えてしまう。ぼくも神戸でいた子供の頃は、目の前が海だったが、あまり泳いだりはしなかった。学校か、海辺の、年金会館のプールなどで泳いでいた。海が懐かしくなったのは、海辺を離れてからだ。
 サイクリングロードは、島の内陸を横切ってゆくのだが、この道は、途中にコンビニがあるものの、なかなか退屈な道である。暑いし、風景も特にみるべきものもない。立ち寄ったコンビニの前で、買ったガリガリ君を食べてクールダウンしながら、もう引き返そうかと相談したりもしたが、結局、もうひとつだけ橋を渡ろうということにした。



 次の生口橋は、道路の脇にサイクリングロードが並走している、眺めのよい橋だった。ただ、余りにも暑い。暑さには比較的強い方だと自負するぼくでも、さすがに辛い。途中、子供連れで走るサイクリストを数組見かけたが、みんな子供はへばっているみたいで、道路脇などに子供が座り込んでいた。無理もない、と思った。距離も長いが、それよりもこの暑さは、確実に人を消耗させる。子供には、ちょっと過酷なのではないだろうか。しまなみ海道は、イメージでは橋の上を気持ちよく走るコースという感じだろうが、実際は全長70キロほどのコースのほとんどが島の中を走ることになるし、それぞれの橋を渡るためには、一キロ近くも3%勾配を上ってゆかなければならないので、それなりにハードである。あまり甘く見ないほうがいいと思う。道中、それなりに写真も撮ったつもりだったが、実際に後で確かめてみると、ちゃんと撮れている写真は少ないし、いやそれ以前に、撮った枚数自体が少なかった。それどころではなかったということなのだろうと思う。
 生口島に到着して、しばらくサイクリングを続けたものの、途中で引き返すことにした。体力的に、この辺りが潮時だと判断したからである。帰りは黙々と自転車を漕ぎ続けて、尾道に帰り着いたときにはやれやれという感じだった。途中で引き返したとはいえ、往復で50キロ近く、炎天下を走り続けたのだから、当然だろう。それでも時間はまだ午後三時頃。自転車は一旦置いて、街を散策することにした。



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