雪月花 季節を感じて

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書初め

2007年01月18日 | 筆すさび ‥俳画
 
 書初めや白地の年に染まりゆく (雪月花)

 旧年中に賀状と寒中見舞いはがき用の俳画(亥、宝船、水仙など)をたくさん描いて、筆の運びもだいぶなめらかになったかしらとよろこんでいましたのに、年が明けてからしばらく絵筆をもつゆとりがありませんでした。先日、俳画の初稽古でようやく書初めをしました次第です。
 フエルト製の下敷きに硯、水滴、絵筆、絵皿、文鎮、絵具‥と、お道具を並べながら、すこしずつこころがしずまってゆく感覚を楽しみます。墨をすり始めたら、お墨をもつ手もとに意識を集中して「の」の字にするすると硯に墨を滑らせていると、漆黒の液体の中へと意識はしずみこんでゆきます。わずかにただよふ墨の香の清々しいこと。ふと、顔をあげて意識を外界に向ければ、鳥のさえずりが耳に帰ってきます。 ‥そう、これは、和室にひとり座してお茶を点てるときの気持ちに似ているかもしれません。
 俳画の稽古を始めましてから、こんな時のすごしかたもあるのだなぁと、しみじみとした気分を味わっています。将来は、ちいさな庭に面した書斎の窓辺にささやかな文机をおいて、こんなひとときをすごしたい‥ などと、またもあらぬ方向に我欲が動いてしまいます。まだまだ修行が足りない証拠ですね。

 昨年の師走、北海道の帯広にお住まいの書家・冬雷さまにお願いして、主人とわたしの雅印をつくっていただきました。(上の中央の写真がそのひとつで、もうひとつは前記事の消しゴムはんこの左下に捺したものです) ご多用の時季にもかかわらず、わたしたちの細かな依頼まで快く引き受けてくださり、旧年中に仕上げてくださった冬雷さまの御心遣いに感謝しています。北国から届いた雅印に添えられていた冬雷さまの達筆なお手紙や篆刻のはがきもそれはみごとで、ここでご紹介できないのが残念なのですけれども、表装してわが家の家宝にしたいくらいです。
 初稽古では俳画の先生からこの雅印をほめていただきました。わたしの拙い俳画も、雅印を捺しますといくらか絵がひきしまって見えます。おかげさまで描く楽しみが増しましたし、これを励みにいずれは印に負けない絵を描けるようにならなくては‥と、稽古にも精が出ます。冬雷さま、ほんとうに有難うございました。
 冬雷さまの書、篆刻などの作品は「冬雷の書道散策」でご覧いただけます。


 主人と初詣に出かけた帰り道のこと、たまたま立ち寄った書店で閉店セールが開催されていて、なんと文具品が半額で売りに出されていましたのです。「半額」の二文字に、年明け早々わたしたちは購買意欲をかきたてられて、主人はイタリー製のボールペンを一本、わたしは半紙、和紙、そのほかこまごました書画用の道具類をたくさん買いこんでしまいました。まるで棚から牡丹餅のようなこの幸運を、「うん、これはきっと『稽古に励めよ』という書画の神さまからの思し召しだわ」と、都合よく解釈したことでした ^^

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 一筆箋
 

コメント (18)    この記事についてブログを書く
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18 コメント

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Unknown (nori)
2007-01-18 12:51:05
こんにちは!
雪月花さんの素敵なことば達、いつも楽しく拝読させていただいております。
さて、今回はびっくりしました!
>‥そう、これは、和室にひとり座してお茶を点てるときの気持ちに似ているかもしれません。
を読んでです。
なぜって、この箇所の前文を読んでいる時、「あぁ、茶を点てる時のこころとなんて似ているんだろう」と思いつつ読んでいたからです。なんだか嬉しくなりました。
水滴、千鳥の画ですか? 千鳥、大好きなんです。

