ガタゴトぷすぷす~外道教育学研究日誌

川口幸宏の鶴猫荘日記第2版改題

精神病者の社会的自立の端緒を切り開いたフェリュス

2017年10月13日 | 研究余話
 セガンを「発掘」した精神医学者ならびに精神病棟行政官フェリュスについては、セガンは、まったく触れていない。そのわけを知ることも重要な研究課題である。そのためにも、フェリュスがビセートル精神病棟院長の時に、精神病者のために行ったさまざまな「療法」を押さえておく必要がある。ひょっとしたら、ピネルやエスキロールの比で無いほどに、現代的課題を内包している可能性がある。
 フェリュスは精神病者のための療法の一環として、農業労働等を導入した。わざわざビセートルの付置施設としてサント=アンヌ農場を開拓しているのである。
 肉体労働が、精神病者たちの諸能力を制御し、筋肉組織を鍛えることによって、患者たちの夜間の急な症状の発現を抑制し、「まやかしの自由」の発現を精神的満足感の発達へと援助することができると、フェリュスは考えた。そのためにサント=アンヌ農場が活用されたのである。精神病患者たちは、毎朝、毎夕、医師に誘導されて、病棟から農場へ、農場から病棟へと身を移す。患者たちはそこで、庭仕事や耕作に関わる労働に従事する。患者たちは、農作業に必要な用具・耕作具をきちんと使いこなすことができる。そればかりでは無い、大工仕事もこなし、必要に応じてペイントも成し遂げる。
 精神病患者たちを、ピネルは牢獄から陽の当たるところに引き出した、エスキロールは、精神病者たちを繋いでいた鉄鎖から解き放し拘束・束縛を解いた。そしてフェリュスに至って、患者たちは道具を使って物を生産するという「人間」の原点に立ったのである。生産物は商業ルートに乗せられ、収益は患者たちにも還元された。さらにフェリュスは、患者たちのために、小劇場、小図書館を設立し、遅滞の子どもの患者のための「学校」を設立している。後年、この学校の教師として、セガンは雇用された。
 精神病史ではピネルやエスキロールが時代を切り開いたとして焦点が当てられるが、フェリュスこそ、精神病患者たちの社会的自立の契機を拓いたという意味で、ピネルやエスキロール以上の歴史的存在者だと、ぼくは思う。そして、知的障害教育の開拓と発展とをセガンの手に委ねた人物として、高く評価されるべきだろう。
☆web検索で見つけたフェリュス肖像

 
 
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