続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『無題』

2017-07-18 07:07:15 | 美術ノート

 『無題』

 男と女・・・。
 男は薄っぺらで描かれた音符も低く単調なのに対し、女は豊満であり、音符も豊かな調べを奏で新しく樹の枝を再生させている。
 背景は白く上方は黄色めいている、つまりここは現世ではなく、死後の世界である冥府かもしれない。
 現世とは立場を違える二人、女は逞しく生命論理の変革をきたし、男は静かに佇むのみで、現世の有体を引きずった山高帽・コート・靴などの暗示がある。

 場所は特定できないが、平らであり囲い(フェンス)がある広いテラスといった趣きには、豊かで無風の平安・平和を感じることができる。

「お母さん!」
 亡母に会いに行く自分を夢想しているのではないか。
 名付けようがない、誰も入り込めない静謐…『無題』とするほかなかった密会のシーンである。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)


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