ゴジュラスギガとの旅をすることになってから2日。
ハヤマはゴジュラスギガのクセや性格が徐々に分かってきた。
また、ギガの操縦にもかなり上達した。
火器が無い分、肉弾戦に持ち込む戦い方をしっかりと特訓していた。
北西部の方向に進む。
日が傾いて、そろそろ夜になる前に何かゆっくりと出来る場所を探していた。
元々が軍用機だったこのギガのデータ内に、施設の位置なども残っていた。
目指すは元ペリオドロープ基地。
今は廃施設だが多少の寝泊まりをするにはちょうどよい場所であった。
目の前に施設が見えてきた。
基地のゲートをくぐろうとしたとき急にギガが立ち止まった。
急に止まったことにハヤマは驚いた。
「どうしたの、ギガ?」
声をかけた後にギガの感情が流れてきた。
(警戒している・・・?)
ゆっくりと歩を進めようとしたそのときに目の前で砂柱が上がった。
「砲撃?!」
基地内部からだった。
「もしかして、まずい連中の塒だった・・・?」
そう思うと冷や汗が出てくる。
すると、基地から1体のゾイドが出てきた。
徐々にそのシルエットが現れてきた。
「ゴルドス!それも重武装のキャノニアー仕様!!」
キャノニアーゴルドス。
電子要塞と呼ばれたステゴサウルス型大型ゾイド、ゴルドス。
その機体に大型のバスターキャノンをはじめ、ミサイル、ショックカノンなどの武装、大型エネルギータンクなどの補助装備を施した機体である。
しかしそれ以上に驚いたのが、基地内部からここまで正確な射撃が出来ることだ。
遮蔽物、風の動きなどそのすべてを計算して砲撃してきた。
凄腕のゾイド乗りかもしれない。
とりあえずこちらの事情を説明する必要があった。
「えっと、スミマセン。
少し休む場所を探しているのですが・・・」
「・・・何だ、軍の人間じゃないのね」
(え?!)
今の声、明らかに女の子の声であった。
するとゴルドスのキャノピーが開かれた。
そこにはハヤマと同じくらいの女の子が乗っていた。
(この子があの射撃を・・・)
自分と同じくらいの歳であそこまで出来るなんて思ってもみなかった。
「ほら、早くあなたも姿を見せなさいよ」
・・・そして口が悪い。
「アイカ、ここからはこっちがやろう」
座席の後部から男性が現れた。
「分かったわ、兄さん」
「先ほどの砲撃はすまなかった。
休む場所を求めているなら、こちらも一緒だ。
そちらがよろしければこちらも問題無く受け入れよう」
「分かりました、宜しくお願いします」
旧基地内。
ゾイドを置くドックの近くに彼らはいた。
「私は『タカヤ・ヤマガミ』。彼女は妹の『アイカ・ヤマガミ』
私たちも旅をしながらゾイド乗りとしての腕を磨いている身だよ」
話を聞き、ハヤマは驚いた。
自分だけではないと思っていたが、あそこまでの腕を持った子がいたからだ。
まだ片手で数えられる日数しか経っていないとはいえそれなりの特訓をしていたが、今の自分で彼女に勝てるか。
いや、勝てない。
そう思うと気を落としてしまう。
「しかし、まさかアイカと同じ歳でギガを乗りこなしているとはね」
「いえ。ギガに助けられっぱなしですよ」
「そうね。さっきだって警戒無く突っ込んでいくつもりだったんでしょ」
「うぅ・・・」
「アイカ」
「ちょっと風に当たってきます」
そう言ってアイカは外へ行ってしまった。
「気を悪くしないでほしい。
ああは言っているが内心では嬉しがっているからね」
「そうですか」
「それに、ああなってしまったのは私のせいでもあるからね」
「・・・どういうことです?」
そう訪ねるとタカヤは左腕を見せた。
そこには大きな傷跡があった。
「ここに来る前に戦闘をしていてね。
普通の射撃は出来ても精密な射撃を出来なくなってしまったんだ。
同じように眼もね」
そういえばタカヤの右眼はわずかに色が薄かった。
「その光景を見てから、ああやって強がっているが本当は怖がっているからね」
そう思うとなんとかしてあげたいと思う。
余計なお節介なのは分かっている。
しかし、そんな感情のままでいるのがつらい事は分かっていた。
だが、今の状況でそれが解決は出来ない。
「君も協力してくれるのはうれしいが、これはあの子が乗り越えなくてはならないことだ。
君が無理しても仕方ない」