と、なんだか今日はきゃぴきゃぴした感想になってしまいました。
それでは、また訪れます!
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素敵です! (みい)
2007-01-18 16:47:13
こんにちは。
 俳画素敵ですね。お地蔵様大好きです、わたし^^
雅印が又いいです。ますますいい感じになります!
「冬雷の書道散策」拝見いたしました。自分では到底書くことは出来ない世界だけれど、観賞するのは好きです(笑  じっくり見せていただきます^^

「輝いて俳画の中へ雪月花」
「初稽古墨のにおいに澄むこころ」

次回も楽しみです^^新年に輝いている雪月花さんのページ拝見して私の心も澄んでいきそう・・・
私には、煩わしいことの多い新年だけれど、がんばります!
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Unknown (ryuji_s1)
2007-01-18 18:04:06
ステキな絵の書き初めですね
素晴らしいです、
雲霞゛良いのですね半額セールに
良かったですね
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文房四宝 (asuka-fune)
2007-01-18 21:13:58
雪月花さま

先日お話になっていた俳画のお地蔵様、やさしいお顔を描かれましたね。素適ですね。
雅印も素適です。

私も書、絵に落款印、印首印、遊印いろいろ作って楽しんでいますが、印一つ押すことで作品が立派に見えたりして不思議ですね。
 
文房四宝。
墨は奈良墨が近くで購入出来ますので、水墨画を描くようになってからは青墨より茶墨に惹かれ色々と試しております。
墨の香りいいですね。私も心落ち着けて、硯に向かうひとときが至福のときです。
以前デパートの画廊で購入していた白磁の水滴の作者に先日偶然お目にかかってお話が出来、とてもうれしかったです。
気に入った道具を身近におき大事に使っております。

今日は水墨画で椿を描きました。椿を調べましたら
種類の多さにびっくりしました。

雪月花さんの俳画、楽しみにしております。
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初稽古の画題 (雪月花)
2007-01-19 14:35:06
14日(日)の俳画の初稽古の画題は、民話の「笠地蔵」と、赤子を描く「初心」でした。みなさまは子どものころに聞いた「笠地蔵」のむかし話を覚えていらっしゃいますか。「初心」は産着を来た赤子の女児の絵で、それはそれは無垢な表情をしていて愛らしいものです。お地蔵さまも赤子も、どちらも単純な線と点でお顔を描くのですけれども、これがほんとうにむつかしく、俳画の先生の手本を下に敷いてそのまま写しても、けして同じ表情にならないのですからがっかりします。筆から生まれる線というのはほんとうに多様で不思議なもの。納得のゆく模写ができましたら、ブログに載せたいと思っています。

> noriさん、こんにちは。
お返事が遅くなりました。拙記事「美の源流 仏師の仕事」のほうへいただいたコメントも有難く拝見し、さきほどお返事をいたしました。禅文化研究所のブログはお気に入りに入れて、毎回チェックしています。
わたしも、墨をすることがお茶の点前につながったいたなんて‥と、ちょっぴりうれしい発見でした。noriさんも、お墨をする機会がありましたら「の」の字を書く手もとに集中してみてください。「あ、これは‥」ときっと気づくでしょう ^^
千鳥の水滴は文具店でひと目惚れして買いましたのです。気に入っていただけてうれしいです。これと同じ千鳥の意匠で、長森慶という作家さんの酒器や向付があるんです。わたしの水滴も同じ作家さんの御作だと思うのですけども、確認できていません。

> みいさん、こんにちは。
いつもお返事が一日遅れでごめんなさい。お地蔵さまにきれいな句をふたつも(!)添えてくださって有難うございます。
冬雷さまのブログも見ていただけてうれしいです。すばらしい作品ばかりでしょう? 昨年の秋に冬雷さまが「雪月花」の刻字作品を作っておられたときからおつきあいをさせていただいています。わたしは書のことは分かりませんけれども、生まれ育った北海道の風土のせいもあるのでしょうか、冬雷さまはお人柄がまっすぐで清々しい方で、それがそのまま書にも表れているように思います。
以前みいさんがお友だちのバースデーカードにしたためられていた書も達筆でおみごとでした。いまはお忙しい日々をすごされているようですけれども、今後機会がありましたら書やスケッチなどもブログに載せてくださいね。楽しみにしていますから ^^

