続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『観光案内人』

2017-09-25 07:08:35 | 美術ノート

 『観光案内人』

 観光案内人、過去の歴史の地を巡るツアーの案内人である。
 ローブ着用は皇帝を意味する。背後に二人の皇帝がいるが、三者ともそれぞれの方向を向いている、つまりは見解の相違、闘争を暗示しているのではないか。
 手前の男は火を噴き、三つの建屋を手中に握りしめている。烈しい戦闘に勝利し、幾つかの国を勢力下に置いたということである。

 ふと考える…これはナポレオンではないかと。
 ヨーロッパの大半を勢力下に置くほど重ねた勝利。軍事独裁の政権を樹立したが、ワーテルローの闘いで完敗し、最後はセントヘレナ島へ幽閉されたナポレオンの霊魂が現代(あるいはずっと先の未来)によみがえり、功績の跡地を案内しているという構図を想起させる。

 皇帝のローブ・三者三様の眼差しの方向・烈火・手中に収めた集合住宅(国)などのヒントが想像の根拠である。
 霊魂となった(あるいは生まれ変わった)ナポレオン(あるいは歴代の皇帝)が、古戦場の面影もない新しく変貌した街に出現し、過去の功績を吹聴しているとしたら…というイメージ図であり、マグリットのユーモアである。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