自分の気持ちを察してかタカヤが声をかけた。
「ええ、ですけど・・・」
「その気持ちだけでも十分だよ」
少し悲しそうな笑みを浮かべながらもタカヤはそう言ったことに、ハヤマはそれ以上何も言えなかった。
「僕は無力だね」
そうギガのコックピットの中で呟いた。
「何でも出来る訳ではないのは分かっているけど、こうなんで一言が言えないんだろう」
クルルとギガが唸った。
「励まして・・・ないよね。
分からない事だと言いたいんだね」
ギガは首を少し縦に振った。
「うぅ、正直すぎるよ」
ギガの行為にハヤマがさらに落胆する。
その時。
「ハヤマ君、起きているか?!」
突然、タカヤからの通信だった。
「どうしました?」
「数機のゾイドをこちらでサーチした。
真っ直ぐこちらに向かってきている」
ゴルドスのレーダーだ。
間違いはない。
ギガもそれを嗅ぎ付けたのだろう。
闘争心をたぎらせている。
「わかりました。
こちらで時間を稼ぎますから、お二人はその場から離れてください」
「待て!
いくらなんでも無茶だ・・・」
そこまで聞いて通信を切った。
無茶なのは分かりきっている。
だが、戦えない2人を逃がすための時間稼ぎくらいはできるだろう。
ギガを前進させた。
基地の門まで進めて相手を確認する。
「エクスグランチュラ8体にレッドホーンが4体。
そしてこれは・・・アイアンコング!!」
この編成で軍の確率がガクッと下がる。
今のご時世、ZOITECとZi-ARMSのゾイドが同時編入される事はまだ異例の事であった。
そして真っ直ぐこちらに向かってきているあたり、同じように寝場所を探しに来た連中。
それもタチの悪い連中である。
案の定、いきなり砲撃が来る。
「くっ!!」
エクスグランチュラとレットホーンの砲撃の中にアイアンコングのミサイルが来る。
それをなんとかEシールドで耐えた。
仕様はノーマルだが、3種類のミサイルを持つアイアンコングは現状厄介な相手であった。
基地内。
アイカが脱出の準備をする中、タカヤは手を握ったり開いたりしていた。
傷のある左である。
「兄さん?」
腕を動かそうとするタカヤの姿に、アイカは不安げに話しかける。
「すまない。先に脱出してくれ」
「まさか、兄さん。戦う気?!」
万全の状態でない中で戦おうとする兄にアイカの不安は的中した。
「ここらに武器はある。
アイカはゴルドスで逃げろ。」
「なんで!どうして怪我しても戦おうとするの!」
「どうしてか?
そこで私達を逃がすために戦っている彼がいるのに、私だけが逃げる訳にはいかないだろ」
今、ハヤマと彼のゴジュラスギガはろくに攻撃も出来ない中、自分達を逃がすためだけに踏ん張っている。
そして怪我をしている兄まで戦いに出ようとしている。
自分を守るために自らを盾に守ってくれた兄が。
一方の私はどうだろう?
また兄が傷つくところを見たくないために逃げようとしている。
またあんなことが起きたくないからここから離れようとしている。
しかし、そうすればどうなる?
兄と同じようにハヤマも傷を負うだろう。
それでも彼は大丈夫だと思う。
なぜだろう?
私はその答えが分かっているはずであった。
私と違って、今必死に守るものがあるからだ。
それも今日初めて会ったはずの自分達を。
それなら私は・・・
「兄さん・・・」
アイカがタカヤに声をかけた。
その声は震えていた。
しかし、これまでのアイカのようにただ怯えていた声ではなかった。
なにか、希望を見つけた決意の声であった。
再び基地外。
防戦一方のゴジュラスギガに砲撃が続いていた。
「Eシールドの残量もそろそろない・・・
もう脱出出来たかな?」
兄妹達を気にしながらもハヤマは自分の絶望的な状況で切り札を出そうとしていた。
32門ゾイド核砲。
ギガの命と引き替えに使える最終兵器。
これで一掃させる。
そう決めた中で、何かが通り過ぎていった。
その過ぎていったものはレッドホーンを爆散させた。
「一体何が・・・」
ふと後ろを見た。
ゆっくりと歩みながらその巨大な砲を携えた要塞が姿を現した。
キャノニアーゴルドスであった。
「タカヤさん!」
思わずハヤマは彼の名を呼んだ。
しかし、あそこまで正確な射撃が彼に出来るだろうか?
