瀬渡の蔵

管理人・「瀬渡」のゾイドとたまに日常を綴った記録の保管庫

Howling 2話 狙撃竜

2016年09月11日 19時58分10秒 | Howling
ゴジュラスギガとの旅をすることになってから2日。
ハヤマはゴジュラスギガのクセや性格が徐々に分かってきた。
また、ギガの操縦にもかなり上達した。
火器が無い分、肉弾戦に持ち込む戦い方をしっかりと特訓していた。

北西部の方向に進む。
日が傾いて、そろそろ夜になる前に何かゆっくりと出来る場所を探していた。
元々が軍用機だったこのギガのデータ内に、施設の位置なども残っていた。
目指すは元ペリオドロープ基地。
今は廃施設だが多少の寝泊まりをするにはちょうどよい場所であった。
目の前に施設が見えてきた。
基地のゲートをくぐろうとしたとき急にギガが立ち止まった。
急に止まったことにハヤマは驚いた。
「どうしたの、ギガ?」
声をかけた後にギガの感情が流れてきた。
(警戒している・・・?)
ゆっくりと歩を進めようとしたそのときに目の前で砂柱が上がった。
「砲撃?!」
基地内部からだった。
「もしかして、まずい連中の塒だった・・・?」
そう思うと冷や汗が出てくる。
すると、基地から1体のゾイドが出てきた。
徐々にそのシルエットが現れてきた。
「ゴルドス!それも重武装のキャノニアー仕様!!」
キャノニアーゴルドス。
電子要塞と呼ばれたステゴサウルス型大型ゾイド、ゴルドス。
その機体に大型のバスターキャノンをはじめ、ミサイル、ショックカノンなどの武装、大型エネルギータンクなどの補助装備を施した機体である。
しかしそれ以上に驚いたのが、基地内部からここまで正確な射撃が出来ることだ。
遮蔽物、風の動きなどそのすべてを計算して砲撃してきた。
凄腕のゾイド乗りかもしれない。
とりあえずこちらの事情を説明する必要があった。
「えっと、スミマセン。
少し休む場所を探しているのですが・・・」
「・・・何だ、軍の人間じゃないのね」
(え?!)
今の声、明らかに女の子の声であった。
するとゴルドスのキャノピーが開かれた。
そこにはハヤマと同じくらいの女の子が乗っていた。
(この子があの射撃を・・・)
自分と同じくらいの歳であそこまで出来るなんて思ってもみなかった。
「ほら、早くあなたも姿を見せなさいよ」
・・・そして口が悪い。
「アイカ、ここからはこっちがやろう」
座席の後部から男性が現れた。
「分かったわ、兄さん」
「先ほどの砲撃はすまなかった。
休む場所を求めているなら、こちらも一緒だ。
そちらがよろしければこちらも問題無く受け入れよう」
「分かりました、宜しくお願いします」








旧基地内。
ゾイドを置くドックの近くに彼らはいた。
「私は『タカヤ・ヤマガミ』。彼女は妹の『アイカ・ヤマガミ』
私たちも旅をしながらゾイド乗りとしての腕を磨いている身だよ」
話を聞き、ハヤマは驚いた。
自分だけではないと思っていたが、あそこまでの腕を持った子がいたからだ。
まだ片手で数えられる日数しか経っていないとはいえそれなりの特訓をしていたが、今の自分で彼女に勝てるか。
いや、勝てない。
そう思うと気を落としてしまう。
「しかし、まさかアイカと同じ歳でギガを乗りこなしているとはね」
「いえ。ギガに助けられっぱなしですよ」
「そうね。さっきだって警戒無く突っ込んでいくつもりだったんでしょ」
「うぅ・・・」
「アイカ」
「ちょっと風に当たってきます」
そう言ってアイカは外へ行ってしまった。
「気を悪くしないでほしい。
ああは言っているが内心では嬉しがっているからね」
「そうですか」
「それに、ああなってしまったのは私のせいでもあるからね」
「・・・どういうことです?」
そう訪ねるとタカヤは左腕を見せた。
そこには大きな傷跡があった。
「ここに来る前に戦闘をしていてね。
普通の射撃は出来ても精密な射撃を出来なくなってしまったんだ。
同じように眼もね」
そういえばタカヤの右眼はわずかに色が薄かった。
「その光景を見てから、ああやって強がっているが本当は怖がっているからね」
そう思うとなんとかしてあげたいと思う。
余計なお節介なのは分かっている。
しかし、そんな感情のままでいるのがつらい事は分かっていた。
だが、今の状況でそれが解決は出来ない。
「君も協力してくれるのはうれしいが、これはあの子が乗り越えなくてはならないことだ。
君が無理しても仕方ない」
自分の気持ちを察してかタカヤが声をかけた。
「ええ、ですけど・・・」
「その気持ちだけでも十分だよ」
少し悲しそうな笑みを浮かべながらもタカヤはそう言ったことに、ハヤマはそれ以上何も言えなかった。







