『風の盆恋歌』

2005年08月28日 | 本の森
 晩夏を迎えると高橋治さんの『風の盆恋歌』(新潮社文庫)が読みたくなります。(わたしはまだ聴いたことがないけれど)石川さゆりさんの歌でもよく知られていますね。

 坂の町、雪流しの水の音につつまれた越中八尾(やつお、富山県八尾町)で、毎年、九月一日から三日間行われ、越中おわら節と艶やかな音色の胡弓と踊りに誰もが酔う「おわら風の盆」。往時を留めた古い町並みを駆け抜ける二百十日の荒ぶる風を鎮め、五穀豊穣を願い、男も女も叙情豊かに唄い舞う─。すべてのことは夢幻のうちにすぎゆくような三日間、えり子はいまにも儚く消えようとするうつつを抱きしめるように、風の盆の八尾で待つ都築の胸の中ですごします。これまで耐えてきた三十年という歳月を、その三日間で埋めようとするかのように、ふたりは求めあい、愛しあう。けれども、朝のうちに白く咲き、昼下りから酔い始めたように色づいて、夕暮れには紅に染まって散る酔芙蓉の花が、ふたりのゆく末を暗示します。

 夕されば 酔いて散り行く 芙蓉花に わが行末を 重ねてぞ見る

この世のものとも思えない美しい祭りの中、ふたりは生き、命を燃やしました。「おわらを愛したお二人のためにどうか踊って上げて下さい。みなさん、今夜は命を燃やすお祭りでございます」‥ 一度は見てみたい祭のひとつです。


雪月花のWeb書店でも紹介しています
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8 コメント

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風の盆 恋歌 (よしなしごと)
2005-08-29 10:19:16
都築、えり子、そして老女とめの面影を求めて、やっと

越中八尾に出かけることになりました。こんなにワクワクしながら旅を待つ経験はありません。私自身、老女とめの

年齢を越えています。

高橋治が縁で、あなたさまのブログと出会いました。

早速お気に入りに。



再度読みたいと思う記事がいっぱいです。







読書の楽しみ (雪月花)
2005-08-29 22:38:50
kiyokokokuさま、コメント有難うございます。うれしかったです。kiyokokokuさまの記事へコメントが入れられなかったので、こちらで失礼いたします。



高橋治さんの小説、よいですよね。すべての小説を読んではいないのですが、「風の盆‥」のほか「星の衣」「紺青の鈴」「短夜」も好きです。高橋さんがお好きでしたら、芝木好子さんの小説もお好みではないでしょうか。



これから風の盆にお出かけとか、羨ましい限りです。お気をつけてお出かけください。よろしければ後日ご感想などお聞かせいただければうれしく思います。



「よしなしごと」へ、また伺います。有難うございました。
読書 (kiyokokoku)
2005-09-01 16:29:57
「星の衣」 「短い夜」さっそくアマゾンで注文します。

実は、ブログを探りながら始めたばかりで、よく分かっていないのです。迷いながらも、「雪月花」さんと一番はじめに出会えたのは、この上なく嬉しく思います。

文に流れる情感がとても好きです。

RE: 読書 (雪月花)
2005-09-02 07:47:22
kiyokokokuさま、こんにちは。

いまごろはもうきっと、八尾ですね。



「よしなしごと」にコメント欄ができましたね。さっそくそちらへうかがいます。
雅のこころ (よしなしごと)
2005-09-02 08:38:27
八尾へは明日(3日)朝出かけます。夕方現地着でその夜は

宿も取らずに野宿(?) 夜通し町流しがあるそうです。



女郎花を読ませていただき、素晴らしいですね。ネットで

好きな情感を共感できるなんて、うれしいです。

雪月花さんの和の心、雅の心、これからも楽しみに読ませていただきます。



私の拙稿ブログにお越しくださってありがとうございました。いま、システムを少しづつ独学中です。



http://sidediscus.exblog.jp/

http://kiyokokoku.exblog.jp/

男郎花 (雪月花)
2005-09-02 22:09:47
kiyokokokuさま、お褒めの言葉を有難うございます。わたしもまだ勉強しながらこのブログを作成しており、雅びの心などにはほど遠い凡人です。



おとこえし(男郎花)は白い花をつけるそうですね。わたしはまだお目にかかったことがないのですが、花の姿も女郎花に近いのでしょうか。



 男郎花 白きはものの哀れなり (内藤鳴雪)





風の盆の町流しで、kiyokokokuさまもえり子になるのでしょうね。いってらっしゃいませ。
来年の風の盆 (よしなしごと)
2005-09-08 14:53:46
えり子も杏里も感じることができないまま、たった一つのおわら節をみただけで、大雨に追われて富山に戻りました。とめが「いつおいででもいいようになっとるがに」と。来年の話しをすると鬼が笑います。
街ながし (櫻灯路)
2006-06-10 11:17:42
高橋治の小説が出て 石川さゆりの流行り歌が流されて来てから どっと観光客が押し寄せ 昔の風情が失われてしまいました それでも秘密をお教え致しましょう 午後10時過ぎ 富山への最終便の電車がなくなると ようやく街らしく 酔芙蓉と水音だけの静かなひと時になります 11時過ぎる頃 或いは12時を廻った頃から どこからともなく出て来る小集団の数々 三味や胡弓やポンポンと鳴る太鼓の音の方角へ行って見ると ホントに少ない集団で 『街ながし』が始まります それから夜が白々と明けるまで 音曲を流し 少人数の踊り手だけで 素晴らしい雰囲気になります そこにやっと八尾の風の盆が出現するのです すっ高い声で歌われる歌謡の美しさ 胡弓を聞くと 彼岸から見ているであろう あの人この人を思い出され いつもそっと涙を流したりします この日ばかりは 富山のビジネスホテルなどに泊まらないで 是非夜通し 街ながしを見て戴きたいですね 下の井田川の河原で その夜の疲労を取り 朝早く 八尾を離れましょう 後ろ髪に引かれると もう帰れなくなるから 

http://www.city.toyama.toyama.jp/yatsuo/nourin/owara/index.html



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