自分セラピー

「自分を好きでいる」ことは人生を豊かにしてくれます。そこに気づかせてくれる沢山のファンタジー文学を紹介していきます

『はてしない物語』 ミヒャエル・エンデ

2010-11-04 06:45:59 | ファンタジー
毎年6月に、ボク自身が大好きな「大人のための児童文学セラピー講座」が開講されます。


昨日の日曜日は、全6回のうちの5回目。


エンデの『はてしない物語』でした。



エンデは、『モモ』と、この『はてしない物語』の二つの作品で、心と精神のバランスの大切さを伝えているといわれています。


エンデ本人は、「自分の作品を分析されること」を嫌っていたようですが、スタンダードとなったこの名作に分析を試みるのは仕方のないことなのかもしれません。


長い作品ですが、ちびででぶでエックス脚のバスチアン少年が、ファンタージエン国を救いにいくワクワクするファンタジーです。


このファンタージエン国を救済できたかどうかはともかく、バスチアン自身が大切な「何か」を取り戻し、感情を失ってしまっていた父親と再会していく、ボクの大好きな物語の一つです。






バスチアンは、読んでいるその本の中からの呼び掛けにとまどいます。


本を読んでいる自分自身に、物語の登場人物たちが呼びかけてくるんですから、これは本当にドキドキしてしまいます。


「もうわかっているはず」
「あなたにしかそれはできないことを・・」

そんな風に言われても、それが本当かどうかもわからないし、もしも自分じゃなかったら恥をかくし・・。

そんな具合にバスチアンはもがき苦しみます。


でもこれは誰もが経験する葛藤なのかもしれません。



前に進んでみたいというわずかな希望を持ち、

でも、進んでいく勇気はない。

おまけに、進んでも何にもならないかもしれないし、かえって傷つくだけかもしれない。

人に迷惑がられてもいやだし、そもそも自分にはふさわしくないかもしれない。

進んだとしても、成功するかどうかはわからないし・・・・


といった具合に、次々と前に進まない為のいいわけが登場します。



こんなやり取りが前半のクライマックス。


結局バスチアンは物語の中に飛び込んでは行くのですが、ここからが物語の本番。



エンデ自身が、苦悩しながら(精神を脅かされるほどに)物語を書きすすめたといわれているほどに、ボクたちの無意識の旅を見事に表現している作品です。

ファンタジーの素晴らしさは、ボクたちのイマジネーションを広げ、現実の世界に向き合う力を養ってくれること。


河合隼雄先生が繰り返し著作で書いていたことです。



長い作品ですが、秋の夜長に、じっくりとファンタージエンを旅するのもいいかもしれません。





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