> ryuji_s1さん、こんにちは。
小正月もすぎようというころになってようやく書初めなんて、まったくお恥ずかしいです。でも、初稽古の折に新しい筆を一本おろしましたので気分は上々でした。半額セールで一年分以上ありそうな練習用半紙の束を買いましたので、ますますがんばります~ ^^

> asuka-funeさん、こんにちは。
いつもasuka-funeさんからいただく温かいコメントを励みにしてがんばっています、有難うございます。でも、どうもだめなのです‥ 先生のお手本を臨書してもなかなかうまくゆかないので、薄い半紙の下に手本を敷いて上からなぞるように模写をしてみたのですけれども、それでも先生のさらさらと流れるようで勢いのある線が描けませんのです。焦ってはますますいけないので、ともかく筆をもつ時間をできるだけつくろうと思っています。
印首印や遊印というのもあるのですね。「文房四宝」という言葉も初めて知りました。本来、硯、墨、筆、紙の四つさえあれば書は成り立つのですね。白磁の水滴をお使いとうかがって、asuka-funeさんのお好みやお人柄まで想像しています ^^ 長年ご愛用の道具類を大切にお持ちなのでしょう。
むかしは紙は貴重品でしたから、表裏がまっ黒になるまで使ったそうですね。亡き父方の祖母が裏白の広告を半紙代わりにしてたくさんの字を書いていた姿を思い出します。
椿はわたしの好きな花のひとつです。近所に咲く椿の種類を調べたことがありますけれども、自宅から半径百メートル以内に数えきれないほど多様な椿があって驚きました。昨日は自宅近くのティールームで開催されている「椿展」をのぞきましたところ、染めものやうつわ、ちりめん細工等々に咲いた椿がひとつひとつ色も表情もちがっていて、まさに百花繚乱でした。ひと足早いお花見の気分でお茶をいただいてまいりました。(‥あ、またも「花よりだんご」の雪月花でお恥ずかしい)
asuka-funeさんの椿はどんなけしきでしょう。楽しみにしていますね。数日前、わたしは消しゴムはんこで椿を彫り、和紙のはがきにポンポンと捺して遊びました ^^
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書初め (吉天)
2007-01-19 17:47:51
いつも和の世界にひたって、いらっしゃる雪月花様、俳画の書初めでしょうか、筆に墨や絵の具を含ませてみずみずしく、ふくよかに描ていらっしゃいます。
豊で風雅な感じに見とれてしまいます。
「書初め」は、小学校低学年のとき、冬休み中かけてうまく書けなくて、いつも最後は「泣き初め」になってしまうのでした。私にも可愛い坊やの時代があったのですね。
そうそう、紙は貴重品でしたので、新聞紙に何度も練習して、清書しましたが・・結果。
朱墨で三重マルもらって貼りだされたかどうか記憶にございません。
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Unknown (towaz)
2007-01-19 19:19:18
雪月花さん、こんばんは。

雰囲気のある素敵な俳画ですね。私は去年、顔彩を買ったものの、気づくと絵より文字を書いていたりする事が多いんです。絵を楽しむという心に到達するまでには、まだまだ時間がかかりそうです。雪月花さんの俳画にうっとりしながら、目習いをさせて頂けると嬉しいです。