「僕は無力だね」
そうギガのコックピットの中で呟いた。
「何でも出来る訳ではないのは分かっているけど、こうなんで一言が言えないんだろう」
クルルとギガが唸った。
「励まして・・・ないよね。
分からない事だと言いたいんだね」
ギガは首を少し縦に振った。
「うぅ、正直すぎるよ」
ギガの行為にハヤマがさらに落胆する。
その時。
「ハヤマ君、起きているか?!」
突然、タカヤからの通信だった。
「どうしました?」
「数機のゾイドをこちらでサーチした。
真っ直ぐこちらに向かってきている」
ゴルドスのレーダーだ。
間違いはない。
ギガもそれを嗅ぎ付けたのだろう。
闘争心をたぎらせている。
「わかりました。
こちらで時間を稼ぎますから、お二人はその場から離れてください」
「待て!
いくらなんでも無茶だ・・・」
そこまで聞いて通信を切った。
無茶なのは分かりきっている。
だが、戦えない2人を逃がすための時間稼ぎくらいはできるだろう。
ギガを前進させた。
基地の門まで進めて相手を確認する。
「エクスグランチュラ8体にレッドホーンが4体。
そしてこれは・・・アイアンコング!!」
この編成で軍の確率がガクッと下がる。
今のご時世、ZOITECとZi-ARMSのゾイドが同時編入される事はまだ異例の事であった。
そして真っ直ぐこちらに向かってきているあたり、同じように寝場所を探しに来た連中。
それもタチの悪い連中である。
案の定、いきなり砲撃が来る。
「くっ!!」
エクスグランチュラとレットホーンの砲撃の中にアイアンコングのミサイルが来る。
それをなんとかEシールドで耐えた。
仕様はノーマルだが、3種類のミサイルを持つアイアンコングは現状厄介な相手であった。





基地内。
アイカが脱出の準備をする中、タカヤは手を握ったり開いたりしていた。
傷のある左である。
「兄さん?」
腕を動かそうとするタカヤの姿に、アイカは不安げに話しかける。
「すまない。先に脱出してくれ」
「まさか、兄さん。戦う気?!」
万全の状態でない中で戦おうとする兄にアイカの不安は的中した。
「ここらに武器はある。
アイカはゴルドスで逃げろ。」
「なんで!どうして怪我しても戦おうとするの!」
「どうしてか?
そこで私達を逃がすために戦っている彼がいるのに、私だけが逃げる訳にはいかないだろ」
今、ハヤマと彼のゴジュラスギガはろくに攻撃も出来ない中、自分達を逃がすためだけに踏ん張っている。
そして怪我をしている兄まで戦いに出ようとしている。
自分を守るために自らを盾に守ってくれた兄が。
一方の私はどうだろう?
また兄が傷つくところを見たくないために逃げようとしている。
またあんなことが起きたくないからここから離れようとしている。
しかし、そうすればどうなる?
兄と同じようにハヤマも傷を負うだろう。
それでも彼は大丈夫だと思う。
なぜだろう?
私はその答えが分かっているはずであった。
私と違って、今必死に守るものがあるからだ。
それも今日初めて会ったはずの自分達を。
それなら私は・・・
「兄さん・・・」
アイカがタカヤに声をかけた。
その声は震えていた。
しかし、これまでのアイカのようにただ怯えていた声ではなかった。
なにか、希望を見つけた決意の声であった。





