(その2からのつづきです。でも未読の方はよかったらその1から読んでください。)
私の幽霊やオカルトに関する知識は乏しいものだった。
言い換えればそれらについてはごく常識的な範囲でしか知らない。
しかしその中で、幽霊は昼日中現れるものではないし、馴れ馴れしく自らの置かれた境遇を語ったりはしないし、まして高所恐怖症だったりはしない。
何より先ほど男に肩を掴まれたときのあの感触、何といえばいいだろう、あれはとても生々しいものだった。リアルだった。到底幽霊に触られたときのそれだとは思えない。
私はあらためて男の風貌を注視した。
先ほどこれといって特徴のない顔と感想を述べたが、それは別の言い方をすればどこででも見かけそうな顔ということであり、印象的には一日の営業を終え、帰社したばかりのサラリーマンといったところだった。
たぶんどこかの居酒屋やビアガーデンで同じ顔を見かけていたのならもっと馴染んでいただろう。
強いていえば顔色がちょっと悪いかなとも思えたが、それも別に血の気のないとか、土気色をしたとかいうほどのことでもなかった。
「ですからこんな立場になって初めてわかったんですけど、飛び降りる人に声を掛けるのって、そのタイミングが難しくって。早くてもいけないし、遅かったらもっといけない。それはわかりますよね?」
男は飽きもせず話を続けていたが、私は、すいません、と言って男の話の腰を折った。
「あの、すいません、時間を教えてもらえますか?」
私がそう尋ねると、男は手元の腕時計に目をやった。
「えっとですね、丁度一時を過ぎたところですよ。この後何か、予定でもあるのですか?」
もちろん予定などあるわけがなかった。そんなものはない。
ただ確かめたいことがあっただけだ。
さえぎるものとてないから風は心地よいけれど、太陽はあるべき場所にあってその存在を主張し、男と私の足元にそれぞれ影を作っている。
時間を確めるのに、腕時計を見る幽霊。けれどその幽霊にはしっかりと二本の足があり、おまけにご丁寧に影まである。
そんな幽霊がいるわけがない。
ふざけた話だと思った。馬鹿にしている。
男はたぶん半分時間つぶしか何かで自らを幽霊と称して私をからかっているだけなのだろう。
そのとき私はかなり腹を立てていた。
だから、ちょっとした暴挙に出ることにした。
「あの、目のところに、羽虫が止まってますよ。追い払ってあげますから、ちょっと目を閉じてもらえますか?」
男は私の言葉に素直に従い目を閉じた。
そして私は小さく深呼吸すると、男の左の頬を思いっ切り、力任せに張った。
バシッという小気味のよい、乾いた音が断崖に響いた。
つづく。
私の幽霊やオカルトに関する知識は乏しいものだった。
言い換えればそれらについてはごく常識的な範囲でしか知らない。
しかしその中で、幽霊は昼日中現れるものではないし、馴れ馴れしく自らの置かれた境遇を語ったりはしないし、まして高所恐怖症だったりはしない。
何より先ほど男に肩を掴まれたときのあの感触、何といえばいいだろう、あれはとても生々しいものだった。リアルだった。到底幽霊に触られたときのそれだとは思えない。
私はあらためて男の風貌を注視した。
先ほどこれといって特徴のない顔と感想を述べたが、それは別の言い方をすればどこででも見かけそうな顔ということであり、印象的には一日の営業を終え、帰社したばかりのサラリーマンといったところだった。
たぶんどこかの居酒屋やビアガーデンで同じ顔を見かけていたのならもっと馴染んでいただろう。
強いていえば顔色がちょっと悪いかなとも思えたが、それも別に血の気のないとか、土気色をしたとかいうほどのことでもなかった。
「ですからこんな立場になって初めてわかったんですけど、飛び降りる人に声を掛けるのって、そのタイミングが難しくって。早くてもいけないし、遅かったらもっといけない。それはわかりますよね?」
男は飽きもせず話を続けていたが、私は、すいません、と言って男の話の腰を折った。
