夕焼け金魚 

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蝶柄の夫人

2017-06-19 | 日記
入居なさっている方で蝶の柄が大好きな奥様がいました。
春は春の蝶の柄、夏は夏の蝶の柄と季節ごとに蝶の種類を変えながら、オシャレを楽しんでおられた方です。
旦那様と二人で洋装店を営んでおられた方なのですが、旦那様が亡くなられてからは一人でマンションでお暮らしになっていました。
私とも仲良くしていただいて、よく部屋でお茶をご馳走していただいたものです。
ずっと以前ですが、凄い蝶柄の服を着ていたことがあります。
よく見ると蝶の模様が動いているのです。
目の錯覚かと思いましたが、間違いなく動いているのです。
生きた蝶を服に止まらせていたのです。
「凄いですね」と感嘆の声を上げましたが、奥様にしたらたいしたことないと仰るのです。
「服にメスのホルモンを染みこませてあるので、オスが寄ってくるだけ」と仰るのです。
「私のホルモンには誰も寄ってきませんが、蝶は科学で合成したホルモンでもオスには効くようです」と笑われるのです。
「生きた蝶の服なんて凄いですよ、売れば儲かるのでは」と言ったのです。
「ダメですよ、部屋の中でしたらこうして止まっている蝶も外に行くと、もっと刺激的な匂いがするようで、特に野原で本物のメスが飛んでいると、みんなパァーッと本物の方に行ってしまうのです」といわれたのです。
実験してみたのでょうか。
「そんなことないですよ、現にこうして貴方のホルモンに惹かれて来ているオスがいますから」
「そうなのですか、金魚さんがオス。私からはオスには見えないですね」と笑われてしまいました。
本気か嘘か「部屋で二人きりになっても、金魚さんとでしたら心配しないのが証拠ですよ、それとも狼になっみますか」と言われるのです。
ここまで言われてはと思うのですが、若い頃なら間違いなく頬に手形覚悟で近づくのですが、この歳になると誘われてもなかなか難しいのです。
やっぱり恥は書きたくないし、書かせたくありませんから。
そんな奥様が、入院なさったと聞いたのです。
お見舞いにと思いますが、これもご家族のおいでになる方に、お見舞いと言っていくのもなんと言って良いのか、そんなことを考えてしまうのです。
そんなある朝、近所の河原を散歩していたとき、その方を見たのです。
お元気になられたのですかと思って近づくと、私に気づいたのか振り向いていただきました。
やっぱり蝶柄の服を着ていて、お元気そうな顔で私を見て笑ってくださいました。
私も笑って「お元気になられて」と言おうとしたときに、その方の服が、蝶が一斉に飛び立ったのです。
彼女の周りからも一斉に蝶が、青空に吸い込まれるように飛び立ったのです。
すると彼女の顔も蝶と一緒に空にふわっと浮き上がっていくのでした。
何やら私に言っているようなのですが、声が聞こえません。
彼女の顔を中心に丸い輪になって蝶の集団が、どこまでもどこまでも青い空に舞い上がっていって、いつしか青空に吸い込まれてしまいました。
後には私だけが河原に立っていました。
お別れに来ていただけたのかなと思います。
彼女の口の形から「意気地無し」と言われたような気がしています。
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