夕焼け金魚 

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綺麗な花壇

2017-05-16 | 創作
掃除担当のアパートにいつも花壇の手入れをしていただける方がいました。
年配のご婦人で金魚より少し年下ではないのかなと思っていました。
先日も掃除の時にお手入れをなさっていたので「精がでますね」と声かけたのです。
「いいえ、好きですから苦になりません」と言うのです。
「ところで金魚さんは山の出とか、本当ですか」
どう答えようかと迷いました。差別というのではありませんけど、出自を聞く人はそんな気持ちのある人が多いです。
特に私は幼い頃に山から町に出ていますから、山の出と言うことを知っている人は少ないのですけど。
返事をためらっていると「助け合っていただけませんか」と言うのです。
山の言葉で山の者同士は善悪を超えて助けるという事です。
たとえ相手が人殺しであっても、助けなければならない山の掟です。
「助けと言われても、私では何もできませんけど」
「実はミカクシの種が欲しいのですけど」
「ミカクシですか、最近は生えているのも見かけないのですけど」
「金魚さんなら、今でも山の方とお話しできると聞いてますし、色々噂は聞いてますから」
困ったな、噂なんて良い噂なんか一つも無いはずですし。
「では、ミカクシとはちょっと違うのですけど同じ効果があると思いますから」と言って一粒の種を渡しました。
昔、山でミカクシと同じような花を見つけてバッグの隅に持っていたものです。
「でもどうしてミカクシの種が欲しいのですか」と聞くとご婦人はじっと私の顔を見たのです。
「分けはしらない方が良いと思います。金魚さんが助けてくれたとみんなには話しますから」と言って家の中に入って行かれました。
玄関を開けたとき、中にやつれた男の方が立っていて会釈してくれました。
あの方が旦那様かと思って、そのときは何も聞かず立ち去りました。

それ以来時々花壇を見ると、1ヶ月ほど後に大きく土盛りがされていました。
花壇の土が大きく土盛りされていて、芽が出でいました。
それから三ヶ月ほどして真っ赤な花が咲きました。
アメリカディゴと似た花が咲きましたが、私の渡した種の花です。
名前は知らないのですが、茎にトゲかあって猛毒を出すのです。刺されるとものすごい睡眠作用があるそうです。
山で昼間に寝るという事は死を意味します。花が殺すのでは無く、他の動物が寝ている動物を殺して食べるのです。
そして、食べ残した遺骸が花の側に残ってそれを肥料にすると言われています。
何より最初に水分を抜き取ってしまうので、いわゆる腐った匂いがすぐ無くなるというのです。
しかもこの花の特徴は骨も蔓を巻き付かせて砕いて養分にしてしまうことです。
半年も経つと跡形もなく死骸が無くなってしまうと言われています。
身体が無くなるので「身隠し」と呼ばれているものです。
偶然、山で見つけて持っていたものですけど本当にミカクシなのか分からなくて、似たものの種と言ったけどお役に立ててよかったです。
そういえば、ご婦人の旦那様をあれから見かけないし、花壇の土盛り、あの大きな土盛りは人が独り横たわったのと同じくらいでした。
旦那様は行方不明になっても届け出をしなければ年金は貰えますから、これからもある種の需要あるかもしれませんね。
最近は金魚も手元不用意で、どなたか必要なら仰っていただければお安く譲ります。
数に限りがありますから、売値は相談に応じますから。
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