「あの、すいません、時間を教えてもらえますか?」
私がそう尋ねると、男は手元の腕時計に目をやった。
「えっとですね、丁度一時を過ぎたところですよ。この後何か、予定でもあるのですか?」
もちろん予定などあるわけがなかった。そんなものはない。
ただ確かめたいことがあっただけだ。
さえぎるものとてないから風は心地よいけれど、太陽はあるべき場所にあってその存在を主張し、男と私の足元にそれぞれ影を作っている。
時間を確めるのに、腕時計を見る幽霊。けれどその幽霊にはしっかりと二本の足があり、おまけにご丁寧に影まである。
そんな幽霊がいるわけがない。
ふざけた話だと思った。馬鹿にしている。
男はたぶん半分時間つぶしか何かで自らを幽霊と称して私をからかっているだけなのだろう。
そのとき私はかなり腹を立てていた。
だから、ちょっとした暴挙に出ることにした。
「あの、目のところに、羽虫が止まってますよ。追い払ってあげますから、ちょっと目を閉じてもらえますか?」
男は私の言葉に素直に従い目を閉じた。
そして私は小さく深呼吸すると、男の左の頬を思いっ切り、力任せに張った。
バシッという小気味のよい、乾いた音が断崖に響いた。
つづく。
これで、自称幽霊が豹変したら・・・
また続きを楽しみにしています。
(感想そこかよ?!)
いえいえ、おもしろいですよ!
でもここで感想入れる感じではなさそう(で、続きは?続きは?って感じね☆)なので、全部読みきってからにします
たぶんみんなそうだと思いますので今回コメント少なくてもどんどん先に書き進めて下さいね!
な~んて私、いいとこついたね。
ノリスケさんより原稿もらうの早いかもよ
続きがすっごく気になるけど・・・ゆったりゆったりいいお話を。です^^
楽しみにしてますっ(><b
考えてみれば連載ものなのに毎回毎回感想を求める方が無茶ってものなんだけど、それでもやっぱり誰かが読んでる、っていう手応え?みたいな物が欲しくて。。。
わがまま言ってすみません。
これからどーなるんでしょーね、ふふふ、
cottontailさんの予想通り幽霊男が豹変したりして・・・。
羽虫って言うのは羽根の生えた虫のことです、マリーコさん♪(って大概の虫は羽根生えてるだろ。。。)
いやぁ、どーすれば人はおとなしく目を閉じてくれるのか考えて、苦肉の策ですな。
もっといい方法があれば教えてください!
つばきさんに先が気になるといってもらえると余計頑張んなくちゃっていう気になれます。
感謝です!
同級生の江川○子ちゃんのほっぺをぶん殴ったのは・・・。
何で殴ったのか、覚えてません。
なんか癪に障ったんすかね。
・・・てか、コメントありがとう。元気になりました。誰かを平手打ちしたいくらい。(爆)
ちゃんと読んでるよ どーだ めずらしいだろ?
(≧▽≦)ぶわっはっは!!
次作の展開を期待して ごちゃごちゃ書くのはヤメテオコウ・・・
早く先が読みたいッス。
この前言ってたオチはですね~。
私の大好きな「某映画」のラストみたいだったらいいな~と思ったのです。
これは願いのようなものですから作品名は秘密ですw(笑)
・・・読み逃げ・・・(嘘)。
ちゃんと足跡残しますから今回はちゃんと
平等にケーキ分けてくださいね!!
楽しみにまってますからねぇ~♪
とらこさんの鉄拳(?)を喰らう人に同情しちゃいます。笑。
それから、江川○子っていうと、あの弁護士さんですか?
こらこら、にこ、珍しいだろって威張るんじゃな~~~い!
でも本当に珍しいかも?笑。
ってことで珍しくないと思えるぐらいのコメントをよろしくっす♪
小夏さんのいうところの『某映画』って何なんでしょうねー。
気になる木です♪
幽霊が出てくる映画となるとパトリック・スウェイジ主演の『ゴースト』かな。
安直ですか?笑。
しぃさん、ほらほら、足跡を残さなかったから、切り分けたケーキが小さかったんでしょう?笑。
これでしぃさんのケーキもみんなと同じ大きさですね!
でもケーキの食べすぎにはくれぐれも注意です!!