なぜ料理を注文した全員そろうまで食べないのかについて

2013年11月11日 | コラム
 料理をすぐに食べない人が理解できない。

 より正確にいうと、お店で自分が注文した食べ物が来ても、同席している友人らの注文したメニューが来なければハシを取らない人。これが、よくわからないのだ。

 彼ら彼女らは、なぜか食べない。

 同席者全員の注文した食事が来ない限り、決してハシを取らない。しつけのいい飼い犬のように、皿を前にしてじっとしている。「食べなよ」とうながしても、ニッコリ微笑んで「いいから」と首を振る。皆がそろうのを待ってくれているのだ。

 でもこれ、待たれている身からすると、全然うれしくないんですよね。

 むこうは気を使ってくれてるんだろうけど、逆の立場から見たら、目の前でその人の頼んだ皿が、どんどんさめていく様を見せられるのだ。

 たとえば「待つ人」とレストランに行ったとしよう。こちらはオムライス。「待つ人」はハンバーグステーキセットを注文したとする。

 談笑しながら待つこと数分。まずは鉄板にのったハンバーグステーキセットが登場。アツアツのゴハンと湯気の立つスープがついている。ドミグラス・ソースがたっぷりとかかっていて、思わずノドが鳴る。

 これが私だったら、「いただきまーす」と子供のようにはしゃいで、「さめないうちに」とすぐさまハシを取り、ハンバーグムグムグ、ゴハンハグハグの法悦にひたることだろう。

 ところが「待つ人」はそうしない。待っている。何を。私の注文したオムライスである。

 まだ料理の来ないコッチに気を使って、ハシを手に取らない。

 鉄板の上では、ソースたっぷりのおいしそうな焼きたてのハンバーグが

 「早くあたしを食べて」

 と情熱的に横たわっているのだが、無視だ。彼は食べるどころかそれを見ることすらしない。

「食べへんの」と尋ねると、おだやかな表情で、

「いいから」

 いいからといっても、目の前ではハンバーグがジュウジュウグツグツと音を立て、

 「さあ、早くそのおハシであたしのことをメチャクチャにして!」

 と激しくアピールしているのだ。なぜ食べないんだ、冷めるじゃないか。文字通り据え膳食わぬは男の恥だぞと言いたくなる。。

「はよ食べんと、さめてまうよ」といってもニッコリと、

「いいからいいから」

 いやいやだから、そっちはよくてもこっちはよくないんだよー(泣)。

 なんということだ。さっきまであれだけジュウジュウグツグツと盛大に熱を上げ、「あなたと早く一緒になりたいの」と伝えていたハンバーグたちが、その思いをどんどんと減らしているのがわかる。

 そして、その蜜月の時をうばったのは他ならぬ私なのだ。私のオムライスが来ないせいで、彼らの間の「熱い思い」は急激に冷え切っていく。

 耐えられない。目をおおいたくなる気持ちになる。

 あせりを覚え、忙しく立ち働くウェイトレスさんに「ちょっと、ここオムライスまだなんですけど」なんてイヤミっぽくいってしまって、穏やかな表情で待っている目の前の人とくらべて自分はなんと器の小さい男なんだと自己嫌悪におちいる。

 が、元はといえば、この人が素直にハンバーグをアツアツのまま食べてくれれば、オレはこんな目に会わなかったのに、とだんだんと錯乱してくる。一体、誰が悪いのか。どこに罪があるというのか。嗚呼、私は頭をかかえ、天に吠えたくなる。

 祭は終わった。いまやアツアツだったはずのハンバーグはジュウもグツもやめて

 「ずっと放っておくなんてヒドイ!あんたなんかもう知らない」

 とふてくされてしまっている。紳士的な態度が、必ずしも愛の成就に結びつくとは限らないという好例だろう。ときには人目もはばからず、ワイルドに攻めることも大切なのだ。

 やがて、機を逸した形でオムライスが登場。私の目の前に置かれると、彼はウェイトレスさんの「ご注文の品以上でよろしかったですか」との質問に「はい」と答え優雅にハシを取り、「いただきます」と、冷えてボソボソになったハンバーグを食べるのだった。

 以上、実体験に基づく悲劇である。

 にしても、今回はハンバーグだったからまだ被害は少なかったが、これがトンコツラーメンだったら、なべ焼きうどんだったら。ああ、なんと怖ろしいことだろう。考えただけで身震いする。

 いやホントに、鉄火丼とか冷や奴定食とかならともかく、せめて温かいものはすぐに手をつけてほしい。グラタンとかが目の前で冷えていくのを見るのは、こっちは本当につらいんです。

 ということなんで、私と一緒にゴハンを食べる方は、どうか気を使わないで料理が来たらすぐ食べてください。後輩でも全然OK。私は上下関係に超アバウトです。おいしいうちに、ハグハグ食べてほしい。

 日本人として、気づかいなのはわからなくもないけど、それはなんか、間違ってるような気がするんだよなあ。

 作ってくれた人も、きっとそうしてほしいと思うんですよ、ホントに。


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