
花見ればそのいはれとはなけれども こころのうちぞ苦しかりける
(『山家集』 西行)
春の花は一瞬である
いっせいに花ひらき いっせいに散ってゆく
西行の哀切が しみてくる
桜花爛漫の千鳥ヶ淵
人波にただようて ふと
花のもとでは みな行儀がよいと気づく
話し声をたてるひとも 花盗人もいない
ふせ目がちに歩き しずかに花を愛でている
ひとは 美しいものにふれるとき
無意識なのだろうが
美にひざまずくような 敬虔な気持ちになるのかもしれない
それとも もうふたたび
この花に会うことはないと知っていて
ひそやかに 花と交感しているのだろうか
やすらい花や
ゆっくり咲けよ 散りいそぐな‥
一花さえ散らぬ今を惜しむ逍遥に
待ちわびた花への思いが いつしか
鎮花の祈りへと 変わってゆく
花ざかり梢をさそふ風なくて のどかに散らす春にあはばや
(同)
毎春 千鳥ヶ淵の桜と美を競い合う美術館を訪う(※)
石田武の千鳥ヶ淵の桜(写真上)
古径の清姫入相桜
土牛の極美 醍醐の桜
明治の朝陽桜
大観の春暁に匂う山桜
御舟、一穂、又造、千住博、春草‥ 宵闇に浮かぶ桜
魁夷の深山に咲きしずもれる桜
松園の桜狩り
深水の郭(くるわ)に咲く桜
・
・
桜花の美を留めて
描かれているのは みな画家の春愁と祈りだ
ここは桜の開花がニュースになる国
今年もまた季節が変わらずめぐってゆくことに
この上ない幸せを感じている
いのち、を感じて
生きている
さくら花 いのち一ぱいに咲くからに
生命(いのち)をかけてわが眺めたり
(『浴身』 岡本かの子)
春ごとに花のさかりはありなめど
あひ見むことは いのちなりけり
(『古今集』 よみ人知らず)
※ 山種美術館の「桜さくらサクラ 2006」展は 5月7日 までです。










きょうの雪月花さんのお話を読んで、待ち侘びる気持ちがいっそうつのります。
さくら・・・これほど多くの人のこころを動かす花もないでしょうね。
私も命いっぱい咲く花を静かにゆっくりと眺めたいところですが、爛漫の桜の下に立つと、つい我を忘れて夢中でフィルムに収めてしまいます。
私の「花との交感」は、そんなレンズを通してのことなのかもしれません。
未だかつて実物以上にきれいに撮れたためしはありませんが(>_
桜の季節には、亡き母(義母)を想います。短かったけれど苦しい闘病生活の末、桜吹雪の舞う日に旅立っていきました。咲いている桜も美しいけれど、春風に舞う桜の花びらの美しさが好きです。優しかった義母を想うからかもしれません。
「八坂神社」「嵐山散策」嵯峨駅→トロッコ列車・・・伊丹空港→長崎・・という行程です。寒波で桜の状況もいかがなりますやら・・・
桜の花の下で、出会いもあれば別れもあって、若くあれば心穏やかでない季節です。
「一夜」 与謝野鉄幹
祇園の桜散りがたに
ひと夜の君は黒瞳(め)がち
上目する時身にしみき
そは忘れてもあるべかり 若き愁のさはなるに
記事を拝見し、「桜狩り」という言葉がぴったりという感じを受けました(^^)
咲き誇る花から哀愁を感じる心、そんな心が人生をより深いものにするのだと思いました・・・。
桜の保護と育成に没頭して91歳の生涯を生きた通称「桜男」笹部新太郎が、この国にソメイヨシノばかりが植樹されてゆくのを愁いて「乱立する電柱のような桜が見たいのか」と嘆いたそうです。
庭に山桜か普賢象が一本あればよい。 ‥そんな願いは、贅沢でしょうか。
> Asian Seaさん、
京都は思わぬ寒波に桜も躊躇しているようですね。京都は、ソメイヨシノ、その後の紅枝垂れ、晩春の御室桜の頃と三度訪ねましたが、東京のソメイヨシノの花狂いに洛北の原谷苑の桜を重ねました。あの桜の苑には精気を抜かれるような心地がして、京都では二度と訪れたくない場所のひとつになってしまいました。Asian Seaさんの花との交感をお写真をとおして拝見するのが楽しみです ^^
これから京都へお花見にゆかれる方へ。原谷苑の桜を見ておくのも一興かもしれません。個人所有の桜庭園で一山すべて紅枝垂れ桜。花の時期だけの公開です。
http://homepage2.nifty.com/cub/niwa/haradani.htm
> みいさん、
なにとなく人恋しくなるのも桜ですね。
人恋し 灯ともし頃を 桜ちる (白雄)
毎年花とともに思い出してくれる人がいるお義母さまは幸せですね。桜は、咲いても散りながらも見る者をどこか遠くへ、遠い記憶へ誘っているような気がします。ゆっくりとしずかに散る花を惜しみたいのに‥、東京は昨夜も今日も無粋な暴風が花をむしるように奪い去ってゆきます。
> uragojpさん、
どちらの旅もuragojpさんにとって思い出深きものとなりますように。山種美術館の近くにわたしの大好きなうつわのお店があります。作家さんのふだん使いのうつわばかりなのですが、価格がお手頃でわたしはたびたび買い求めます。お店のURLは下記です。お好みに合うようでしたらのぞいてみてくださいね。お店の中で季節のお菓子とお薄もいただけます。いつも絵を見た後にうつわを眺めてお茶をいただくのが楽しみです ^^
「暮らしのうつわ 花田」
http://www.utsuwa-hanada.jp/
> 道草さま、
清水へ祇園をよぎる桜月夜 こよひ逢ふ人みなうつくしき
晶子は桜を通して自分のこころを見つめているけれど、鉄幹は晶子をそのままじかに見ているのですね。うらやましいほど完璧なカップルです。いつだったでしょうか、都の花の時期に早すぎてがっかりしていた旅の中日、友人のすすめで訪れた高台寺の枝垂れ桜だけがいっぱいに花をつけて、春宵の庭でわたしを迎えてくれました。あの日もみごとな桜月夜でした。忘れられません。
> 櫻灯路さま、
> 櫻は儚いのではなく それを観るものが儚いのではないか
西行が現代に甦って語った言の葉のように受けとめました。そのとおりかもしれません。花を観て自らの儚さと無常を悟ったのが西行だったのですね。そういえば、智積院の「桜図」も、櫻灯路さまのすすめで見ることができたのでした。等伯の生きざまがそのまま息子にも伝わって「桜図」に表出しているようです。昨年読んだ小説から、わたしの祖先(越前朝倉家家臣)と等伯の関わりを偶然知って、ますます等伯という絵師を身近に感じるようになりました。
> むろぴいさん、
むろぴいさんも千鳥ヶ淵を歩かれたのですね。桜花にこの国のこころを教えていただくことも“日本のちから”になるのではと思います。桜と日本人の関わり方をもっと知りたくて、『桜と日本人』(新潮選書)を読んでいます。
みなさまへ。今月14日(金)に東京の中野サンプラザにて『日本の「ち・から」』の著者、友常貴仁先生の定期講演会が予定されています。詳しくは下記をご覧ください。
http://www.y-uruwashi.gr.jp/ivent.html
『山門を入った所が本堂で、ここに有名な「車返し」の名木がある。ひと重と八重の入り交った品種で、御水尾天皇が、あまりの美しさに車を戻してごらんになった所から「車返し」または「み車返し」とも呼ばれる。…略…庭前の、しだれ桜は満開であった。その隣にもう一本、昔京都の御所から移されたという「左近の桜」があり、…略…この三本の桜で、常照皇寺の庭は成り立っているのである。』(『かくれ里』「桜の寺」/白洲正子より)
「花をまつ心こそなほむかしなれ春にはうとくなりにしものを」西行。
http://kyoto.cool.ne.jp/kyoto201aa/niwa2/joshokoji.htm
http://www.pref.kyoto.jp/kankyo/kyoto_nature/select200/historical/hp4.html
信濃の里の桜が微笑むのはもうひといきといったところです。
おぼつかないづれの山の峰よりか
待たるる花の咲きはじむらむ(西行)
あわれわれおほくの春の花を見て
染めおく心誰にゆづらむ (同)
そんな心境の今年です。
お越し下さいませ。
京都&神楽坂・美味際彩花のぱすてると申します。
この度はTB誠にありがとうございました。
千鳥ヶ淵の写真の方もアップしてみましたので
宜しければご覧下さいませ。
雪月花様のブログは京都の方の情報も満載でとても参考になりました。
またお寄りさせて頂きます。
くれはてて色もわかれぬ花の上に
ほのかに月のかげぞうつろふ
(光厳院御製)
乱世を疎み隠棲した北朝初代天皇、光厳院の生涯と歌ごころを京洛の花に重ねます。「いま、京都でいちばん見たい花は」と問われれば、「常照皇寺の枝垂れ桜」と答えます。初秋に一度だけ訪ねたお寺です。葉桜ではありましたが、花のころを十分に彷彿させる幽艶な姿。常照皇寺の花を愛でた後は美山荘に宿泊して里山の春を暮らすように旅したい─ わたしのささやかな夢なのです ^^ いつの日かきっと‥ と思っています。
> こはるさん、
信濃路の春はこれからなのですね。関東から西の地方は花が足踏みしているようですね。でもだからこそ花に出合うよろこびもひとしお、これから存分に“西行して”くださいませ ^^ こはるさんの花物語を楽しみにしています。それから、6月の講演会に参加の予定です。その折はもしかするとお目にかかれるでしょうか。
> ささ舟さま、
くぅ〜、いまごろ上洛するようお誘いいただくなんて、とってもツライです‥ 何もかも放り出して京都へ向けて新幹線に乗ってしまいそうで(笑) 西行の、
吉野山 こずゑの花を見し日より 心は身にもそはずなりにき
の「吉野山」を「都の花」あるいは「花の寺」と詠みかえましょうか。わたしはあまり洛西にはまいりませんけれども、大河内山荘はよいですね。残念ながら、山荘の春はいまだです。 ‥京都へ飛んでゆきたい。
> ぱすてるさん、ようこそお越しくださいました。
東京の神楽坂と京都を往復するお暮らしだとか、大変でしょうけれどうらやましいです。千鳥ヶ淵の桜も今週いっぱいでしょうね。いまごろはお濠の水に花筏が春を連れて無数に流れているでしょうか。わたしは京都に魅せられて七年ほどになりますけれども、これは一生続きそうです。江戸を知らないまま今日にいたってしまったため、江戸桜にお詫びの気持ちもこめて今回の記事を綴りました。二都のご縁でそちらに伺えてうれしいです。これからもよろしくお願いいたします。
ぱすてるさんの「京都&神楽坂 美味彩花」
http://blog.goo.ne.jp/ttomo115/