旋律はいつもドリン系

高校時代のマンドリンクラブの話です。
若干、ほんとのことをベースのフィクションです。

(28)さあ、早朝練習開始。なのじゃ。

2008年06月24日 08時47分19秒 | 1章-はじまりは、こんなもん
目次 〈1章-はじまりは、こんなもん〉の最初から
   〈2章-D線の切れる音〉の最初から
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ワシは朝、5時半ちょうどに家を出た。

「福田先輩。そんなに早い電車ありません。」と言ったら。

「青山先輩は自転車で通学してたぞ。」

(くそ。ばれたか。)
ほんとは早い電車はあったが、早すぎた。
6時頃に学校へ着くのにちょうどいい、時間帯の電車がなかったのだ。

初めて自転車で学校へ行った。まだ辺りは薄暗い。
通学路は間違えようがなかった。
ローカル線(福塩線)の線路に沿って、学校まで一直線だったからだ。

ワシが住んでいる辺りは昔(江戸以前)、備後の中心地の一つだったそうで、
学校までの道はその頃からのメインストリートだった。
線路に沿って道があるというより、線路が道に沿って作られたのかもしれない。
駅がある度に道の両脇が小さな商店街になっていた。
朝早いので、まだ店も閉まっている。

鉄道の好きなネンが言うには、福塩線は変な駅名が多い路線なんだそうじゃ。
(ほんとかどうかは知らないので、突っ込みはご容赦)

ネンの乗る『神辺(かんなべ)』駅。藤本は次の『湯田村(ゆだむら)』駅。
ワシがその次で『徳田(とくだ)』駅。そこから『道上(みちのうえ)』、
『万能倉(まなぐら)』、『駅家(えきや)』、『近田(ちかた)』、
『戸手(とで)』、『上戸手(かみとで)』、『新市(新市)』駅と続く。
どうじゃろう、変な駅名だろうか?ワシには当たり前なのでよく判らない。

西から東へと朝に向かって自転車をこぐ。空がだんだん明るくなってくる。
福塩線の『上り』の始発電車が向かって来て、すれ違った。乗客はまばらだ。

『上戸手』を過ぎると、ゆるい上り坂になる。ゆるいが長い。
朝、少し寒いと感じたが、30分くらい自転車をこいでるので暑くなってきた。
坂を上り切ったあたりで、日の出が見えた。下ると学校がある。

6時少し前に部室に入った。
初めての自転車登校なので、6時までに来れるか不安だったのだ。
福田先輩はすでに来ていた。ギターを出してチューニングをしている。

もう、来てる…。

ワシはちゃんと6時までに来たから、文句を言われる筋合いはない。
…はずだがきっと、福田先輩は文句を言う。言うに決まっとる!
何も言われないうちに、どう言い訳をしようかと考えていた。

「おい。青山。」

来た!

「はいっ。すいません。遅くなりました。」言い訳なんて出来るわけがない。

「これで、ホットコーヒーを買ってこい。」100円を渡された。

あの学食にある50円の紙コップコーヒーだ。
おつりで、お前も何か買えと言われたのだ。ありがたく奢ってもらうことにした。

ネンが『悪い人じゃない』と言ってたが、案外そうかもしれないと思った。
ワシは物理的な利益に弱い。

練習が始まった。「10回。10回。10回。10回。10回。」

ネン。やっぱり福田(の野郎)先輩は好きになれん。
ワシは物理的な苦痛にも弱い。
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広島県は『安芸』と『備後』で、できてます。この『備後』というのは、吉備の後(みちのしり)といって。岡山の『備前』『備中』と同じ『吉備』の一部です。だから、広島県外の人は広島弁というと、同じ感じに聞こえるかもしれませんが、私たち広島の人間は『安芸』と『備後』の広島弁は似てるけど、ちょっとニュアンスが違って聞こえます。私的には、どちらかというと安芸の広島弁より岡山弁の方が耳に馴染む気がします。
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