カルカッタより愛を込めて・・・。

アピア40にて9月6日{水}に歌います。良かったら来てください!

お盆。

2017-08-09 12:51:28 | Weblog

 「もうここまで来てさ。もう、、歩けなくなったよ。足がパンパンに腫れてさ。悪いけど、カレーをここまで持って来てくれる?」

 彼が私にそんなことを言うのは出会ってから数年になるが初めてだった。

 4月にカルカッタから日本に帰って来た私に、彼は6年前からガンであること、もう死のうとしていたことを教えてくれた。

 その時から、以前から私が知る路上で生き抜いてきた力強い彼ではなく、人生に疲れ果てたウツ的傾向の強い彼になっていた。

 先週土曜日、彼は一人で高架下の歩道沿いにある石に腰かけ、うな垂れていてたその背中はすでに生命が枯れかけ、もうどうにもならないとその地団駄を踏む力すら残っていないことを語りつくしていた。

 「もちろん、良いよ。ここで待っていて、カレーは持ってくれるから」

 「すまない、ありがとう」と顔をしかめながら、彼は言った。

 私は今日こそ、彼の話しをゆっくりと聞こう、そのために神さまは彼に「ここまでカレーを持って来て」と私を彼に再度合わせうることを計らってくれていたかのようだった。

 私は彼の話しをゆっくりと聞きたかった望みを神さまは叶えてくれていた。

 さりとて、私はすぐには彼のもとには行かなかった。

 やはりカレーの炊き出しに来たすべてのおじさんたちに挨拶をしてから、彼のところに向かった。

 彼の居た場所から20メートルほど離れた所には酔って寝ていた青森出身の私と同い年くらいの男性がいた。

 その男性はいつも一日一食しか食べなかったので、彼の分のカレーを持ち、自転車に乗って向かった。

 まず寝ていたその彼を起こして、「カレーを食べて」と言って渡してから、もう歩けなくなった彼のところに行った。

 彼は私が近づくと、私の気配を感じたのであろう、うな垂れていた頭をあげて「ありがとう」と言った。

 私は彼の傍に腰を下ろし、目線の高さを彼に合わせた。

 私が彼に合わせられるものは限られているが、彼の心に私の何かを合わせるためには小さなものであろうと心を込めた。

 彼といつもよりはゆっくりと話しが出来た。

 しかし彼は私を独り占めするような依存心はなく、弱さをあまり見せたくはないとの意志からだろう、会話を私がまた他のおじさんたちのところに戻れるように終わらせた。

 私はその心に従い、その場を去った。

 カレーの食べ終わった容器を集め終わり、帰りにまた彼の傍を通った時、彼は同じ場所で頭を肩より下げ、少し前と同じようにうな垂れていた。

 私は「カレーを食べてね」と声を掛けると、彼はまだ手を付けていないカレーを片手で持って、「ありがとう。もう少し休んでいくよ」と答えてくれた。

 彼は私がカレーを渡した時に「もうお盆だから、死んだ人たちが来てさ。オレも連れて行ってくれないかな。もうさ、もういいからさ・・・」と言っていた。

 
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« いま読んでいる本。 | トップ | 9月のライブは。 »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL