夕焼け金魚 

不思議な話
小説もどきや日々の出来事
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古い姿見のある家

2017-08-10 | 創作
お屋敷の整理を命じられて掃除に行ってきました。
どうやら夜逃げした屋敷を仲介して、引き渡しのために掃除を命じられたのです。
夜逃げしたと聞いていたので、凄く汚れていることを想像して行ったのですけど、意外というかとても綺麗だったのです。
「夜逃げと聞いてきたので、汚れていると思ったのに綺麗ですね」と一緒に仕事している人に言ったのです。
「あんた、この家の噂知らないんだ」
「なにか噂あるのですか」
「ええ、この家に住んだ人は大抵、夜逃げになるのです」
「貧乏したとかですか」
「貧乏して、逃げるのでしたら普通なのですけど、大金持ちになるのになぜか夜逃げというか、居なくなっちゃうのですよ」
「居なくなるのですか」
「前の持ち主も、旦那は二号さんを作ってそこで病死して、子供は交通事故になって、最後は奥さんがいつの間にか居なくなってしまったという噂ですよ」
「そうなんですか」
「ええ、旦那はもとは小さなカレー屋だったのが、会社作って凄い羽振りになって、二号さん作ったというし、子供は凄く高い外車購入して、その車で事故死なんですよ」
「それは、ちょっと不吉ですね」
「その前の持ち主も同じように事故死や病死で亡くなって、最後は大抵奥さんがひとりになるのですけど、いつの間にか奥さんも居なくなって空き家になるのですよ」
「へぇ、そんなイヤな家、よく買う気になりますね」
「それが、この家の不思議なんですよ」と言われてしまいました。
なんとなく気になってお屋敷の中を見て回ったのです。
他は気になら無かったのですけど、一つだけ、大きな姿見があったのです。
アンテックと言うか古い姿見というか、ちょっと気になったのです。
鏡にドア風の蓋というか扉が付いていたのです。扉を開けると自分の顔が写るのです。
私がドアを開けると、一瞬ですけど鏡に女の人が見えて、えっと思った瞬間、自分の姿が映っていたのです。
あの一瞬の違和感がたまらなくイヤな感じなのです。
簡単に言うと化け物の感じです。
鏡の中に化け物が隠れ住んでいることは、よくあることなのです。
掃除を終えてから、不動産屋に「あの姿見は良くないから、処分した方がいいよ」と言ったのですけど。
「何言ってるんだ、あの姿見を奥様が気に入ってあの家買うと言っていただけたのだから」
「でも、良くないことが起きるかも」
「金魚さん、私達はあの家を仲介しただけで持ち主でも無ければ、売主でも無いのですよ」
「でも、変な噂があるとか。もしかして事故物件だったら」
「それは売主に言っていただかないと。それに私が聞いたところでは前の持ち主は皆さん、企業を大きくした方々ばかりですよ」
「でも、事故死とか、病死とかしているのでは」
「事故死、病死は皆さんそうですよ。私だっていつ事故に遭ったり病死するかは、分かりませんから」と言うのです。
余計なお節介とは思ったのですけど、新しい買い主の引っ越しの時にお手伝いに行ったのです。
「わざわざ、すみませんね」と言う奥様に「あの奥の部屋にある姿見のことなんですけど」と言ったのです。
「良い姿見でしょう、あの姿見に惚れてこの家買うことにしたのですよ」と言うのです。
小さな鉄工所をしている旦那をけしかけて、この家買うことに決めたそうです。
それでも一応、不吉な鏡ですから手放した方がとは言ったのですけど聞く耳持たない感じでした。
姿見のある部屋で話したのですけど、奥様が居なくなった時です。
「余計なこと言うな」とはっきり聞こえました。
鏡の中から私を見て、言っているのは間違いないのです。
「叩き壊してやろうか、荷物が倒れて鏡を壊すという事は、引っ越しの時よくあることだよ」と言い返したときです。
「金魚さん、ちょっと手伝っていただけますか」と奥様から声がかかったのです。
あまりにタイミングが良くて、しかも用事というのは私でなくても構わない事なのに、私を名指しで呼ぶのです。
絶対、あの鏡は良くないと思って鏡のある部屋に行こうとすると、誰かが私を呼ぶのです。
明らかに鏡が私の邪魔をしているのです。
さすがに、根負けしてその日は帰ることにして、後日、お伺いしようとしたのですけど、いつ行っても留守でした。
そのうちあの鉄工所が簡単な実用新案をとって、それが人気になってあっという間に大きくなったのです。
再び、あの鏡のある部屋には入れたのは、もう引っ越ししてから3年も経っていました。
私が訪ねていくと、奥様は会ってはいただけましたが、全ての指に大きな指輪をして見せびらかすような素振りで「人と会う予定があるのですけど、どのような要件ですか」と私を見下すような感じの奥様に変わっていました。
鏡のことを言おうと思ったのですけど、奥様の素振りを見ていたら言う気が無くなってしまいました。
後から考えると、それも鏡のせいだったのかもしれません。
その家族も、最初に娘さんがクラスの女の子を虐めて、虐められた子が逆にその子を襲ったのです。
最初は亡くなって可哀想だと言われていたのですけど、そのうち酷いイジメをしていたから仕方ないと言われるようになって、殺した子への嘆願書が出されたのです。
その頃から、会社の方でも内紛が起こり社長の旦那様が過労でウツ病になって、首を吊って亡くなったのです。
旦那様が亡くなってからは奥様は家に閉じこもるようになりました。
少しは気になつたのですけど、会いに行ったときのあの不愉快な仕打ちを考えると何もする気が起こらなかったのです。
そんなときにあの奥様から電話がかかってきたのです。
どうしてと思って電話に出ると「金魚さんですか、助けてください」と電話の向こうで泣いているのです。
「どうしたのですか、今行きますから家に居てください」と言う「はい、なるべく早く来てください。あの鏡に殺される」と言うのです。
「娘も夫も、鏡が笑っていると言って亡くなったのです。貴方の言うとおり、あの鏡は不吉な鏡だったのです」と言うのです。
さすがに電話でこう言われると、あのお屋敷にすぐ駆けつけたのです。
でも、駆けつけて玄関のインターホンでいくら呼びかけても誰も出ないのです。
不動産屋に言って警官立ち会いのもと、お屋敷に入ったのですけどお屋敷の中には誰も居なかったのです。
その日のうちに親戚に連絡して、奥様の捜索願を提出したのですけど、その日以来奥様はどこに行ったのか行方不明になったのです。
正直、ちょっと責任を感じていたので今度こそ、機会があったらあの鏡壊してやろうと考えていたら、ある日、あのお屋敷から火が出て、あっという間に落ちてしまったのです。
焼け跡を探してみたりですけどあの鏡があった部屋は跡形も無くなっていて、鏡がどうなったのか、誰も知らないのです。
今頃、あの鏡はどこかの家にはめ込まれて貴方を見ているかもしれません。



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