その答えはすぐに分かった。
「ゴジュラスギガに乗っていながらその程度なの!」
モニターには相変わらずの口の悪さの彼の妹の姿があった。
「アイカさん!?」
ハヤマは驚いた。
「そこ、動かないでね!動いたら命の保証はしないから」
そう言って巨大なバスターキャノンをゴジュラスギガに向けた。
「え、ええぇ!!」
いきなりこちらに砲門を向けられたハヤマは言われる以前に動けなかった。
そして一発が放たれた。
その弾丸は、ゴジュラスギガの横をギリギリかすめることなく通り過ぎ、その前にいたアイアンコングに着弾した。
「すごい・・・」
あの位置からあそこまで正確な射撃が出来るのか?
現実離れした技にハヤマは呆然とした。
そこにアイカの檄が飛ぶ。
「何やっているの?!小型くらいさっさと片付けなさいよ」
その檄にハヤマは我に帰り、戦闘に集中した。
「これまでの分を返そうか、ギガ!」
その言葉に呼応するようにギガが雄叫びをあげた。
それにエクスグランチュラとレッドホーンがひるんだ。
こうなっては勝負が決まった。
数分後に立っていたのはギガとゴルドスだけであった。
まもなく治安局が来て、処理が始まった。
調べてみると懸賞金がかけられた盗賊だったらしく、懸賞金と彼らのゾイドの引き取り金がハヤマ達のクレジットとなった。
「ハヤマくんは今後どうするのかな?」
タカヤが声をかけてきた。
「えっと、一応ギガと一緒に旅に出るつもりですけど・・・」
「つまり、目的は決まっていない。と?」
「ううぅ」
あまりに的確なアイカの答えにハヤマは何も言い返せなかった。
「どうだろう?
私達と君でギルドを作ってみては」
「ギルド、ですか?」
このご時世のギルドとは、仲間を集めて仕事やゾイドバトルのチームなど運営するための基礎と言い換える事が出来る。
「今後のことを考えると決して悪い話ではないと思うのだが」
「そうですね。そうします!」
「あら、あっさりと決めたわね」
「もちろん、お2人がいれば心強いですしこちらも少しの力になれればと」
「そんな謙遜する必要はないよ。さっきので思っていた以上の実力があることが分かったしね」
「それでは、よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく」
「足手まといだけはやめてよ」
アイカだけは素直じゃないのかどうかは分からないものの、とりあえず形だけギルドが結成された。
これからどうしていこうか。
ハヤマは今後の事にわくわくさせていた。
〔あとがき〕
Howlingの二話目です。
今回はイラスト入りです!
今回も「うろろ」氏に描いていだきました。
この場にて、ありがとうございました。
イラストは先月中旬頃に来ていたのですが、色々と機会がなくて今日に至りました。
この辺のスケジュール管理には反省します。
スミマセンでした。
本編は、キャノニアーゴルドルの登場です。
知らない人はいないと思いますが、ゴルドスにゴジュラス ジ オーガの追加パーツを取り付けた機体です。
公式では妄想戦記の機体ですが、ここからWeb漫画がなくなったのですよね。
本体も\5kを超えたので、やはり需要が難しかったのか。
そんな無念を晴らすような活躍を考えましたが・・・
やはり難しいですね。
鈍足のスナイパーを活躍させるのにはかなり苦労しましたよ。
で、パイロット頼みの感じの話作りになりました。
次話はどう活躍してもらおうか・・・
あと、ギルドについて。
基本的には、ファンタジー世界のギルド(チームを作って依頼をこなす)にゾイドバトルの参加資格などを加えた感じで考えています。
ゾイドバトルやろうにも資金繰りとか考えるとお仕事してからバトルという流れにした方がいいかなーと思って。
これからどんな仕事をさせようかな~と考えたりしております。
そんなこんなで今回はここまで。
おつきあいいただき、ありがとうございました。
ハヤマはゴジュラスギガのクセや性格が徐々に分かってきた。
また、ギガの操縦にもかなり上達した。
火器が無い分、肉弾戦に持ち込む戦い方をしっかりと特訓していた。
北西部の方向に進む。
日が傾いて、そろそろ夜になる前に何かゆっくりと出来る場所を探していた。
元々が軍用機だったこのギガのデータ内に、施設の位置なども残っていた。
目指すは元ペリオドロープ基地。
今は廃施設だが多少の寝泊まりをするにはちょうどよい場所であった。
目の前に施設が見えてきた。
基地のゲートをくぐろうとしたとき急にギガが立ち止まった。
急に止まったことにハヤマは驚いた。
「どうしたの、ギガ?」
声をかけた後にギガの感情が流れてきた。
(警戒している・・・?)
