すもーる・すたっふ
”愚直に”Th!nk Different for Serendipity
 



石井力重の活動報告:『『イノベーションの専有可能性』を決める4つのファクター』より。
イノベーションの専有可能性とは、イノベーションから実際どれだけ収益を上げられるか、という考え方です。




#参考リンク
イノベーションの決定要因(2)--専有可能性のメカニズム--
-不確実性(uncertainty) 研究開発にこれだけ人やお金を投入したから、これだけの見返りがある、などという予測を立てにくい。つまりリスクが高い。

 -分割不可能性(indivisibility) 例えば、新しい技術を開発したとする。それを売り込みたいのだが、技術の説明を全部してしまうと、聞いただけでまねられる可能性があり、全部を明かすことはできない。従って、価値がわかってもらえない。つまり、部分的な取引ができないのである。

 これに関しては補足がある。技術を分割可能であると捉えると、情報の非対称性という側面に焦点をあてる必要の出てくるときがある。それは次のページで説明。

 -専有不可能性(inappropriability)または消費の排除不可能性(non-excludability) 例えば、燈台の灯を考えてみる。ある企業が自分の所有している船のために燈台を建設した。自分の持っている船にはもちろん有効だが、他の会社の船にも有効である。燈台の灯を自分のところの船にだけ見せることはできないから。つまり、自分で、自分の利益になるようにと何かを作っても、それは他の人にも使えてしまう。自分のものだ!と他を排除することができない。こういうものを「公共財」という。このような状況であれば、積極的に私財を投入しようとはしないだろう。このような燈台の灯は、他にとって外部経済となる。

 専有可能性をめぐる実証研究がある。専有可能性とは、(このノートの最初に書いた説明よりも、もっと正確に言うと)企業が行ったイノベーションから、自分がどれだけ収入を確保できるかということである。この反対は、「spillover」。流出とでも言うべきか。


平成14年版 科学技術白書
 一般に,企業における研究開発は,その企業が現在収益を上げている事業における次世代の製品・サービスの研究開発や,その事業分野を拡大する製品群等の研究開発のほかに,これまでその企業が市場を持っていなかった新規の事業分野を開拓するための製品・サービスの研究開発等が考えられる。研究開発投資を行った結果生み出された新技術は,その製品,製法やサービス等を通じて,社会全体に利益をもたらす。こうしてイノベーションを実現した企業が,生み出された利益のうち,どのくらいを確保できるかという期待の大きさを専有可能性というが,これはイノベーションの大きな要因のひとつであり,イノベーションへの動機付けとして重要である。 専有可能性を確保するための方法としては,まず思い浮かぶのが,特許等による法的権利保護であるが,このほかにも,製品の先行的な市場化,製造設備やノウハウの保有・管理等が有効とされている。 この専有可能性を確保する手段の有効性について,日米の企業を対象として,プロダクトイノベーションとプロセスイノベーションそれぞれについて調査が行われている



 全般的な両国の比較では,特許についてはむしろ我が国のほうが上回っており,米国が,「技術情報の秘匿」及び「生産,製品設計の複雑性」の重要性を重視していることが注目される。 現在,我が国における産業の不調の一因は,これまで我が国の産業が市場としてきたところに他国が参入してきたために,全体として供給力が過剰となっていることにあると考えられる。これまでの我が国の産業のように,先行したものを模倣し,改良することによって,既存の市場を専有していくやり方では,模倣しやすいものは同時に模倣されやすいことから,競争者が多い市場においては,そこから得られる利益はわずかなものとなる。最近のIT,ライフサイエンス等の分野におけるイノベーションでは,例えばソフトウェアに代表されるように,初期の開発コストがあれば,それを大量生産するのにほとんどコストを要しないものになりつつある。このような製品は,大規模な製造装置が不要で,品質,コストなどの競争力を決定する要素が,生産過程の改良などに依存することが少ないため,いわゆる後発者のメリットのない製品といえる。それに加えて,特にITにおいては,同じものを利用する人が増えるほど利便性が高まるいわゆるネットワーク外部性が高い製品が多かったため,市場を先におさえた製品がデファクトスタンダードとして,いわゆる“一人勝ち”の状態となりやすかったと考えられる。 このように,最近のイノベーションは,我が国のこれまでのイノベーションの在り方にはなじみにくいものであった。このため企業は,これまでのイノベーションの在り方を見直して,より専有可能性の高い,すなわちよりレベルの高い技術が必要な市場にシフトするか,新たな市場を開拓することが求められている。


#関連エントリー
日本企業の研究開発の効率性はなぜ低下したのか



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )



«  Innovation a... 「制度と文化... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。