”迎賓館・赤坂離宮”と天ぷら

迎賓館に行ってきました。今年で三回目。
飽きもせず毎夏せっせと通う。



庶民には一生ご縁のない世界を垣間見れる、年に一度のチャンス。
毎春往復はがきでの応募があり、
抽選に当たった人だけが夏の一定期間、内部の見学が許される。



抽選というからには”はずれ”もあるはずなんだけど、
なぜか三年連続当選してる。それなりの倍率はあるはずなんだけど。
この際”はずれ”が出るまで毎年応募してみようと思ってます。



おなじみの正門。


結婚式を挙げたカップルがわざわざこの門の前まで来て
写真を撮ったりしますと、タクシーの運ちゃんが教えてくれた。


見学者は当然ここからは入れず、西門へ。




中に入ってすぐに身分証明書の提示と本人確認の厳重チェックがあり、
飛行機に乗るときと同じセキュリティ検査がある。

Ｘ線の荷物検査と金属探知機のゲートをくぐり、無事通過したら
迎賓館の公開用入り口へと進む。





建物内部は撮影禁止ですので、
興味のある方は↓の動画を。（直リンクは無理？こぴぺお願いします）
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg9742.html?t=50&a=1

豪華絢爛です。プチヴェルサイユ宮殿。
日本にもこんなとこがあったのね…とため息しか出ません。
夢の世界。覗かせていただけるだけでも感謝でしょうか。




お庭の撮影は自由です。

今年はあいにく曇りだったため、下の写真↓は去年のを。

国宝指定の主庭噴水池と南面外観




迎賓館を見学した後は、
六本木のミッドタウン内にある某ホテルでランチ。
これも三年連続でお決まりのコースになってる。
ここの天ぷらが絶品なのだ。
素材にこだわり、油にこだわり、プロの料理人が客の目の前で
一品一品丁寧に揚げた天ぷらは、まさにおいしさの芸術品。


衣はサクサク。全然油っこくない。いくら食べても胃にもたれない。
素材のうまみが凝縮されてる。
私が最後の天茶漬けまで残さず食べれるのはここだけ。


食べ終わった後で、すぐ、また来たいと思わせる。
私の中の”お気に入り”だったのに…。


今年は、ちっともおいしくなかったよ…。
厳選された”素材も油も”いつもと同じだったのに。


天ぷらコーナーは、
”コの字”型に
カウンター席がわずか６席あるのみなんだが、
その日はキャンセルが二組出たらしく、
お客は私たち２名のみで貸切状態。


まだ若い、いかにも新人って感じの料理人が
カウンターの向こうに立って私たちを出迎える。
ガチガチに硬くなってるのが一目でわかる。
笑顔が引きつってる…。


えっ！？もしかしてこの人が揚げるの？とちょっと不安になる。
すると戸が開いて年配の料理人が入ってきたので安心する。
先輩の仕事を見学するためにいるのね、この若手は。
ずっとそばに立って見てられると、こっちも気になって
食べづらいんだけど、まあそのくらい我慢するかと…、
おばちゃん二人はにこやかに微笑んであげた。
かわいそうなくらい緊張してるのが伝わってきたから。


でもどうやら彼が揚げるらしい…。
先輩料理人が横で無言の圧力を加えて、
じぃ～～と彼の動きを注視している。
若手の手が…震えてる…。
揚げるタイミングを私たちにわからないように指示してるらしいが、
微妙にズレるらしく、無表情を装ってはいるが、先輩の心のイライラが…、
私たちにまで空気を震わせて伝わってくる…。


私の皿の上に乗せようとした一品目の海老が、
着地に失敗して小躍りする…。
若手はすでに頭真っ白の硬直状態。


戸を開けて二人とも奥に消える…。
私たちが出されたものを食べ終わったころ
次の食材を揚げるためにまた二人で現れる。


奥で注意を受けたらしく、若手の顔はますます強張っている…。
そして、また先輩の横で、震える手で……。
やっぱり揚げるタイミングが合わないらしく…
またもや不穏な空気が…………。


微妙に揚げすぎ…！。いつもの”絶妙な＿＿”は、ない！
衣の量もいつもと違う。
油の温度もたぶん…だめ。
もはやどこにでもある普通の天ぷら。


そして奥に引っ込む二人。
再び戻ってきたときには、奥で注意を受けたらしく、
以下同文…。
これが繰り返されるのだ。


二人そろって出たり入ったり、
舞台のソデに引っ込んでは現れる役者のよう…。
客の前で怒れないのはわかるが…。


あのぅ～…、食べた気しないんですけど～…。
もう少し客の気持ちにもなって欲しい。



出たり入ったりしてたらどんな一流の料理人だって
集中できるはずがない。
ずっとそばについて神経を集中してこそ
揚げるタイミングは油自身が教えてくれる。
先輩の指示を待ってたら自分の勘はわからなくなる…。
教えられてから行動したらズレるのは当たり前。


新人さんはもちろんズブの素人ではなく、
普段は奥の調理場で揚げ物などもしてるらしい。（先輩談）
だったらいっそ任せてしまったほうが
少なくとももっとおいしいものができたんじゃないかな？
緊張のあまり、きっと実力以下のひどいデキになっちゃったんだよね。


最近はキャンセルが多いって言ってたけど、わかる気がするよ。
もし私の知人が、近々行く予定だって言ったら、
私は、やめたほうがいいよって、きっと言うもの。


なんでも日本食コーナー一帯が９月から３ヶ月かけて
大幅にリニューアルされて、天ぷらコーナーも席が増えるらしい。
そのリニューアルオープンに向けて、客の前に出る料理人を
増やす必要があるらしい。


事情はわかるけど…。
後輩の指導に必死なのもわかるけど…。
本物の客相手にやらないでほしい。
客はおいしいものを食べるのが楽しみでわざわざ足を運んでるんだから。


料理をおいしくいただくって、
料理自体がおいしい云々の前に、
”おいしく食べられる雰囲気”が一番大切だと思う。
そこんとこわかってほしかったな、先輩料理人さん。


私たちはやさしいおばさん二人だから、
仕方なく我慢して、すべての失敗ににこやかに微笑んであげたけど、
若手君、わりとかわいい顔してたし…（そこかい？）
怒り出す客もきっといると思うよ。


来年また迎賓館に来れたら、今度は”イタリアン”にする？と
同行のS・H嬢に訊いたら、
「来年までにはきっと上手に揚げられるようになってるわよ」
と言った。