ゆっくりと歩を進めようとしたそのときに目の前で砂柱が上がった。
「砲撃?!」
基地内部からだった。
「もしかして、まずい連中の塒だった・・・?」
そう思うと冷や汗が出てくる。
すると、基地から1体のゾイドが出てきた。
徐々にそのシルエットが現れてきた。
「ゴルドス!それも重武装のキャノニアー仕様!!」
キャノニアーゴルドス。
電子要塞と呼ばれたステゴサウルス型大型ゾイド、ゴルドス。
その機体に大型のバスターキャノンをはじめ、ミサイル、ショックカノンなどの武装、大型エネルギータンクなどの補助装備を施した機体である。
しかしそれ以上に驚いたのが、基地内部からここまで正確な射撃が出来ることだ。
遮蔽物、風の動きなどそのすべてを計算して砲撃してきた。
凄腕のゾイド乗りかもしれない。
とりあえずこちらの事情を説明する必要があった。
「えっと、スミマセン。
少し休む場所を探しているのですが・・・」
「・・・何だ、軍の人間じゃないのね」
(え?!)
今の声、明らかに女の子の声であった。
するとゴルドスのキャノピーが開かれた。
そこにはハヤマと同じくらいの女の子が乗っていた。
(この子があの射撃を・・・)
自分と同じくらいの歳であそこまで出来るなんて思ってもみなかった。
「ほら、早くあなたも姿を見せなさいよ」
・・・そして口が悪い。
「アイカ、ここからはこっちがやろう」
座席の後部から男性が現れた。
「分かったわ、兄さん」
「先ほどの砲撃はすまなかった。
休む場所を求めているなら、こちらも一緒だ。
そちらがよろしければこちらも問題無く受け入れよう」
「分かりました、宜しくお願いします」
旧基地内。
ゾイドを置くドックの近くに彼らはいた。
「私は『タカヤ・ヤマガミ』。彼女は妹の『アイカ・ヤマガミ』
私たちも旅をしながらゾイド乗りとしての腕を磨いている身だよ」
話を聞き、ハヤマは驚いた。
自分だけではないと思っていたが、あそこまでの腕を持った子がいたからだ。
まだ片手で数えられる日数しか経っていないとはいえそれなりの特訓をしていたが、今の自分で彼女に勝てるか。
いや、勝てない。
そう思うと気を落としてしまう。
「しかし、まさかアイカと同じ歳でギガを乗りこなしているとはね」
「いえ。ギガに助けられっぱなしですよ」
「そうね。さっきだって警戒無く突っ込んでいくつもりだったんでしょ」
「うぅ・・・」
「アイカ」
「ちょっと風に当たってきます」
そう言ってアイカは外へ行ってしまった。
「気を悪くしないでほしい。
ああは言っているが内心では嬉しがっているからね」
「そうですか」
「それに、ああなってしまったのは私のせいでもあるからね」
「・・・どういうことです?」
そう訪ねるとタカヤは左腕を見せた。
そこには大きな傷跡があった。
「ここに来る前に戦闘をしていてね。
普通の射撃は出来ても精密な射撃を出来なくなってしまったんだ。
同じように眼もね」
そういえばタカヤの右眼はわずかに色が薄かった。
「その光景を見てから、ああやって強がっているが本当は怖がっているからね」
そう思うとなんとかしてあげたいと思う。
余計なお節介なのは分かっている。
しかし、そんな感情のままでいるのがつらい事は分かっていた。
だが、今の状況でそれが解決は出来ない。
「君も協力してくれるのはうれしいが、これはあの子が乗り越えなくてはならないことだ。
君が無理しても仕方ない」
自分の気持ちを察してかタカヤが声をかけた。
「ええ、ですけど・・・」
「その気持ちだけでも十分だよ」
少し悲しそうな笑みを浮かべながらもタカヤはそう言ったことに、ハヤマはそれ以上何も言えなかった。
「僕は無力だね」
そうギガのコックピットの中で呟いた。
「何でも出来る訳ではないのは分かっているけど、こうなんで一言が言えないんだろう」
