続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

金山康喜『ドアとテーブルの上の静物』

2015-03-28 07:13:35 | 美術ノート
 一見、明るい色調ではある。しかし、どことなく荒い息づかいが充満している。嵐の前の静けさとでも言うような、内的破綻が覗く光景である。

 作品としての闊達なバランス、青と黄には束縛の予兆を感じさせない自由がある。しかし、不安(不安定)は隠せない。
 テーブルの上に置かれたオブジェはそれぞれ垂直に林立しているが、肝心のテーブルは傾いでいるという具合。けれど、四本の支えが不安をかき消している。しかし、それは曲線を描いて集められているではないか。力関係からいえば極めて脆弱な造りだといえる。その下部にいたっては描かれていないので推測するしかないが、危機一髪状態のテーブルなのではないか。もちろん、故意に計算して描いている作家の歪んだ笑いがどうしても垣間見えてしまう。

 ドアは、つまり・・・進入禁止。

 空き瓶に空の缶・・・こんな空っぽの破滅状態の自分を覗くなよ!とでも言っているようである。不思議な空間は奈落の底を隠蔽しつつ、明るいが、影(タッチに見る心理と含みのある下地)のある画面に仕上げている。《自由奔放の虚勢は、崩壊寸前の空虚》なのだと告白している、そんな悲痛な叫びが鑑賞者であるわたしを襲う、そういう作品である。(写真は神奈川県立近代美術館/カタログより)

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