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The most improved student in my life

2017年03月20日 06時48分48秒 | 日記
KLAS 14期(2006年卒業)の河野覚然さんを紹介します。
河野さんの学年は、私が教員生活14年目だった当時、
初めて高校在学の3年間を担任として受け持った学年でした。

「過去は過去です」

3年間を担任として共に過ごした彼らとは、本当に様々な思い出があります。

河野さんは入学してすぐに、強烈な「ホームシック」にかかりました。
寮での団体生活、初めての海外、それまで自分を護っていたもの全てが突然なくなる環境。
15歳の彼らに「平常心を保て」というのが無理な状況だ、と言えるかも知れません。
しかし河野さんは、そんな中でも自分を強く持つことを心がけ、克服しました。
入学後間もなく、国語の授業で河野さんが書いた作文に、今でも忘れられない言葉があります。
「中学では、辛い経験をして、自分が自分で嫌になってしまう時もありました。
しかし、過去は過去です。
だからこそ、自分は心機一転、スイスで自分を鍛えたいのです。」
私はその言葉に河野さんの強い決意を感じ、大変感動しました。



敗けてこそ学ぶ

高校2年生の時に、河野さんは生徒会長の選挙に立候補しました。
同級生3名との「三つ巴選」でした。
選挙前の立会演説会で
「なぜ生徒会長に立候補したのですか?」
という生徒からの質問に
「小泉純一郎になりたかった。」
と答えた河野さん。
彼の憧れは、
「自民党をぶっ壊す!」
「痛みに耐えて、よく頑張った!感動した!」
などの名言で知られた当時の日本の首相だったのですね。
河野さんの上記の言葉は、首相にも勝る名言だと私は感じていましたが、
残念ながら選挙では惜敗。
しかし河野さんは「残念だったねえ」と言葉をかけた私に、
「残念でしたが、良い経験になりました!」
と、笑顔で応えてくれました。



挫折を糧に

その言葉通り、河野さんは挫けませんでした。
次の年度の夏学期に留学のため不在となる生徒会役員を補うための
「夏期生徒会補助役員」の選挙では、トップで当選を果たしたのです。
河野さんの生徒会長選挙での惜敗の経験が、大きく生かされたのでした。
それらの彼の行動が高く評価されて、高校3年時には、男子寮生活委員長に選出されました。
寮内のゴミを分別し、リサイクルを徹底して行う現在の本校のシステムは、
河野寮長が呼びかけ、行動し、改革して実現し、確立したものです。
そんな河野さんは、最も精神的・学問的に成長した生徒に送られる学校表彰
「The Most Improved Student」
を受賞しました。



河野さんにお話を伺いました。

ー今、どんな仕事をしていますか?
星野リゾートの社員として、現在は熱海のリゾートホテルで、
調理やフロント、客室清掃など、マルチタスクで運営に関わっています。

高校時代から目指していたものとは違いますが、心の片隅で、
「日本の良さを知りたい、そしていつかは、それらを発信したい」
と感じていたことが、観光業に進むきっかけになっています。
高校時代に海外に留学したことで想いを募らせ、
その想いが職業に繋がっていることは間違いありません。


チャンスに溢れる環境

ーKLAS とは河野さんにとってどんな所ですか?
KLASは、チャンスに満ち溢れ、そのチャンスに飛び込んだ分、自分を成長させてくれる学び舎です。

【授業において】
アウトプットが多いことが特徴です。

スピーチコンテストやライティングコンテスト、授業内でのスキット(=寸劇)など、
KLAS では様々に「アウトプット=発信」が求められます。
下を向き教科書の内容をひたすら覚えて「詰め込む」日本の授業に反して、
KLASでは学んだことを使い、自分の言葉や考え方を自分以外の他者に発信する機会が圧倒的に多い。
自然と発信するためには、知っていること(=知識)を増やす必要性があり、
英語のみならず、自らが学習する姿勢が身につく学校であったと感じています。

【課外活動】
英語ミュージカル、英語レポート付きの修学旅行、文化祭など、たくさんの活動があります。

英語ミュージカルでは、役者をはじめ、裏方の仕事も教師と協力して、ほとんど全てを生徒の手で生み出します。
一人一人が自らの与えられた役割を果たすことにより、一つのものを作りあげ、
そこから見に来て頂いた観客に満足して帰って頂くまでのプロセスは、
高校生ではなかなか味わうことができない感動体験でした。




年に2回ある修学旅行では、旅行で学んだことをまとめて、事後に英文レポートを提出します。
スイス国内やヨーロッパの国々を単に観光するだけでなく、
ガイドさんの英語での解説(時には地方訛りが強く、聞き取るのに苦労させられますが)を聞きながら、
歴史的な名所を周り、それを自分の感性で英語でのレポートにまとめます。
授業とはまた違った、創意工夫が必要な作業であったと思い返します。

