錦之助ざんまい

時代劇のスーパースター中村錦之助(萬屋錦之介)の出演した映画について、感想や監督・共演者のことなどを書いていきます。

『独眼竜政宗』

2006-03-22 04:36:24 | 戦国武将

 若き日の戦国武将を演じた錦之助も私は好きだ。映画で錦之助が三度演じた織田信長は、はまり役だったと思うが、『独眼竜政宗』(1959年)での伊達政宗も素晴らしかった。『独眼竜政宗』というとNHKの大河ドラマが有名で、それを思い浮かべる人も多いだろう。このテレビドラマは、高視聴率を上げ、人気もあったようだ。ジェームス三木が脚本を書き、渡辺謙が政宗を演じていたそうだが、このドラマを私は見ていない。だから、比較もできないが、それはドラマを見た人に任せるとして、錦之助の『独眼竜』はこれに先立つこと38年、昭和34年の映画である。調べてみると原作者はいない。高岩肇がオリジナルの脚本を書き、河野寿一が監督している。共演者は、男優が月形龍之介、大河内伝次郎、岡田英次、佐々木孝丸など、女優が佐久間良子、大川恵子、浪花千栄子である。佐久間良子は錦之助との初共演だった。記憶があいまいだが、佐久間良子が時代劇に出演し、しかも錦之助の恋人役という大役を得たのはこれが初めてだったような気がする。

 『独眼竜政宗』は、当時製作された東映の戦国物では、まさにスペクタクル巨編ともいえる作品だった。戦闘シーンも多く、見応えがあった。なかでも、政宗が秀吉の放った暗殺者たちに襲われる場面は壮絶だった。なんと政宗の右目に、敵の射た矢が突き刺さってしまうのだ。それでも、刺さった矢を抜かずに、文字通り「血眼になって」闘いを続ける。その形相がすさまじかった。後年の錦之助ならこうした役もしばしば演じるところだが、当時としては珍しかったに違いない。あの美しい錦之助の顔が破壊されるのである。ファンが思わず目を覆ったことは想像に難くない。

 もう一つ、印象に残る壮絶なシーンは、父の輝宗(=月形龍之介)が敵将にさらわれ、馬で連れ去られるのを、政宗が鉄砲で撃ち落とす場面である。ここなども、思い切った演出で、素晴らしいと思った。

 しかし、この映画、こうしたスペクタクルだけが目立つのではない。いや、この映画の良さは、派手な戦闘シーンよりもむしろ政宗を取り巻く人間関係の厚みのある描き方にあったと思う。老将の親と跡継ぎの子(政宗)、山里の老爺と世間知らずの若武者(政宗)、一国の領主たる武将(政宗)と身分不相応な山家育ちの娘、片目を失った若殿様(政宗)とそれを見守る家来など、世代と身分の違いを越えた人間関係を、情愛豊かに描いている点に、私は魅力を感じた。父輝宗を演じた月形龍之介は、慈愛に満ちた風格を見事ににじませていた。月形と錦之助の相性は絶妙である。戦(いくさ)に対する二人の考え方の違いもうまく描かれていて、父は平和主義者で現実妥協派、子は覇権主義者で理想追求型である。山里の老爺は大河内伝次郎が演じていたが、人生の大先輩として若い政宗を叱ったり、慰めたりする。この大河内も適役で、なんとも言えぬ味があり、実に良かった。政宗の乳母役の浪花千栄子も好演だった。

 さて、老爺の可愛い孫娘で、政宗と相思相愛になるお千代役は、佐久間良子で、まだ若いにもかかわらず、すでに演技がしっかりしているなと感じた。もちろん美しいのは言うまでもない。何を隠そう、私は彼女の大ファンである。佐久間良子は、錦之助にはとてもお似合いの相手であると思っている。この映画には、二人で釣りをするほほえましいシーンがあるが、私は目を細めたほどである。お千代は、若殿様と知らずに政宗を好きになるのだが、政宗が片目を失い気落ちして訪ねに来た時に優しく接する。そのいじらしさ。そして、政宗の身分を知ると、可哀想に、親戚のいる違う土地へと旅立って行く。
 政宗を恋い慕うもう一人の美しい娘が登場する。敵国のお姫様で、この役は大川恵子である。彼女は東映のお姫様三人娘(二代目)の一人だが(他は丘さとみと桜町弘子)、楚々としたおとなしさのなかにも、一心に思いつめた表情が妙に印象に残った。

 『独眼竜政宗』のラストは、立派な大将に成長した政宗が馬にまたがって家来を従え凱旋するシーンである。それを道端の群集のなかで遠くから見ているお千代。思わず政宗の馬に駆け寄っていくと、馬上の政宗、いや独眼の錦之助が、お千代に気がつく。黙ったままうなずいて、しかし、意を決し、前へと進んでいく。このラストシーンも鮮やかだった。

ジャンル:
映画(DVD)
キーワード
独眼竜政宗 月形龍之介 浪花千栄子 大河内伝次郎 平和主義者 ジェームス 大河ドラマ テレビドラマ
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3 コメント

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もう一度みたい (やました)
2006-03-23 07:22:24
背寒さん、おはようございます。

私もこの映画はラストシーンが大変印象に残っています。

でもこの前観てからもう何年もたちます。

人間模様に重点を置いて、また観てみたいと思わせるレビューでした。



ところで

錦之助ざんまい、錦友会HPのリンクコーナーに載せてもいいですか?

Unknown (背寒)
2006-03-23 12:52:10
おはようございます。

どうぞ、ご自由にリンクなさってください。今度こちらでもリンクしておきます。

「錦友会」のことも書こうと思っているのですが、好き勝手に書いちゃっていいですかね?



『独眼竜』のラストシーンは確かに印象的です。錦之助の戦国武将ものでは、『風雲児織田信長』が一番好きかもしれません。でも、『独眼竜』もいいですよね。これ、スクリーンで見たいなー!私は『風雲児』と『徳川家康』は子供の頃映画館で見たことがあって、いたく感動した覚えがあります。

ブログの記事書くために、現在ビデオを見まくっていますが、なかなか記事の方が追いつかなくて、困っています。

 やましたさん、また、コメントよろしくお願いします。書いていく励みになります。

「錦友会」のほかの皆さんも、なんか書き込んでください。別に何でもいいですから…。
どうぞどうぞ (やました)
2006-03-23 19:24:40
好き勝手に。

背寒さんの書きたい通りに書いていただいても

私は全然OKで〜す。

よろしくお願いします

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