クルルとギガが唸った。
「励まして・・・ないよね。
分からない事だと言いたいんだね」
ギガは首を少し縦に振った。
「うぅ、正直すぎるよ」
ギガの行為にハヤマがさらに落胆する。
その時。
「ハヤマ君、起きているか?!」
突然、タカヤからの通信だった。
「どうしました?」
「数機のゾイドをこちらでサーチした。
真っ直ぐこちらに向かってきている」
ゴルドスのレーダーだ。
間違いはない。
ギガもそれを嗅ぎ付けたのだろう。
闘争心をたぎらせている。
「わかりました。
こちらで時間を稼ぎますから、お二人はその場から離れてください」
「待て!
いくらなんでも無茶だ・・・」
そこまで聞いて通信を切った。
無茶なのは分かりきっている。
だが、戦えない2人を逃がすための時間稼ぎくらいはできるだろう。
ギガを前進させた。
基地の門まで進めて相手を確認する。
「エクスグランチュラ8体にレッドホーンが4体。
そしてこれは・・・アイアンコング!!」
この編成で軍の確率がガクッと下がる。
今のご時世、ZOITECとZi-ARMSのゾイドが同時編入される事はまだ異例の事であった。
そして真っ直ぐこちらに向かってきているあたり、同じように寝場所を探しに来た連中。
それもタチの悪い連中である。
案の定、いきなり砲撃が来る。
「くっ!!」
エクスグランチュラとレットホーンの砲撃の中にアイアンコングのミサイルが来る。
それをなんとかEシールドで耐えた。
仕様はノーマルだが、3種類のミサイルを持つアイアンコングは現状厄介な相手であった。
基地内。
アイカが脱出の準備をする中、タカヤは手を握ったり開いたりしていた。
傷のある左である。
「兄さん?」
腕を動かそうとするタカヤの姿に、アイカは不安げに話しかける。
「すまない。先に脱出してくれ」
「まさか、兄さん。戦う気?!」
万全の状態でない中で戦おうとする兄にアイカの不安は的中した。
「ここらに武器はある。
アイカはゴルドスで逃げろ。」
「なんで!どうして怪我しても戦おうとするの!」
「どうしてか?
そこで私達を逃がすために戦っている彼がいるのに、私だけが逃げる訳にはいかないだろ」
今、ハヤマと彼のゴジュラスギガはろくに攻撃も出来ない中、自分達を逃がすためだけに踏ん張っている。
そして怪我をしている兄まで戦いに出ようとしている。
自分を守るために自らを盾に守ってくれた兄が。
一方の私はどうだろう?
また兄が傷つくところを見たくないために逃げようとしている。
またあんなことが起きたくないからここから離れようとしている。
しかし、そうすればどうなる?
兄と同じようにハヤマも傷を負うだろう。
それでも彼は大丈夫だと思う。
なぜだろう?
私はその答えが分かっているはずであった。
私と違って、今必死に守るものがあるからだ。
それも今日初めて会ったはずの自分達を。
それなら私は・・・
「兄さん・・・」
アイカがタカヤに声をかけた。
その声は震えていた。
しかし、これまでのアイカのようにただ怯えていた声ではなかった。
なにか、希望を見つけた決意の声であった。
再び基地外。
防戦一方のゴジュラスギガに砲撃が続いていた。
「Eシールドの残量もそろそろない・・・
もう脱出出来たかな?」
兄妹達を気にしながらもハヤマは自分の絶望的な状況で切り札を出そうとしていた。
32門ゾイド核砲。
ギガの命と引き替えに使える最終兵器。
これで一掃させる。
そう決めた中で、何かが通り過ぎていった。
その過ぎていったものはレッドホーンを爆散させた。
「一体何が・・・」
ふと後ろを見た。
ゆっくりと歩みながらその巨大な砲を携えた要塞が姿を現した。
キャノニアーゴルドスであった。
「タカヤさん!」
思わずハヤマは彼の名を呼んだ。
しかし、あそこまで正確な射撃が彼に出来るだろうか?