文化祭は、日本の文化を発信するという視点で、まずは日本の文化とは何があるのか、そこから見つめ直します。
どのような手段でそれらを表現するのか、セクションごとに知恵を出し合い、スイスの中に一日だけ日本を創り上げる。
日本人でありながら実はあまり知らなかった日本独自の遊びや、伝統芸能などを学び、
それを来て頂いた地元の人々に体感してもらう。
その人たちが喜ぶ表情を見ると、
「今、自分は国際交流をしている!」
という実感が湧く瞬間です。
KLAS の文化祭は、一年に一度のそんな祭典です。




自分を磨く

【生活面】
他人との共同生活を通して、自らの行いを見つめ直す。
そんな機会が多いことがKLASの生活の特徴です。

15歳というまだ自己を確立していない年齢で、
初めて会う人と1年間、同じ部屋で過ごさなければなりません。
時には、ルームメイトの存在がストレスになることもあります。
しかし、
「どういう行動が他人に迷惑がかかるのか」
「どういう発言が相手を元気づけたり、逆に傷つけたりするのか」
そんなことを考えながら日々を過ごします。
家族とは別の、他人の言動や行動を目の当たりにすることにより、
少しずつ自己を形成し、より他人を尊重し、思いやる気持ちを育んでいました。

また洗濯や身の回りの整理整頓などは自分でやらなければなりません。
朝、起こしてくれる親もそばにいないので、
高校生にして、親のありがたみを感じることができる。
このこともKLAS の大きな一つの特徴だと思います。
それと、日本食が恋しくなります。
渡航1年目、初めての帰国の際に機内食で出た蕎麦の味は、今も忘れません。

【環境面】
レザンでは空気が澄んでいて、夏は木陰に入れば涼しく、
冬場の室内は、設置されている床暖房のおかげで、寮内では半袖で過ごせるほど暖かい。
一年中快適に過ごせます。

レザンという村の中では、
ショッピングする所といえば、coop (食品スーパー)と他に数軒の店しかありません。
雪山まで徒歩15分(バスで5分)の山の中の田舎ですが、
何もないからこそ、自由な時間に何をするか、自分で選択します。
趣味の時間として自己研鑽に当てたり、料理を作ったり、部活動に汗を流したり。
自分の時間を思い思いに過ごすことができる場所であったと思います。


やらずに後悔するより、やって反省する

ーKLASで学び、経験したことが、今の自分にどう役立っていますか?
KLASは、当時殻にこもりかけていた自分を大きく成長させ、自信を身につけることができた学び舎です。

上記でも述べたように、KLASでは【授業】【生活】【環境】【課外活動】など、
多様な角度から見ても、日本では体験できないような機会に満ち溢れている学校です。

その中で、自分の責任において、物事を選択します。
時には間違いやミスから、クロス・ディテンション制度と呼ばれている罰を受け入れ、反省し、次の行動に生かす。
チャンスに溢れてはいるものの、何をするにも自分の選択でその後の流れは変わって行きます。

選択しないことも、また一つの選択です。

大人になると、自己の責任で選択する場面が多々あります。
そのことを考えると、高校生という若い年代から選択をする機会がたくさんあるというのは、
大人になる手前の訓練として、非常に良い経験・学びだと思っています。
何を基準に「選択」するのか。
どうやってその判断をするのか。
今の自分の形成に欠かせない時期であったと考えます。

そして、KLASで僕は、
「やらずに後悔するよりも、やってみて反省する」
という価値観を身につけました。

楽しいことも、大変なことも、挑戦なくしては経験として何ものこりません。
だから、少しでも興味があれば、その時には知識などがなくても、
やりながら学び、チャンスを自分の成長に繋げていく。
それがKLASでの3年間を通して、今の自分の考え方の根源として染み付いた結果です。

自分にとって何が正しい選択なのか。
いまだに迷う日々の連続ですが、他人と比べるのではなく、少し前の自分と比べて、
「あぁ、大人になったなぁ。」
と思うことができるように、一歩一歩、時には立ち止まりながらも、
前進しながら生きている、今日この頃です。




河野さんに関しての本記事を投稿するに際して、卒業以来、11年ぶりに話をする機会を持ちました。
河野さんが入学した時の姿を、
そして3年間で大きく成長して巣立って行った時のことを、
私は十数年経った今も忘れません。
私の中では河野さんは「The most improved student in my career as a teacher」なのです。
次に私が一時帰国する際には、ぜひとも12年ぶりの再会を果たして、
大人になった河野さんと「再会」という味の最高の美酒を酌み交わしたい、そう考えています。


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