ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 金子勝・児玉龍彦著 「日本病ー長期衰退のダイナミクス」 (岩波新書2016年1月)

2017年04月24日 | 書評
失われた20年のデフレ対処法の失敗は、アベノミクスのブラセボ経済策によって「長期衰退期」を迎えた 第14回

7) 「日本病」からの出口 (その1)

「日本病」がこれから先にたどるであろう奇跡を予測してみる。あるいは最悪のシナリオかもしれない。今の日本病の深刻さを理解するには、過去の履歴が大切である。市場や生命といった複雑系にあるフィードバックは周期性を生み出すが、フィードバックが多重に重なると周期性の波が重なり、非常に複雑なパターンを示すものである。まず過去の状態についての経験的なデーターからモデルを作り、そこで何が起こったかのデーターを加えて、何回かの繰り返しを行いモデルを改良するという道筋で予測が可能となる。アベノミクスの異次元の金融緩和は、雇用制度の規制を解体しながら行われている。消費税増税と法人税減税がカップリングして行われた。円安で輸出大企業の決算を史上空前の好業績に押し上げ、株価は上昇している。しかし実質賃金は伸びず家計消費は一向に増加しない。円安による輸入物価の上昇で貿易赤字が恒常化したまま、製造業の就労人口は増えず、企業の内部留保だけが増えた。大企業と資産投資家が益々富み、中小企業、非正規労働者、高齢者、地方はますます貧しくなってゆく。格差拡大の結果と消費税増税と物価上昇で国民は消費を削減してゆく。そこへ年80兆円の日銀による追加金融緩和が行われながら、それは日銀当座預金に積み上げられるだけで、信用(実物経済)の拡大にはつながらない。しかし年金基金、銀行などの国債は日銀に買い取られ株式投資が増える官製相場が作られる。株式市場は官製相場の尾ために調整機能を失っている。次々と制御機能が解体され、金融緩和が行われても物価は上昇せず、実質賃金も家計消費も増えないなかで、円安誘導を行っても国内市場が拡大しないため製造業の国内回帰もない。その結果痴呆の衰退も急速に進む。再び地方自治体の統廃合が行われるであろう。GDPは増加するどころか実質低下傾向になり、市場は麻痺し格差拡大と国民の窮乏化が加速される。半導体や情報通信産業など先端産業で後れを取った旧来型産業の権益を保護するため、原発再稼働、インフラ輸出を成長戦略とするが、失敗を繰り返すだけである。エネルギー転換と情報通信技術に基づく分散ネットワーク型産業構造への転換でますます後れを取るだろう。この中で最も被害をこうむるのが若者である。すでに4割の若者が非正規雇用者でスキルを積む道を閉ざされている。若者は過酷な奴隷労働にさらされ、低賃金で結婚もできない。母子家庭はさらに悲惨である。これらは少子高齢化という人口問題ではなく、労働と資本の分配の問題である。この状況で海外の経済情勢の変動が起きるとどうんるだろうか。2008年のリーマンショックにおいて日本はサブプライムローン関連の投資は少なかったはずなのに、ショックが実体経済に与えた影響はアメリカよりずっと大きかった。それは若者の雇用を切り、国内市場が疲弊していたからであった。今アベノミクスの下で中国のバブル崩壊が与えるショックを予測すると、これ以上の金融緩和策効果は全く期待できない。官製株価相場に年金基金をつぎ込んでいるため、新規の融資を行う余裕はない。実質賃金は上がっていないので国内市場は期待できない。インフレターゲット論に従って物価上昇に期待しているが、唯一の株高が崩れると、日本経済を再び大きく落ち込ませる。戦争やハイパーインフレだけがリスクではない。日本国家が破産するというソブリンリスクも起こりかねない。こうして1000兆円を超える国債価格に低下が始まり、長期金利が上昇する。国債返済で国家財政は破綻する。福祉・公的医療が維持できなくなり、国民負担が上昇しさらに投資が減少する。外国へのインフラ投資に依存する輸出策が重視しされているので、海外のショックは事態を悪化させる。制度やルールに関する軋轢が始まっている。TPPでアメリカのルールに協力している日本の選択肢は狭い。そしてアメリカの戦争の下請けとなって武器輸出をするしか道は残されていない。米国や中国の圧倒的な軍事力に勝てない日本に戦争を起す力はない。結局日米安全保障枠内で、中東での米国の戦争の下請けということになる。そして国内でテロの発生を見ることになる。アベノミクスは政治的にはマスコミ支配を通じて不安定な独裁政権を目指すことになるだろう。これは安倍政権の強さではなく、脆さにつながり早晩、政権崩壊は必至である。

(つづく)
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