経済データおたくの世迷言 by Research76 ーグラフでみるアジア・日本経済

経済動向・データを独断と偏見で読み解きます。
統計やイベント発表に合わせて不定期に書いていくつもり。

*根強い米国の年内利上げ観測、アジア諸国の備えは?

2016-10-12 08:01:56 | アジア

○1997年アジア通貨危機後、アジア各国は外貨準備を増強
○ベトナムを除き、アジア各国は必要な外貨準備を維持
○それでも、昨年末の米利上げでアジア通貨は10%下落

米雇用統計低調でも、しぶとい米国の年内利上げ観測

―先週末に発表された米国の9月雇用統計は予想を下回りました。年内利上げ期待は薄れるかに見えましたが、ドルが一時104円を超えるなど堅調な推移を続けています。これは、年内利上げの期待を市場が依然捨てきれていないこと示唆しているようです。

―米国が利上げすれば、これまで米国から流出してアジアなどの新興国に回っていた資金は米国に戻ります。結果としてドル高/新興国通貨安ということになるわけです。

2015年12月に米国の中央銀行にあたるFRBは利上げに踏み切りました。その結果、アジア通貨は売られ、その価値を下げました(図1)。タイ・バーツは最大で11%、韓国ウォンは13%、インドネシア・ルピアは15%程度、それぞれ価値が減少したのです。


―通貨の価値が下がると、輸出による収入は増えます。一方、輸入品価格が上昇してインフレ圧力が強まります。また対外債務の支払い負担が増大することで、国内景気も下押しされることになります。

アジア通貨危機でルピアは価値が6分の1

―こうしたアジア通貨の価値下落が極端な形で現れたのが1997年のアジア通貨危機です。この危機でインドネシア・ルピアは価値が6分の1に、タイバーツ、韓国ウォンも価値が半分になりました(図2)。


―1997年と今では何が違うのでしょうか。大きな違いはアジア各国の外貨準備高(ドル、ユーロ、ポンド、円などの国際通貨の蓄え)の違いです。1997年当時はこの外貨準備高が今よりもずっと少なかったのです。

―アジア各国は自国通貨が売られた場合、暴落を防ぐためには、市場に介入して、蓄えた外貨で自国通貨を買う必要が出てきます。外貨準備高が多いほど、自国通貨を買い支える力は大きくなり、暴落を防ぐことができます。1997年の危機を教訓として、アジア各国はこれまで外貨準備の増強に努めてきました。

―では足元でのアジア各国の外貨準備はどのくらいあるのでしょうか? 外貨準備高が輸入額の何か月分にあたるかを示したのが図3です。


※日本総研資料より作成

―一般に外貨準備高は最低でも輸入の3カ月分は必要と言われます。その基準に照らせば、ベトナムの2.3カ月は物足りませんが、他は合格点ということになります。中国、台湾については22カ月を超えていますし、インドネシア、タイ、韓国についても10カ月程度となっています。

―これだけ多くの外貨準備があるのだから備えは万全—と言いたいところですが、そう簡単でもありません。現に、これほどの外貨準備を持ちながらも、昨年末に米国の利上げが実施された時には、アジア通貨の価値は10%以上減価しています。

―勿論、1997年の暴落よりは影響は小さいのですが、平時において2ケタの通貨価値減少はアジア各国の経済運営に大きな影響を与えます。通貨価値下落でインフレ圧力が高まれば、利上げの可能性も浮上しますし、その結果として国内景気も足を引っ張られます。その結果、日本からアジア諸国への輸出も下押しされる可能性があります。米国利上げのアジア通貨への影響を今後とも注視する必要がありそうです。

本日もお付き合い、有難うございます。

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