セレンディピティ ダイアリー

映画・アート・本・おいしいものなど、日々出会った感動を、心のままに書き留めています。

LION ライオン 25年目のただいま

2017年04月13日 | 映画

5歳で迷子になったインドの少年が、養子として育ったオーストラリアから25年の歳月を経て、Google Earthを使って生まれ故郷を探し出したという実話に基づくドラマ。デヴ・パテル、ニコール・キッドマン、ルーニー・マーラが共演。

LION ライオン 25年目のただいま(Lion)

1986年、インドのスラム街で暮らす5歳の少年サル―は、兄と仕事に出かけた先の駅でひとり眠りこけてしまい、その後乗り込んだ電車に運ばれて、コルカタまで行ってしまいます。言葉の通じない遠く離れた大都市で、数々の危険をくぐり抜けて孤児院に入ったサル―は、その後オーストラリアに住む夫婦に養子に出されます。

養父母のもとで愛情たっぷりに育てられたサル―は、成人した今、自分がインド人ということすら忘れていましたが、インド人の友人宅で懐かしいお菓子を目にして、インドにいる実の家族に思いを馳せます。遠い記憶を頼りにGoogle Earthで故郷を探し始めたサル―は、とうとう自分が5歳まで育った町を見つけます。

いくつもの奇跡が重なり合って起こった信じられないようなほんとうの話ですが、映画は予告で見た通りの展開で、やや凡庸に感じられたのが残念でした。もっと映画ならではのおもしろさを生かしたら、ラストに大きなカタルシスを得られたのではないかと個人的には思いました。

子どもから目を離したら誘拐されると信じていた私には、駅のホームに5歳の子どもを置き去りにするなんて考えられませんが、そこには家族総出で働かなくてはならない貧しいインドの家庭の事情がありました。年間8万人もの子どもが行方不明になるというインドの背景には、貧困、児童労働、人身売買など、さまざまな社会問題があることがうかがえました。

列車に乗って遠くコルカタまで運ばれてしまったサル―のその後は、まるで「スラムドッグ$ミリオネラ」の映画そのもの。サル―は行く先々で人さらいに狙われますが、その度に機転を働かせて逃げおおせます。やがて親切な若者の助けで孤児院に入ることになりますが、その孤児院さえ決して安全とはいえない場所でした。

サル―は故郷を遠く離れることにはなりましたが、オーストラリアの愛情豊かな夫婦に育てられたのは、類まれな幸運に恵まれたといえるかもしれません。

養父母は、サル―の他にマントッシュというもうひとりの養子を迎えます。利発で素直で育てやすいサル―と比べると、マントッシュは幼少期のトラウマからか、癇の強い難しい子どもでしたが、どちらの子どもにも等しく愛情を注ぎ、大切に育ててきた養父母の寛大さに心を打たれました。

地図オタクでテクノロジー好きの私は、Google Earthを使って故郷の町を見つけるまでの過程を楽しみにしていたので、意外にあっさりと描かれていたのが少々物足りなく感じましたが、監督はそれよりもサル―の苦悩にじっくり向き合いたかったのでしょう。

自分が何不自由なく暮らしていることを、実の母親に対して後ろめたく思う気持ち。一方では立派に育ててもらったのに、養母を傷つけてしまうのではないかと申し訳なく思う気持ち。しかしその心配は杞憂でした。2人の母親は、サル―が今、幸せに生きていることが何よりの喜びだったのだと思います。

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7 コメント

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こんばんは〜 (margot2005)
2017-04-13 19:23:30
私自身にも息子がいるので、もう感動してしまってラストは涙でスクリーンが曇りました。
実際には義母と一緒に実母に再会したようですね。

スーは自身の子供をもうけないで、親をなくした子供を育てるというポリシー。すごい!なぁと思いました。簡単にマネできるものではありません。

グドゥについては気の毒な結果でしたが、インドとオーストラリア両方の母親と密にしているサルーは優しい男性のようで素敵です。
☆ margot2005さま ☆ (セレンディピティ)
2017-04-14 09:57:14
margotさん、こんにちは♪
エンドロールの時だったか、サル―が養母と実母といっしょに
映っている写真がありましたね。
さまざまな困難と25年という年月を乗り越えての奇跡の再会、感動的でした。

幼くして心が傷ついた子どもたちを受け入れて育てるのは
並大抵の覚悟ではできないと思います。
ほんとうにすごいことですね。
養母から愛情たっぷりに育てられたサル―だからこそ
実のお母さんを思い、気遣う優しさが育まれたのでしょうね。
コメントまだでした… (ノルウェーまだ~む)
2017-04-17 00:17:17
セレンさん☆
てっきりコメントを入れたつもりでおりました、ごめんなさい~

両方の母を想う気持ちが強すぎて空回りしてしまったサルーにも、養子を取った理由をあえて告げてこなかったという親心にも泣かせるものがありますけど、逆にそれが悩む原因になっていたのですね~
どちらの母も素晴らしいです☆
☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ (セレンディピティ)
2017-04-17 10:42:07
いえいえ~、コメントありがとうございます♪

両方の母を思うがゆえに、悩みに悩んで誰にも打ち明けられない
サル―の気持ち、よくわかる気がしました。
母の立場からすれば、「そんなこと、くよくよ悩んでいないで
さっさと言いなさい!」なんですけどね。
すてきな母子でした。
Unknown (zooey)
2017-04-21 00:22:27
マントッシュの存在は意外でしたね。
結局彼は、今も麻薬に溺れた生活をしているようで…
あの養母は、自分は限りなく幸せだと言っていましたが
愛情をどんなに注いでも、それが素直に受け入れられないのはどんなにつらいだろうと
思ってしまいました。
☆ zooeyさま ☆ (セレンディピティ)
2017-04-21 08:19:42
zooeyさん、おはようございます。
以前、幼少期に傷ついた子どもは、養父母の愛情を試すように
数々の問題行動を起こすことがある、と何かで読んだことがあります。
サル―のような子どもの方が、むしろレアなケースなのかもしれませんね。
子どもの試練を我がことのように受け入れ
無条件の愛情を注ぐこのご夫妻は、ほんとうにすばらしい!と頭が下がりました。
こんばんは (ここなつ)
2017-04-24 23:50:14
こんばんは。
サルーの奇跡の物語も、迷子になってしまった彼の生命力に端を発したものだと思いますが、
兄のそのあとの運命のことなどを思うに、子供が生活の糧を得なければならない社会は、なんと過酷なのだろうか、と思いました。

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