漂着の浜辺から
囁きのような呟き。
 



 Phewというアーティストを知っているだろうか。
 80年代初頭のアーティストという印象があるが、山本精一らと現在でも細々と活動を続けているようだから、現役のアーティストではある。だが、一時は完全にシーンから遠ざかっていて、半ば伝説のボーカリストとなっていた。
 伝説と化したのは、ソロのファーストシングル「終曲」が阪本龍一のプロデュースだったことや、ファーストソロアルバム「Phew」のバックミュージシャンが、ドイツのテクノグループ「CAN」だったりしたことなどが大きいかもしれない。そのどこにも行き着かない歌詞と、投げやりとも取れるボーカルは、確かに印象的だった。
 そのPhewの母体となったのが、Phewをボーカルとするバンド「Aunt Sally」である。アルバムが一枚あるが、限定500枚ということで、希少価値があり、なかなか耳にすることは出来なかった。
 僕がこのアルバムを初めて聞いたのは、発売から10年以上経った1990年頃。たまたま知り合った人がこのアルバムからダビングしたカセットを持っていたからで、随分感激したことを覚えている。内容が良かったからではなく、一度聞いてみたいと思っていたアルバムを聞けたからだ。

 Phewのライブには、これまでに何度も足を運んだ。
 90年代の半ばに、沈黙を破ってから数度。
 それでも、最後に見たのはもう数年前だ。
 
 一度だけ、少し話をしたことがある。
 もうかなり前のこと。ライブの打ち上げでの場だった。
 そのときは、手塚真さんなどもいたのだが、僕にはPhewの存在感のほうが大きくて、少しだけ話をするのがやっとだった。結局、大した話もできなかったのを、懐かしく思い出す。

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