その答えはすぐに分かった。
「ゴジュラスギガに乗っていながらその程度なの!」
モニターには相変わらずの口の悪さの彼の妹の姿があった。
「アイカさん!?」
ハヤマは驚いた。
「そこ、動かないでね!動いたら命の保証はしないから」
そう言って巨大なバスターキャノンをゴジュラスギガに向けた。
「え、ええぇ!!」
いきなりこちらに砲門を向けられたハヤマは言われる以前に動けなかった。
そして一発が放たれた。
その弾丸は、ゴジュラスギガの横をギリギリかすめることなく通り過ぎ、その前にいたアイアンコングに着弾した。
「すごい・・・」
あの位置からあそこまで正確な射撃が出来るのか?
現実離れした技にハヤマは呆然とした。
そこにアイカの檄が飛ぶ。
「何やっているの?!小型くらいさっさと片付けなさいよ」
その檄にハヤマは我に帰り、戦闘に集中した。
「これまでの分を返そうか、ギガ!」
その言葉に呼応するようにギガが雄叫びをあげた。
それにエクスグランチュラとレッドホーンがひるんだ。
こうなっては勝負が決まった。
数分後に立っていたのはギガとゴルドスだけであった。
まもなく治安局が来て、処理が始まった。
調べてみると懸賞金がかけられた盗賊だったらしく、懸賞金と彼らのゾイドの引き取り金がハヤマ達のクレジットとなった。
「ハヤマくんは今後どうするのかな?」
タカヤが声をかけてきた。
「えっと、一応ギガと一緒に旅に出るつもりですけど・・・」
「つまり、目的は決まっていない。と?」
「ううぅ」
あまりに的確なアイカの答えにハヤマは何も言い返せなかった。
「どうだろう?
私達と君でギルドを作ってみては」
「ギルド、ですか?」
このご時世のギルドとは、仲間を集めて仕事やゾイドバトルのチームなど運営するための基礎と言い換える事が出来る。
「今後のことを考えると決して悪い話ではないと思うのだが」
「そうですね。そうします!」
「あら、あっさりと決めたわね」
「もちろん、お2人がいれば心強いですしこちらも少しの力になれればと」
「そんな謙遜する必要はないよ。さっきので思っていた以上の実力があることが分かったしね」
「それでは、よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく」
「足手まといだけはやめてよ」
アイカだけは素直じゃないのかどうかは分からないものの、とりあえず形だけギルドが結成された。
これからどうしていこうか。
ハヤマは今後の事にわくわくさせていた。
〔あとがき〕
Howlingの二話目です。
今回はイラスト入りです!
今回も「うろろ」氏に描いていだきました。
この場にて、ありがとうございました。
イラストは先月中旬頃に来ていたのですが、色々と機会がなくて今日に至りました。
この辺のスケジュール管理には反省します。
スミマセンでした。
本編は、キャノニアーゴルドルの登場です。
知らない人はいないと思いますが、ゴルドスにゴジュラス ジ オーガの追加パーツを取り付けた機体です。
公式では妄想戦記の機体ですが、ここからWeb漫画がなくなったのですよね。
本体も\5kを超えたので、やはり需要が難しかったのか。
そんな無念を晴らすような活躍を考えましたが・・・
やはり難しいですね。
鈍足のスナイパーを活躍させるのにはかなり苦労しましたよ。
で、パイロット頼みの感じの話作りになりました。
次話はどう活躍してもらおうか・・・
あと、ギルドについて。
基本的には、ファンタジー世界のギルド(チームを作って依頼をこなす)にゾイドバトルの参加資格などを加えた感じで考えています。
ゾイドバトルやろうにも資金繰りとか考えるとお仕事してからバトルという流れにした方がいいかなーと思って。
これからどんな仕事をさせようかな~と考えたりしております。
そんなこんなで今回はここまで。
おつきあいいただき、ありがとうございました。