続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『巨人の時代』

2016-03-06 07:17:02 | 美術ノート

 『巨人の時代』
 着衣の男が裸の女に被さり引き寄せようとし、女はそれを強力に拒もうとしている。いわば、男の強姦図だと決定づけてもいいかもしれない。
 男は女のシルエットの中に映像を残すのみにカットされている、つまり背中や足腰は描かれていない。

 男は女より強く女は男の意に従うという通念が、この絵を《強姦の図》に仕立てるのではないか。この絵をみて、女が男を引き寄せているとはだれも考えない。愛の欠落した恐怖の場面(強姦)と考えるのが一般的である。 

 しかし、もし男の全身が描かれ、男が女に強引に引き寄せられている状態を想像するならば、この絵の感想は全く異なるものになる。
 女の腕の力を籠めた太さと強さは、男を引き離しているようでもあり、また、男を引き寄せようとしているとも思えるのである。

 背景は深緑、ずっと昔の過去か、あるいは未来か・・・時代は隔たっている。(『原始、女性は太陽だった』(平塚らいちょう)と、日本でも)

 《男は女の意に逆らえない、そういう巨人であった女の時代》
 マグリットがニヤリとほくそ笑む、そんな顔が浮かんでならない。

 つまりこの絵には二重の光景が隠されているということである。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)


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