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Imagining Numbers (Barry Mazur著)を読む

2017年02月13日 | 数学

    購入し読んだ本が面白くないとき、あるいは部分的によくわからないとき、人は普通「この本は自分に合わなかった」と思う。しかし、時に表題と内容の著しい乖離や全体構成の不適切さ、部分的にちぐはぐな難易度、あるいは読者の想定を間違えてはいないか、などと著者を責めたくなることがある。私のこの本の読後感想はどちらかというと後者に偏っている。本書の表題「Imagining Numbers」というのを見て、私は「数」についていろいろと想像をする(imagine)、そういう本だと思って購入した。しかし著者の意図はそうではない。「想像するとは何か」に大きな重点を置き、そして、その対象の一つとして「数」があるということらしい。この本で最もよく目立つ言葉は「yellow of the tulip」である。「黄色い花のチューリップ」は簡単に想像できる。しかし、「チューリップという花における黄色それ自体をイマジンせよ」とはどういうことか、というプラトンのイデアみたいなことを大真面目に論じている本である。そして、imagineということばから数学の対蹠にある「詩」の話が出てくる。なんとも変わった本である。

また「副題」のParticularly the Square Root of Minus Fifteenというのも訳が分からない。Particularlyというからには、√-1でも√-3でもなく、√-15について論じているのかと思ったら、そうではない。たまたま3次方程式の解として√-15という数字を昔カルダノが問題とした、しなかった、ということに過ぎない。とてもそれがParticularlyとは言えない文章の流れとなっている。本書の著者は数学の一般書としてかなりいい本を何冊も書いているので信用して買ったが、この本だけはまさにハズレであった。

とはいえ、あちこちに煩わしく出てくる「詩」の話を全部無視して数学の部分だけ読んでいくと「この説明いいね!」という部分が出てくる。(-1)×(-1)が+1になる話が延々と続き最後にやっと「数学は矛盾を導かないような論理を作るための公理の体系である」から、(-1)×(-1)=+1なのだ、という結論が導かれる。この本を詩の好きな人に読ませるためのものかと思いながらこのあたりは読み飛ばしていく。√―1の話になったとき、「正の数を乗ずることが数直線を拡大縮小する」と考えるとき、「-1をかけることは数直線を180度回転させる」と考えられる。だから、「2乗すると―1になる√-1を1回だけかける」ということは、「その半分90度回転だ」という論理、代数を幾何で説明するという手法で複素数平面を持ち込む点は確かに「詩人」でもわかるだろう。

それなりに得るところはあるものの、著者のこの本を買いた意図はあまりいかされているとは思えない。数学の知識を増やしたい詩人、数学が好きで詩も大好きな人、そうした人が世間にたくさんいればきっと売れる本になるに違いないが、少なくとも私はそのいずれでもない。

買おうか買うまいか思案している方で、「数学書」を買いたい方にはお勧めできない本である。

書名           Imagininng Numbers( Particularly the Square Root of Minus Fifteen)
著者           Barry Mazur
出版社        Farrar,Straus and Giroux
発行日付     2003,first edittion
価格       Amazon ¥807.-(中古、一部書き込みあり)

 

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