再び基地外。
防戦一方のゴジュラスギガに砲撃が続いていた。
「Eシールドの残量もそろそろない・・・
もう脱出出来たかな?」
兄妹達を気にしながらもハヤマは自分の絶望的な状況で切り札を出そうとしていた。
32門ゾイド核砲。
ギガの命と引き替えに使える最終兵器。
これで一掃させる。
そう決めた中で、何かが通り過ぎていった。
その過ぎていったものはレッドホーンを爆散させた。
「一体何が・・・」
ふと後ろを見た。
ゆっくりと歩みながらその巨大な砲を携えた要塞が姿を現した。
キャノニアーゴルドスであった。
「タカヤさん!」
思わずハヤマは彼の名を呼んだ。
しかし、あそこまで正確な射撃が彼に出来るだろうか?
その答えはすぐに分かった。
「ゴジュラスギガに乗っていながらその程度なの!」
モニターには相変わらずの口の悪さの彼の妹の姿があった。
「アイカさん!?」
ハヤマは驚いた。
「そこ、動かないでね!動いたら命の保証はしないから」
そう言って巨大なバスターキャノンをゴジュラスギガに向けた。
「え、ええぇ!!」
いきなりこちらに砲門を向けられたハヤマは言われる以前に動けなかった。
そして一発が放たれた。
その弾丸は、ゴジュラスギガの横をギリギリかすめることなく通り過ぎ、その前にいたアイアンコングに着弾した。
「すごい・・・」
あの位置からあそこまで正確な射撃が出来るのか?
現実離れした技にハヤマは呆然とした。
そこにアイカの檄が飛ぶ。
「何やっているの?!小型くらいさっさと片付けなさいよ」
その檄にハヤマは我に帰り、戦闘に集中した。
「これまでの分を返そうか、ギガ!」
その言葉に呼応するようにギガが雄叫びをあげた。
それにエクスグランチュラとレッドホーンがひるんだ。
こうなっては勝負が決まった。
数分後に立っていたのはギガとゴルドスだけであった。










まもなく治安局が来て、処理が始まった。
調べてみると懸賞金がかけられた盗賊だったらしく、懸賞金と彼らのゾイドの引き取り金がハヤマ達のクレジットとなった。
「ハヤマくんは今後どうするのかな?」
タカヤが声をかけてきた。
「えっと、一応ギガと一緒に旅に出るつもりですけど・・・」
「つまり、目的は決まっていない。と?」
「ううぅ」
あまりに的確なアイカの答えにハヤマは何も言い返せなかった。
「どうだろう?
私達と君でギルドを作ってみては」
「ギルド、ですか?」
このご時世のギルドとは、仲間を集めて仕事やゾイドバトルのチームなど運営するための基礎と言い換える事が出来る。
「今後のことを考えると決して悪い話ではないと思うのだが」
「そうですね。そうします!」
「あら、あっさりと決めたわね」
「もちろん、お2人がいれば心強いですしこちらも少しの力になれればと」
「そんな謙遜する必要はないよ。さっきので思っていた以上の実力があることが分かったしね」
「それでは、よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく」
「足手まといだけはやめてよ」
アイカだけは素直じゃないのかどうかは分からないものの、とりあえず形だけギルドが結成された。
これからどうしていこうか。
ハヤマは今後の事にわくわくさせていた。


〔あとがき〕
Howlingの二話目です。
今回はイラスト入りです!
今回も「うろろ」氏に描いていだきました。
この場にて、ありがとうございました。
イラストは先月中旬頃に来ていたのですが、色々と機会がなくて今日に至りました。
この辺のスケジュール管理には反省します。
スミマセンでした。

本編は、キャノニアーゴルドルの登場です。
知らない人はいないと思いますが、ゴルドスにゴジュラス ジ オーガの追加パーツを取り付けた機体です。
公式では妄想戦記の機体ですが、ここからWeb漫画がなくなったのですよね。
本体も\5kを超えたので、やはり需要が難しかったのか。
そんな無念を晴らすような活躍を考えましたが・・・
やはり難しいですね。
鈍足のスナイパーを活躍させるのにはかなり苦労しましたよ。
で、パイロット頼みの感じの話作りになりました。
次話はどう活躍してもらおうか・・・
あと、ギルドについて。
基本的には、ファンタジー世界のギルド(チームを作って依頼をこなす)にゾイドバトルの参加資格などを加えた感じで考えています。
ゾイドバトルやろうにも資金繰りとか考えるとお仕事してからバトルという流れにした方がいいかなーと思って。
これからどんな仕事をさせようかな~と考えたりしております。
そんなこんなで今回はここまで。
おつきあいいただき、ありがとうございました。
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Howling 1話 巨竜

2016年04月17日 22時14分48秒 | Howling
ZAC2512年。

東方大陸南東部。
ビャクロクと呼ばれる村から2キロ離れた破棄された工場。
その中に1人の少年がいた。
「はぁ~。なんであんなゾイドに追われなくちゃいけないんだ・・・」
ぼやきながらも体は震えていた。
寒さではない。
つい先ほどまで追われていたのだ。
あるゾイドに・・・


45分前。
いつものように隣の町へ行こうとしていた。
今日は特別な日であった。
彼の誕生日である。
16歳になった。
東方大陸では16歳で大人として見られる。
まだ勉学に勤しみたい者は、高校へ。
働きたい者は就職へ。
それぞれの道を決め、歩んでいかなくてはならない歳であった。
少年=ハヤマ・ミナシロは、さらに勉強をするため高校への進学を希望していた。
そして今日、第一希望の学校の入試であった。
カバンに必要なものを入れ、フロートボードと呼ばれる乗り物に乗った。
ボード自体のマグネッサーシステムによって滑るようにして進んでいく。
時間もこのままで行けば、20分前に着席できていたはずであった・・・
学校のある町に到着する前に、街道にて巨大なゾイドが後ろから現れた。
ズンっと大きな音が近づいてくる事に気付いたハヤマが振り返った。
「ご、ゴジュラスギガ!!」
「ゴジュラスギガ」と呼ばれるゾイドは前傾姿勢で確実にハヤマを追っていた。
「なんで!どうして!いったいなんで僕を追ってくるの!!」
問いかけても答えてくれないのは分かっている。
思わず口に出していたのだ。
思わぬ事件にハヤマは、町から離れるようにして大きく道を逸れた。
こんな巨大ゾイドが町に急に現れたら確実に大パニックが起きる。
というのも、このゾイド。
軍以外で所持する人がほとんどいない希少な機体である。
接近戦では高い戦闘力を誇り、200トンもの巨体にも関わらず最高速度が180キロと機動力も優れている。
そんな怪物を町に入れない為、即座に廃工場へと向かうようにした。
工場に入り、そこから治安局に連絡する。
電話すればGPSで位置を自動で割り出してくれる。
後は治安局の方で助けてもらうことがベストだと思った。
その直感を信じて進むうちに廃工場が見えた。
岩の内部に埋め込まれるように作られたこの建造物に逃げ込めば、一応の安全は確保されるはずだった。
工場に入り、今度は階段を上った。
5Fまでの全力で上った割には疲れが少なかった。
それだけ必死だったのだ。
そして今に至った。


治安局に連絡してから、外が静かであった。
外を見ようにも怖さで見ることが出来なかった。
ただじっと部屋の奥で待っていた。
ふと気配を感じた。
周りを見回しても壁であったが確実に何かを感じたのだ。
怖さはあった。
しかし、それ以上に興味があってドアに手をかけた。
ドアを開けると・・・
反対側の部屋から割れていたはずの窓がオレンジになっていた。
ふと疑問に思うとオレンジの窓の奥から目らしき発光がした。
そして分かった。
「見つかった!!」
オレンジの窓はギガのキャノピーであったのだ。
急いで元の部屋に戻ろうとドアに手をかける前に、音がした
何かが破壊する音でなく、ウィィンと機械的な音であった。
するとオレンジの窓が一転、コックピットが現れた。
「え、え?」
なぜかギガは自分に乗ってほしいと言っているようであった。
すると、持っていた携帯端末から着信音がした。
電話だった。
「はい、ハヤマです。」
「ハヤマさんですか?治安局ですが・・・」
ようやく終わってくれたと思った。
しかし言葉が続き・・・。
「ビャクロクに向かおうとしている野良化したゾイドを確認したので・・・」
村にゾイドが向かっている?
それは直感で分かった。
野良化したゾイドが人を襲うことはほとんど無い。
が、一般的な考えであるもののかつて戦闘したことのあるゾイド関してはナワバリとして最適な場所だと理解しているのだ。
それが自分の故郷で起ころうとしている。
その後の内容を全く聞いていなかった。
それを阻止したい。
強い気持ちはあった。
しかし、今の自分は無力である。
頭の中でふとある方法が考えついた。
窓を見る。
まだギガはキャノピーを開いていた。
もし出来るのなら・・・。
一歩一歩、コックピットに近づいていく。
もうギガに対しての恐怖心は不思議となかった。
そして走りだして、ギガのコックピットに飛び乗った。
1度もゾイドを操縦したことはない。
しかし、操縦桿に手をかけた。
すると、キャノピーが閉まり、スクリーンに外の風景が写し出された。
マニュアルを取り出そうしたときに、写真が貼ってあった。
ギガの足元で笑っているZOITECの軍服を着た男であった。
知っている人ではない。
しかし、写真からの雰囲気で分かる。
このギガに多くの愛情を持っていたことを。
操縦桿からもギガの気持ちが伝わってくる。
この人に多くの愛情を受けていたことを。
「じゃあ、行こうか」
そう言ってハヤマは、自分の思いを操縦桿に伝えた。
その思いに応えるように、ギガが反転し村に向けて走り出した。

村に向かっている間に基本的な操縦について目を通していた。
基本装備のゴジュラスギガには火器が装備されていない。
だが、このような戦闘ゾイドに乗ったことのないハヤマにとって火器が無いことに不安があるものの、操縦についてはすぐに覚えられた。
また野良ゾイドとなれば、火器を装備していてもそれを指示するFCAが使えないため必然的に格闘戦となる。
そうなればギガにとって優位である。
(自分でもやれる!!)
そう思いながらハヤマはギガの操縦桿を強く握った。
そして、
「見つけた!!」
コンソールに野良ゾイドの表示が出ている。
数は5。
モニターをズームする。
機体はすべてコマンドウルフ
こちらに気づいたのだろう。
向かってくる。
距離が縮まっていく。
タイミングを見計らって尻尾でなぎ払おうとする。
そして、
「今だ!!」
必殺の一撃となるはずであった。
それが空を切る。
(かわされた?!)
野良だったら考えなしに突っ込んでいくところを散開した。
「戦闘について学習しているのか?!」
もう一度、尻尾で攻撃する。
まるでギガの攻撃を見透かされたかのように当たらない。
(どうして!)
今度はコマンドウルフからのコンビネーション攻撃。
それをなんとかかわしていく。
しかし、
ドン!!
コックピット内に衝撃が走った。
「何が?!」
一体のコマンドウルフからの射撃。
背部のロングレンジライフルが正確にゴジュラスギガを狙っていた。
「このコマンドウルフら、人が乗っているのか!」
ハヤマは気がついた。
野良のゾイドが射撃を、それもこんなに正確には通常使いこなせない。
その機動力からも傷は恐らくダミーであろう。
野良ゾイドだと思っていたハヤマに恐怖が襲ってくる。
これまで自分でゾイドを操縦したことがない中でゾイド乗りの乗った機体を相手にすることに、手も足も出ない事でじわじわと死の恐怖が忍び寄ってきていた。
ビィー!!ビィー!!
後方警戒のアラームが鳴る。
ハヤマが振り返ったころにはコマンドウルフが飛び掛かってきた。
『やられる!!』
目をつぶろうとした瞬間、ふとコマンドウルフが消えた。
左を見ると転がりながら倒れていた。
胴部の装甲が完全にひしゃげていた。
そこでハヤマは気がつく。
ギガが尻尾でコマンドウルフを撃破したことに。
すると、ギガが一吠えした。
「・・・そうだよね。ギガが戦う意思を見せているのに、僕が怯えていたらダメだね」
ハヤマは一回深呼吸する。
そして思い出す。
「ゾイドは操縦技術じゃない。心の通じ合いで動かす」
それを再認識して、コマンドウルフの群れを見渡した。
「残りは4機。こちらには射撃武装はない」
明らかにこちらが不利である。
いや。
「僕たちが不利だと思うから不利になる。
そうだよね、ギガ!」
ギガがもう一吠えする。
コマンドウルフがじりじりと後ずさりする。
その時、ギガが動く。
コマンドウルフは怯えている。
案の定、動けないためか射撃が始まる。
ギガが前かがみになると、正確なはずの砲弾を次々と華麗にかわしていく。
追撃モード。
ゴジュラスギガの最大の特徴であり、最大の武器。
この状態になると、大型機とは思えない機動性を発揮する。
とはいえ、この巨体をここまで完全にコントロールするには、今のハヤマでは出来るはずがなかった。
精神リンク。
今のハヤマとゴジュラスギガには強い絆がある。
それがここまで見事な操縦を行っていた。
先程までの動きと違い、ウルフのパイロットまで動揺しているのだろう。
狙いがどんどんと荒くなっていた。
「今だ!!」
ギガが踏み込む。
一気にコマンドウルフの群れの真ん中に飛び込み、牙と尾で3機を同時に撃破した。
残りは1機。
するとコマンドウルフが走り出すとスモーク弾を放った。
一気に視界が見えなくなる。
しかし、今のハヤマにはこの程度では動じなかった。
目を閉じ、一瞬息を殺した。
そして・・・
コマンドウルフが飛び掛かってきた。
だが、そこにギガはいなかった。
スモークが晴れるとギガの長大な尾が最後のウルフへと叩きつけた。
それはまるで相手の次の動きを把握していたかのようにハヤマがギガにジャンプをさせたのだ。