事後報告になってしまいましたが、素敵なブログなのでリンクさせて頂きたいです。これからもどうぞ宜しくお願いします。
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書き初めは小学校にて・・・。 (道草)
2007-01-19 21:53:26
春を思わせる暖かい毎日です。京都では、観測史上始まって以来の記録的な早さで蒲公英が咲いたとの報道がありました。西日本の各地からは、蓮華草や菫や菜の花さえ咲き出しているとの便りもあります。老人にとっては凌ぎ易い気候は結構なのですが、余りにも季節の流れと偏差があると弊害も出るでしょうし、凡人ならずとも季節感にもすっかり狂いが生じそうです。京都ではこの12日に金閣寺の雪化粧が話題になったきりで、私としましては雪見酒が不可能だなどと呑気なことを言うている場合ではなく、大寒の入りを前にして本気で異常気象が心配になっております。
それもさておき、見事な雅印を拝見させて戴きました。彫られた彫刻師は冬雷と仰るのですか。雪月花さんの御作品が一段と映えて見事です。但し、もう一つの本名を刻んだ方は分かりますが、こちらは何を表象しているのでしょうか。いずれにしましても何よりもご、夫婦で書画の世界にに遊んで(勤しんで)おられるご様子、全く羨ましい限りです。春風の如く駘蕩とした雰囲気の石像は和やかで、眺めていれば気分がいっそう落ち着きもします。
中学生の時に、田圃に立っている石蔵を悪童3人で一緒にひっくり返し(時効ですので・・・もしかして一生呪縛があるかも)、目撃していた農家の人に通告されて先生からひどく叱られたことがあります。春陽が余りにも快適で何もかもが許されてしまう気分になって、ついつい悪戯をしてしまいました。全校的に話(問)題になりましたのに、担任が話の分かる先生(現在も親しく(ご迷惑?)交流があります)で救われたのです。今なら退学か停学処分だったかも知れません。その悪餓鬼の一人は千葉で弁護士をしていますが、どんな弁護をしていますのやら。もう一人は医者になったにも拘わらず、10年程前に亡くなりました。お地蔵様の祟りではないでしょうけど、やはり何とかの不養生の見本みたいな奴でした。
いつもながら話は横道へ逸れて申し訳ありません。貴重な画面を占有して今に出入り禁止になるやも・・・。我が家の近くに京都六地蔵尊の一つである大善寺と呼ぶ寺があります。今年も初詣の帰りについでに(少し気が引けますが)お参りして来ました。横道ついでに、私の小学校時代の先生が篆刻をやっておられ、以前に蔵書印を彫って戴いたことがあります。また落款とは異なるのでしょうか。いずれにしましても、これ程の創作は神業としか私には思えません。素敵な雅印に併せて益々技量が冴えますように。

「青葉の風に」   三好達治

青葉の風に在します 石ぼとけこそたふとけれ
耳目は缼けて覺つかな 結跏千載在します

覺つかなけれ人の世を 遥かの方に在します
み佛なれば目も鼻も 缼けて亡びて笑まはすを

風のどこやらもて去りし 遠き形を惜(あた)らしみ
思ふべしやは 觀自在 道のほとりに在します
                  歸命頂觀
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やさしいおかお・・で (ささ舟)
2007-01-19 22:03:24
雪月花さま、こんばんは。
年が新るとやはり嬉しいものですね。すっかりご無沙汰していました。今年も時々お邪魔させて下さい。よろしくお願いいたします。
初稽古、新たな気持ちで凛と臨まれるお姿が見えてきます。墨の仄かな香りのする雪月花さまのお地蔵さま。ちょっと首を傾げて、何を考えて居られぬのかな・・。かわいいね。
私は「たち吉」の土のお地蔵さまを傍に置いています。四㌢~七㌢の小さなものを六体。孫が六人だからです。あのかわいいお顔を見ているとそーっと抱きたくなります。雪月花さま、無類の俳画とても楽しみにしています。暖冬とはいえおからだ健やかにお過ごし下さい。有難う御座いました。
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お詫び: お返事が遅くなります (雪月花)
2007-01-20 21:50:57
> 吉天さん、towazさん、道草さん、ささ舟さん、
いただきましたコメントをさきほどうれしく拝見しました、有難うございました。今日明日と時間にゆとりがないものですから、みなさまへのお返事は22日(月)にさせてください。申し訳ございません。
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