この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

夢と理想、そして信じるということ、『砂漠でサーモン・フィッシング』。

2012-12-09 21:15:48 | 新作映画
 ラッセ・ハルストロム監督、ユアン・マクレガー主演、『砂漠でサーモン・フィッシング』、12/9、ユナイテッドシネマキャナルシティ13にて鑑賞。2012年46本目。


 釣りだけが趣味の冴えない水産学者であるアルフレッド・ジョーンズはある日一通のメールを受け取る。
 砂漠の国イエメンでサーモン・フィッシングをするという、前代未聞のプロジェクトの顧問を依頼する内容のメールだった。
 送り主は投資コンサルタント会社のエージェント、ハリエット・チェタウォド=タルボット。
 イエメンでサーモン・フィッシングをするのは火星に人を送り込むようなもので、理論的には可能であっても実行は不可能です、そう彼女に返信するジョーンズ。
 しかしこのときジョーンズは知る由もなかった。
 彼が誰よりも深くこのプロジェクトに関わっていくということを、そしてハリエットが運命の女性だということを…。

 前売り券を買い損ねたので、本作は結局キャナルで溜まっていた鑑賞ポイントを使って観ることにしました。
 前売り券を販売している映画は出来るだけ前売り券を購入して鑑賞したい、鑑賞ポイントを使っての鑑賞は前売り券が販売されない『ザ・レイド』や『アルゴ』のような作品に限定したい、貧乏な自分は常々そう思っています。
 貴重なポイントを消費して観た映画がつまらなかったら、ショックも大きいです。(貴重なポイントを使う以上は)絶対に面白いに違いない!という前提の元に観に行ってますから。
 前振りはこれぐらいにして結論から述べると、『砂漠でサーモン・フィッシング』はとても面白かったです。
 いや、それぐらいの言葉じゃ足りないな。
 映画『砂漠でサーモン・フィッシング』は2012年に劇場まで観に行った46本の中で一番面白かった!!
 個人的にもすごく気に入ったし、老若男女、誰にでも自信を持って薦められる一本です。

 本作のメインストーリーは砂漠の国イエメンで果たしてサーモン・フィッシングが出来るようになるのか、というNHKの『プロジェクトX』みたいなお話です。
 火星に人を送り込むのと同じぐらいの難事業に主人公たちは挑むのですから、そりゃ観ていて手に汗握りますよね。
 ジョーンズは最初、このプロジェクトを単なるイエメンのシェイフ(王族)の気紛れによる道楽だと考えていたのですが、実際シェイフに会って、それが誤解であったことを知ります。
 シェイフはジョーンズに自らの理想を語るのです。砂漠に緑をよみがえらせたい、サーモン・フィッシングはその象徴なのだと。
 このシェイフがまたありえないぐらいカッコいいんですよ。理想家で、人格者で、桁違いの金持ちで、しかも超のつくイケメン。もしも映画の登場人物で生まれ変わるのだとしたらこの人がいいです。笑。
 シェイフはこんなこともいいます。
 信仰は釣りに似ている。釣り人は魚が釣れることをひたすら信じて待つ。
 ジョーンズとシェイフは立場を超え、人種を越え、宗教を越え、友情で結ばれるのです。

 サブストーリーはジョーンズとハリエットの恋愛ストーリーです。
 恋愛ってものは現実においては障害がない方がいいに決まってますが、映画の中ではその逆で障害が大きい方が観ている側としては楽しめます。
 二人には大きな障害があります。
 ハリエットには戦場で行方不明になった恋人がいて、ジョーンズには長年連れ添った奥さんがいるのです。
 つまり本作は冴えない中年男と三十路手前のキャリアウーマンの間の不倫ものと位置づけられないこともないのですが、脚本のサイモン・ビューフォイと監督のラッセ・ハルストロムのおかげでギリギリ嫌味な恋愛ものとならずに済んでいます。

 作品全体を覆うそこはかとないユーモアがまたいいのです。
 それを主に担当するのが首相広報担当官のマクスウェル女史なのですが、彼女の猪突猛進ぶりと、彼女とイギリス首相とのメールのやり取りは笑わずにはいられませんでした。

 毎年年末のこの時期になると、その年に観た作品を振り返って、自分なりにランク付けをするのですが、この映画を観るまでは一位を、青春映画の傑作である『桐島、部活やめるってよ』か、超絶的アクション映画の『ザ・レイド』にするか迷ってました。
 しかし、本作を観て、一位はこれだな、と思いました。
 それぐらい、鑑賞後、いい気分になれました。
 でもこの作品、あまり知名度は高くないみたいなんですよね。
 公開館もあまり多くないし、映画が趣味の友人もこの作品のことを知りませんでしたしね。
 出来るだけ多くの人に観てもらいたいです。
 2012年を気分よく終えるのも悪くないと思いますよ。


 お気に入り度は★★★★★、お薦め度は★★★★★(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
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4 コメント

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ユアン・マクレガーさん♪ (sunblue)
2012-12-10 22:06:46
ぐぁ、出ているから観たいっ(^^)b♪
って言ったならぁ…イヂメルゥ?

これ実話でないですよねぇ?
いや、あっても可笑しくないかなぁ?と思ったので。

せぷさんの記事にあった予告で、そそられ、せぷさんの説明でより観たくなりました。

行ってこようかなぁ?映画館♪
返信する
いじめちゃおっかな~。 (せぷ)
2012-12-10 23:07:14
ユアン・マクレガー、本作では冴えない中年男を好演してましたよ。
この人はやっぱり何を演じさせても上手いですね。

本作は原作の小説があって、それを映画化したものなんですけど、その小説は実在の国であるイエメンを舞台にはしていても、完全なフィクションのようですね。
実話を元にしていたら、公式サイトで「感動の実話化!」と宣伝するでしょうから。

本作はお薦めですよ~。
音楽もsunblueさん向きで喧しいものではありません。
一年の最後に観るのに相応しい映画だと思います。
返信する
ユアン!! (小夏)
2012-12-12 10:12:23
最近、「ユアン=眉間のシワ」っぽい作品に辟易していたところなんですが、とりあえず、そこのところはどーなんですかね?

とりあえず、こちらでは上映されないようなのでWOWOW待ちになっちゃいますが。
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眉間のシワ、、、 (せぷ)
2012-12-12 22:11:56
眉間のシワですか?
そういえば本作でも何だかずっと考え事をしていたような?
でもユアン・マクレガーの眉間のシワを否定すると、彼のいいところの90%を否定するようなもんだと思うんですけど。笑。

福島では福島フォーラムという映画館で来年の一月から上映されるみたいですよ。
福島フォーラムは小夏さんの家から遠いんですかね?
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