モスクワ総力戦vs皇帝ピート 1995年デビスカップ決勝 ロシア対アメリカ その3

2016年11月26日 | テニス
 前回(→こちら)の続き。

 1995年デビスカップ決勝を語るには、その前の準決勝ドイツ対ロシア戦から取り上げていかなければならない。

 ボリス・ベッカーとミヒャエル・シュティヒを擁する強敵ドイツに、彼らのパワーとスピードをなんとか封じようと、ロシア陣営はクレーコートに水をまきまくるという奇策に出る。
 
 だが、何事も過ぎたるは及ばざるがごとしで、コートはグチャグチャになりすぎてプレーができず、ロシアチームは国際テニス連盟からメチャクチャに怒られたうえに罰金まで払わされるハメになる。

 いくら勝ちたいとはいえ、なんともマヌケなことになったものだが、ともかくもコートが乾きかけたところで試合開始。

 敵の醜態に気をよくしたのか、ベッカーがチェスノコフを、シュティヒがカフェルニコフをそれぞれ破って2連勝。ドイツが決勝進出にあっさり王手をかけた。

 大騒ぎしたわりには、こんなもんかと思われたが、「デ杯はダブルス」というのはここで、オルホフスキー&カフェルニコフ組が、2日目にベッカー&シュティッヒのバルセロナ五輪金メダルコンビ相手に1勝返すと、もうこれで勝負はわからない。

 1-2とスコアは押されていても、「勝ってエースにつなぐ」というのは、勢いの面で相当に大きいからだ。

 その証拠に、まだ負けていてもロシアチームは元気いっぱいだった。さらにロシアに風が吹くことには、ドイツチームがここで、守護神ボリス・ベッカーの欠場を余儀なくされてしまったこと。

 ベッカー、シュティッヒの2枚看板を単複両輪で使えるドイツは相当負けにくいチームのはずだが、あえて弱点をあげるなら、それ以下の層がいかにも薄かった。

 代打で急きょ出場したのはベルント・カールバッヒャーであったが、前日の勝利で気をよくしたカフィに対して、並の中堅選手であるカールバッヒャーというのは、いかにも荷が重すぎた。

 まるで勝負にならず、カールバッヒャーはカフェルニコフの軍門に下ってしまう。

 これで2-2のタイ。ついに勝負は最終マッチ、シュティヒ対チェスノコフで決まることとなる。

 ここまできたら、もう実績もランキングも関係ない完全な闇試合。実力的にはシュティヒが勝って当然だが、流れはどう見たってロシアである。

 なりふりかわず作った「泥のコート」が効果を発揮したのか、シャープなテニスで鳴らすシュティヒ相手に、チェスノコフは文字通り泥くさい、ねばりのテニスで対抗。 

 大一番はファイナルセットまでなだれこみ、しかもそれが延々終わらないマラソンマッチとなる。

 その後も試合はもつれにもつれたが、シュティヒの9本にもおよぶマッチポイントをすべてしのぎきり、チェスノコフが大金星を手にすることとなった。

 最終セットのスコアが14-12の激闘だった。

 かくして、ロシアは掟破りの盤外戦術まで駆使して、決勝に進出。叱責されようが罰金カマされようが、まさに勝負の世界は「勝てば官軍」なのだ。

 説明が長くなったが、そう、ロシアチームのこの決勝進出の表の立役者はカフィだが、裏のMVPは地味なベテラン、アンドレイ・チェスノコフだった。

 ここまで聞けば、サンプラスの初戦が決して「ふつうにやれば」なんてできるはずもないことがわかろうというもの。

 モスクワ開催と激遅クレーコートという「二重のホーム」、さらには準決勝の勢いから120%の力でぶつかってくるチェスノコフ。

 土のコートを大の苦手にしているサンプラスにとって、これ以上なく勝ちにくい相手といってもよかったのだ。


 (続く→こちら





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