続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『博学な樹』

2016-11-20 06:54:08 | 美術ノート

 『博学な樹』

 この時空間設定はどこだろう、少なくとも現世とは思えない幻想的な想像空間である。異空間・・・水色の空、渋ピンクの地上は球体の一部であるような湾曲が見られる、死後の世界を想定していると思われる。

 板状の質感を持ったカーテン、ドア状の形態をした平板には四角に切り取られた窓が開いている。衝立状の壁面には大きな目が、まるで方向を違えて切り紙のような薄さで張り付いている。

 どう考えても異常な光景であり、第一、樹が博学なはずはないが、人間の側の思い込みかもしれないと、思考を揺さぶられるような設定である。(異世界には異世界の条理があるとでもいうような)
 枝葉を繁らせた人状(ピルボケ)は純白でありスラっとして美しい形態であるが、生育を停止された物(死)から、生育を象徴する枝葉(生)が伸びているという不条理な現象を見せている。

 そして、それが博学であるという。
 語ることのない物が、視覚(目であり、覗き見る開口部やカーテンなどの暗示)によって、見ている。見ていることの集積が枝葉に集約され蓄積されている。そう思い巡らせることの出来る設定である。

《きっと、見ている、見られている》という一途な思いがこの光景を描かせたのだと思う。異空間=冥府へ逝った母・・・断ち切れぬ思いをつなぐ仲介の光景。
 会話断絶、連絡不能の異世界に居て心の枝葉をのばして現世の情報を学習し、覗き見ていてほしいと切望する心理の裏返しであり、それは誰にも介入を許さない秘密のコンタクトである。
『博学な樹』それは『何もかもお見通しの(見ていてほしい)死者の魂=天上の偶像(母)』である。


(写真は新国立美術館『マグリット』展・図録より)

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