夕焼け金魚 

不思議な話
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噂のナイトライダー

2017-07-25 | 創作
最近、私どものマンションの近くにサーキット族と呼ばれる暴走族が現れるようになりました。
爆音を轟かせて我が物顔に道路を占領して走るので、困っているのです。
警察に頼んで何度か取り締まりを行っていますが、何度取り締まってもまたまた始めるのです。
何度取り締まっても、復活してくるのは暴走族を見て喜ぶ女の子達がいるからなのです。
女の子目当てに格好いいところを見せようとして、まぁ、頭の悪いというか目立ちたがりの野郎が集まってくるのです。
「金魚さん、マンションの方から苦情が来ていて困っているのです。なんとかなりませんか」って言われましたが、こんなの私の仕事じゃないでしょう。
「私になんとかと言われても、警察のお仕事でしょう」
「ええ、警察にも何度もお願いしているのですけど、あの女の子達が集まってくるのを止めない限り、無理だと言われてます。
道を歩いてる女の子に道を歩くなとも言えないし、この道夜は通るなとも言えないのですよ」
「そんな事を言われても、私にはなんともできませんから」と何度も断ったのです。
はい、何度も断りました。
「金魚さんが、そんな風に言うときはなんとかできるのですよね」と不動産屋のお局様が言うのです。
「無理、本当に無理ですから」
「私もあの近くに住んでいるの、毎晩うるさくて困っているの。何とかしてくれたら金魚さんの言う事も」なんて言ってじっと私の目を見るんですね。
お局様にあんな目で見られると、弱いというか怖いのです。
女の方の嫌がらせって尋常じゃありませんから。
私が新入社員の頃、給湯室で上司のお茶に本当に雑巾の汁を入れたり、ゴミ箱の中からお茶の葉を取りだしてお茶を入れているところを見ました。
「金魚さん、こんなの序の口だから、変な事しない方が良いわよ」と当時のお局様から言われた事があります。
もう、その怖かった事はいまだにトラウマになってますから。
「はい、何とかしてみます」と言うだけは言いました。
暫くして暴走族を見に来る女の子はいなくなりました。
女の子がいなくなると、暴走する馬鹿な奴も次第にいなくなって、1ヵ月もするともとの静かな街に戻りました。
静かな街に戻ったのは良いのですが、この街にナイトライダーの都市伝説が噂になるようになりました。
ナイトライダーとは、深夜にこの街の大通りをひとりのライダーがかっこよく暴走をするという噂です。
可愛い子を見ると「後ろに乗らないかと」と誘うのだそうです。
全身を真っ黒なレザーのレーサースーツに包んで、真っ黒なライダーブーツに真っ黒なフルフェースのヘルメットを被っていて、女の子達はメットの中の顔を見たいと噂していたのだそうです。
ナイトライダーに選ばれて、後ろの座席に乗って腕を身体に巻き付けて、かっこよく二人だけで夜の街に消えるのだそうです。
海岸の近くでバイクを止めると、女の子の前でゆっくりフルフェースのヘルメットを脱ぐと、肩から上に顔がなかったというのです。
ヘルメットを小脇に抱えて、顔の無い身体が近付いてくるのを見て、女の子は気を失ったというのです。
こんな都市伝説が、いつの間にか噂になっているというのです。

「ねえ、金魚さん。暴走族はいなくなったけど、変な噂が流れているのだけど」
「どんな噂ですか」
「首の無いライダーの話、知らない」
「知りませんよ」
「そうなんだ」
「ところで、暴走族がいなくなったら私の言う事を聞いてくれるとか、言われたのですけど」
下心丸出しで期待していたのです。
「あら、金魚さん何かしたの、噂でも流したのかと思ったのに何もしていないと言ったじゃないの」
「それは」
「何もしてないのなら、私も何もしませんよ。当たり前でしょう」
「はい」としか言いようがありませんでした。
首無しのライダーにお願いするのも無料では無かったのに。
どうしたら、首無しライダーにお願いできるかということは、企業秘密なのでご勘弁ください。

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