文様印(五) 月うさぎと露芝

2007年09月20日 | 和楽印 めだか工房
 
 シルバーウィークはいかがおすごしですか。関東地方もきびしい残暑がぶりかえしています。20日から彼岸の入りですけれども、いつも彼岸花が咲く場所に今年はまだ花が見えません。それでも、萩や秋桜の花に聞けば秋風を見つけることはできますし、金色のすすきの穂は順調に伸びて、栗や柿の実はすこしずつ色づいています。
 集中豪雨による被害の大きかった東北地方のみなさまへ、この場からお見舞いを申し上げます。
 

 25日は旧暦の八月十五日、中秋の名月です。先週末から夕空にきれいなお月さまがかかるようになり、日ごとに輝きを増しています。昨年の東京の十五夜はあいにくの無月でしたけれども、今年はどうでしょう。わたしは、散歩の道すがらにあるすすき数本に目を付けています ^^ゞ

 「月うさぎ」と「露芝(つゆしば)」の消しゴムはんこを使って、お月見用の菓子敷き(ティーマット)とはがきをつくってみました。菓子敷きは A5サイズで、はがきの約二倍の大きさです。月に「露芝」ですから、露は月のしずくでしょうか。月には若返りの水があるといいますから、草の露を口に含めば若返るかも‥

 白露に風の吹き敷く秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける
 (『後撰集』 文屋朝康)

 この和歌のとおり、「露芝」は秋の野に結ぶ露を意匠化したもの。細く眉を引いたような曲線をランダムに配して、その上に露玉をのせただけの模様ですが、草上の無数の露が風に吹かれてはらはらとこぼれ落ちるようすが見えるようです。和歌ではただ「露」でなく「白露」ですから、きらきらと光を放ちながらこぼれる玉の美しさは格別でしょう。このような、直接表現されていなくても風や雨を感じる詩歌、絵、意匠などが、わたしはとても好きです。
 また、露ははかなさの象徴ですね。天下人となって栄華をきわめた豊臣秀吉でさえ、草露の身にすぎませんでした。秀吉の辞世はあまりにも有名です。

 露と落ち露と消えにしわが身かな なにはのことも夢のまた夢

 「月うさぎ」は、むかしのインドのお話から。ある日、みすぼらしい老人に身をやつした帝釈天さまが、食べものを乞いながら歩いていたところ、サルとキツネとウサギに出逢います。善行を積んで、来世はより良い姿に生まれ変わりたいと願う動物たちは、老人のために懸命に食物をもとめて野山をまわり、サルは木の実を、キツネは魚を老人に与えました。ところが、何も見つけられないウサギは困ったあげく「わたしには何もありません。どうぞわたしを食べてください」と、たき火に飛びこんで自らの身を捧げます。帝釈天は感動してウサギを甦らせますが、そのウサギのまる焦げの姿をお手本として月に祀りました。それで、月のうさぎは黒いのだとか。でも、かわいそうなお話ですよね。ワニに皮を剥がされてしまう因幡の白うさぎも‥。
 か弱く繊細な動物のように見えるうさぎも、武家社会ではそのすばしこい逃げ足が尊ばれて、一家の幟(のぼり)や甲冑の意匠に使われました。とくに、「波にうさぎ」文様は、荒波をものともせず飛び越えてゆくうさぎの姿が印象的です。こうしてみますと、うさぎは犠牲になったり、勇敢だったり、守ってあげたくなるほどおとなしかったりと、変幻自在なのですね。


 十五夜は、この菓子敷きにお菓子とお茶をのせて楽しむつもりです。お菓子は何にしましょうか♪ みなさまもよいお月見を‥ ^^

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