数分後に治安局が到着し、コマンドウルフの盗賊たちを連行していった。
「ハヤマ!!」
ギガから降りたハヤマに両親が駆け寄った。
「なんであなたがゾイドなんかに乗っているの!!」
息を切らしながら母親が怒鳴った。
当然だ。
受験を投げ出し、その上危ないことまでしていたのだから。
ハヤマが事情を説明しようとした時に、ひらひらと上から一枚の写真が落ちてきた。
ギガのコックピットにあった写真である。
その写真を両親が拾うと何か驚いているようであった。
一応、これまでの経緯を話した上でこう話した。
「さっきまで危ない事をしてごめんなさい。
けど、このギガと一緒に一人前のゾイド乗りになりたいと思っているんだ。
もちろん、受験できなかったからじゃなくて・・・」
そこまで言うとハヤマの両親が、
「そこまで言うならいいだろう。
ゾイドとの絆はそう簡単に切れないからな」
「けど、さっきまでのような危ない真似をするようなら逃げなさい。
生きて帰ってくることを第一に考えなさい」
何か納得したように許してくれた。
ハヤマは「なぜ?」と言おうとしたが、また怒鳴られるのではないかと思い言葉を飲み込んだ。
そして、次の日の朝にハヤマはギガと共に村を出て行った。
ハヤマが出て行った後、彼の両親が話していた。
「やはり、あのギガは分かっているのだろうな」
「ええ。ハヤマがあの人の子なのを。」
「いずれ話す事と思っていたが、こんな形とはね」
「大丈夫よ。あなたと血が繋がっていなくても、今度帰ってきた時には受け入れる強さがあるわ。
きっと」



{あとがき}
いきなりの展開で驚きましたか?
というわけでゴジュラスギガをメインにした連載「Howling」スタートです。
「Howling」は咆吼をイメージする方が多いみたいですが、調べると雄叫びが正しいです。
そのためギガのイメージにぴったりなのでこのメインタイトルにしました。
ちなみにギガはこんな感じ。



むぅ、スマホだと編集が難しいな。
また今度改めて撮影します。



それと、なんと主人公のハヤマ君のイラストもあります。


イラスト:うろろ氏

いろいろと注文を汲み取ってもらい、例によって遅ればせながらですが公開しました。
こちらも編集しないとな・・・

ちなみに「連載」もメインタイトルを変更します。
こちらは「咆吼」を意味する単語です。
Howlingは連載の後の話なので、所々で今の連載のネタバレがある・・・かも?
感じとしては/0やフューザーズのようなので、お楽しみに。
それでは、キャライラストを提供していただいたうろろ氏。
そしてここまで見ていただいた皆様、ありがとうございました。
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